【09.09.18】紹介  小説「われら青春の時」 青年群像が生き生きと 

小説への思い 竹中正典さん

長年、革新・愛知の会の代表世話人をつとめてこられた佐藤貴美子さん(現世話人)が、『われら青春の時』を出版されました。竹中正典さんから、この小説への思いを寄せていただきました。

青年群像が生き生きと

元・愛知民医連会長

     竹中 正典
 
 名古屋市在住で、日本民主主義文学会会員の、多喜二・百合子賞作家の佐藤貴美子さんの小説『われら青春の時』は、昨年9月から今年3月までの「しんぶん赤旗」連載中から評判だったが、6月20日、「終章」を加えて新日本出版社から単行本として刊行されるや、たちまち増刷される勢いで全国に広がっている。

 この小説は、敗戦で焼土と化した日本がようやく、サンフランシスコ条約によって独立への第一歩を歩み出した一九五二年(昭和二十七年)ころ、名古屋南部の医療から見放された無医地区を舞台に、インターンを終えたばかりの若い女性医師とセツルメントの医系学生が地域の若い青年、若い嫁たちと共同して、自分たちの診療所―「愛知で初めての民主診療所」―を作り上げていく物語である。

 その底流には大正時代の「鳴海・笠寺小作争議」や戦前の労農救援会名古屋支部の「無産者中央医院」の歴史が流れており、戦後は開業医の民主的な愛知保険医協会運動や名古屋大学医学部の民主化運動などの「地下水」が流れていた。

当時、戦争放棄、主権在民を掲げる新しい憲法が制定されてはいたが、まだ戦後復興も不十分で、貧困な食住生活をはじめ医療の分野も最低の状態だった。職場でも地域でも学園でも、自由で、民主的で、基本的人権の保障される新生日本の建設のためには、旧来の封建的な風習を破り、新しい秩序の構築が必要だった。
わかものたちは、このような時代の要請に答えようとした。この小説は、未熟で、向こう見ずだが、一途な努力を重ねる当時の青年群像が生き生きと描かれている。  

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