【08.11.10】津島市医師会長 加藤錠一さん

市民病院、地域医療を守るために

 
10月13日、海部津島革新懇主催「津島市民病院を考えるシンポジウム」に津島市長、津島市民病院長とともにパネリストとして参加された津島市医師会長の加藤錠一さんを津島市医師会館に訪ね、地域医療を守る取り組みをお聞きしました。 

加藤 錠一さん

1948年生まれ。現在、津島市医師会長。名古屋市東市民病院、市大病院勤務を経て現在、加藤医院院長

津島市民病院へ医師会が夜間診療応援

津島市医師会は、津島市内で開設する医師と病院などへ勤務する医師で構成されています。

 在宅輪番当直制は昭和51年に開始しました。県下で二番目のスタートで、当時より救急に対して積極的な医師会でした。昭和57年には休日診療所を設立、それ以後、夜間は在宅輪番当直、日祭日は休日診療所という体制で長く地域医療に貢献してきました。しかし、受診者数の減少、国の補助金のカット、津島市民病院の救急外来の充実などで役割が終えたと考え、平成16年に在宅輪番当直制を終了しました。

 平成19年4月になると津島市民病院が医師の減少で夜間救急の一部を閉鎖することに
なり、当地区にも医療崩壊が始まったかとびっくりしました。その時に市長、市民病院長の連名で医師会に医師派遣の依頼がありました。ボランティアを募ったところ5名の希望者があり、平成19年9月から火曜日の夜間救急外来を医師会の医師で担当することになりました。
 最初は、正直なところ人が集まるのだろうかと心配しましたが、皆さんが地域医療の崩壊を何とかしようと手を挙げていただき、ほっとしました。

 医師不足に開業医が当直をして援助するという津島の地域の取り組みは、かなり反響がありました。住民の方へ医療に対する安心感をアピールできましたし、医師会員と市民病院の医師や職員の方との連帯意識ができたなどよかったと思います。

 海部津島地域は、公的3病院(厚生連海南病院、津島市民病院、公立尾陽病院)のみで私立の総合病院がありません。その中で津島市民病院は津島市のみではなく愛西市をはじめ周辺の海部郡の住民の医療も担っています。ですから機能ダウンされては困るし頑張ってもらわないといけないわけです。さらに経営母体について、前回の市長選でも争点となりましたが、医師会としては市民病院への公設公営を継続していただきたいと思っています。
 赤字減少のため公設民営という考え方もあると思うのですが、民営化になると殆どの場合は、不採算部門の医療の切り捨てになってしまいます。そうならないためにも公設公営でぜひとも継続していただきたいと思っています

絶対的な医師不足ー増員を

当地区の医療崩壊はそのほとんどを医師不足によっています。大学医局による医師の引き揚げが誘因です。とにかく医師の仕事量が増えています。ひとりの患者さんに対して以前とは比較にならないほど仕事量が増えてきています。これも誘因でしょう。まさか名古屋市に近いこの近辺が医師不足なるという状況が起こるとは考えもしませんでした。やはり国の施策として医師を増やしてほしいですね。それに医師の配置の不均等分布の補正もお願いしたい。

 住民の方にお願いしたいことは、医師への上手なかかり方ということが必要ですね。

県医師会のホームページにもありますように、かかりつけ医を持ちましょう。診療時間内に受診しましょう。ということが大事です。それでも突発的な病気はあるわけで休日診療所や二次、三次病院を賢く有効に使いましょうと提言したいです。
大病院の夜間救急に患者さんが集中し機能不全になることだけは避けたいのです。

後期高齢者医療制度は誰でも怒っている

75才以上の方を後期高齢者として医療を別枠にしたのは大変失礼な話しですね。後期高齢者の方を「みなさん、ごくろうさまでした」と全て無料にするのが本来の姿と思いす。

 後期高齢者になると保険点数を減らし、70才以上の健診では検査項目を減らし、さらにお金を別に取りますよというのは、誰でも怒りますよ。後期高齢者になった人たちが「私たちは、やっぱり姥捨山ですね。」と思われるのは何としても避けたいです。医療にはお金がかかるものなのです。人間の命にお金をかけることをケチるなと言いたいですね。

医療にはある程度は公的な補助がないと進んで行かないと思います。そこが株式会社と違うところです。うまく医療がいくことを望みます。

地域医療のために

平日昼間はほとんどの医療機関が開いているので受診に困ることはありません。困っているのは夜間、日祭日です。とくに総合病院へ集中するためその病院が機能不全になってしまう可能性が大きいわけです。二次、三次病院はその機能を十分に発揮して頂きたいわけです。そのために、一次救急医療は地区医師会レベルがきちんと対応し、大きい病院は二次、三次の救急医療をという機能分化の考え方が必要ですね。住民のかたもそのシステムを理解していただき、地域医療体制は地域の共有財産であると考え、我々とで大事に育てていきたいと思います。

 今後の取り組みですが、月曜から金曜までの平日夜間外来を海部津島全体でしましょうと検討中です。つまり海部休日診療所を定点として、海部医師会と津島市医師会合同での実施を検討中で平成21年度中にスタートできそうです。土日は現在のまま2つの休日診療所は継続します。そうなると救急のかなりの時間帯を医師会でカバーでき、救急の主たる一次救急に対応できるわけです。公的3病院の救急外来は相当な負担減になると思います。大きな病院には、二次、三次救急医療を頑張ってもらうために、一次救急医療は医師会で対応しようということを考えているわけです。

 津島市は名古屋市の西に位置し人口は約6万6千人です。また海部津島という医療圏全体では人口は約36万人となります。そのなかで当地区の医療をより良いものにするためそして地域の保健や福祉のさらなる向上のため当医師会は頑張りたいと思っています。

注:一次救急:軽症患者(帰宅可能)に対する救急医療
二次救急:中等症患者(一般病棟入院)に対する救急医療
三次救急:重傷患者(集中治療室入院)に対する救急治療 

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