【10.03.10】インタビュー 小出典子さん「過労死自殺を生まない社会を!!

過労死労災認定を!

 
1998年以来12年も連続自殺者が3万人を超える異常な日本。2002年、56才で自殺した夫の過労死労災の認定を国に求め、昨年11月に名古屋地方裁判所に提訴した小出典子さんにお話を伺いました。
              
 (聞き手は、事務室 岩中美保子、写真撮影 山本晃子)

小出 典子さん

1947年12月生まれ。三重県尾鷲市出身。ソフトバンクモバイル・小出堯さん過労死労災認定裁判原告

苦しみながら うつ病を発症、自殺

 夫は、1994年4月に東海デジタルホン開局に向けて、音響機器メーカーケンウッドから出向、長時間残業を強いられ、眠れない、食欲不振、無気力状態が続き過重な業務の結果、うつ病を発症、通院しながらの勤務をしました。
     
当時の業務は、非常に過重でした。開局予定までの3ヶ月足らずの間にたくさんのマニュアル作成のため、家に持ち帰って深夜に及ぶ仕事の連続、月100時間を超える時間外労働を毎月のように強いられていました。

 しかも、携帯電話が普及していなかった当時、非常に重いプレッシャーでした。担当課長という責任ある部署で、顧客のクレーム対応、ショップ店員教育、エリア調査業務、保守管理、手配業務など多種の仕事を手探り状態でやっていました。
 その後、2002年12月に全く経験のない物流部門への配転、夫は、身体障害者4級で足が不自由で、片道2時間の通勤、2人担当の仕事を1人で引き継がされました。夫は「とても一人で出来る仕事ではない」と毎日上司に訴えましたが、聞き入れてもらえず苦しみながらたった5日間勤務して56才で自殺しました。

どこに相談したら

 家庭を愛し、優しかった夫のことがいまも心の中で生きています。夫が亡くなったあと「なんで助けてあげられなかったのか」と自分を責め続けました。私たち家族は何にも知らずどこへ相談に行けばいいのかわかりませんでした。

 息子は県内外の法律事務所をまわり、訴えたのですが「証拠がない」といわれ、やっとまわり歩いた新聞社で名古屋南部法律事務所を紹介されました。息子と娘と三人で泣きながら行きまして、先生たちも、どうやってはじめていいのか分らないというところからの出発でした。

高裁で和解を勝ち取る

 夫の死から8年後の2003年7月に「夫を過労自殺においやった会社を許せない」との思いで名古屋地裁に提訴、長いたたかいでしたが、弁護団、地域、全国の大きな支援の力で、裁判所、会社を動かし、2009年6月にソフトバンクに対する賠償裁判は高裁で和解を勝ち取ることが出来ました

ひたすら訴えて歩いて

 全く何も分らない私たち家族に、「一人では裁判は勝てない。運動をしなければだめだ」と声をかけていただきました。最初は、その意味がよく分りませんでしたが、初めての団体まわりでひたすら訴えて歩きました。

 たくさんの輪を拡げていただいたことが、私の財産、行動して足で歩いたことは私の誇り、自慢です。
 たくさんの所に出かけていって、みなさんに応援していただいたことは忘れることはありません。

 そして、支援する会の争議団の人たちと出会い、「支援の会」を立ち上げていただき、多くの人との出会いがあり、運動や署名を拡げて裁判を進めることがどんなに大切かということも分ってきました。たくさんの方が心から自分のことのように、支援していただいて。

 夫は家族を大切にしてくれて、いつも「家族は一致団結」が口癖でした。娘、息子の家族も「一致団結」と最後まであきらめず、たたかったことが和解までこぎ着けたのかと思っています。

過労死労災認定を求め

 私は、いま、夫の過労死労災の認定を国に求め、2009年11月に名古屋地方裁判所に提訴し、たたかっています。

 名古屋西労働基準監督署は、業務とうつ病との因果関係を認めず不支給処分としました。理由は、「うつ病治療に途中1年余中断があるのは寛解したからだ。再発したときは、業務は多忙ではなかったから労災は認められない」というものです。
 担当医の証人尋問も無視をした不当な決定です。

 愛知県では、中電過労死、トヨタ過労死とも裁判になってやっと、労災が認定されたというように、企業寄りの労働行政が行われていると思います。「家族の会」は、過労死をさせた会社は、名前を公表させよという裁判をすすめています。

えん罪で苦しむ人に衝撃 少しでも役に立ちたい

 私は今、救援会のほうもお手伝いしています。いろんな方々と繋がりを持たせていただいています。

夫の裁判を通じて、様々な人たちを知りました。布川事件の桜井さん、名張毒ぶどう酒事件の奥西さん、私たちとは違った苦しみの人たちがいる。私は自分の夫が死んで裁判をして初めて国民救援会のみなさんのこと、えん罪で苦しんでいる方々を知り、大変衝撃でした。

 過労死自殺を生まない社会のため、また、えん罪事件の支援にすこしでも役に立ちたいと思います。

 なかなかゆっくりできないなあ(笑い)と思いながらも、すこしでも参加していければと、自分の裁判をやりながら進めていま す。どうぞ、ご支援 をよろしくお願いします。

ソフトバンクモバイル過労死労災認定裁判は、3月24日(水)午後3時30分から第2回口頭弁論が名古屋地方裁判所201号法定で行われます。ぜひ、裁判傍聴をお願いします

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