【11.02.10】インタビュー 自民党愛知県議員団総務会長、県議会新進クラブ幹事長などを歴任され、現在、弁護士として活躍されておられる梅村忠直さんに聞く

議会は市民のための政策論議の場ー活性化こそ真の「議会改革」

 
長年の議員経験をもっておられる弁護士の梅村忠直さん。1月25日、事務所を訪ね、二元代表制、真の「議会改革」についてお話しを伺いました。 

梅村 忠直さん
 
1950年名古屋生まれ。一橋大学法学部卒業、弁護士。自民党愛知県議員団総務会長、県議会新進クラブ幹事長などを歴任。

憲法で規定されている二元代表制

二元代表制は、憲法93条に、首長と議会の議員は住民による直接選挙で選ばれると規定されています。

 地方自治体の首長と議員は直接選挙という形で選ばれ、執行機関である行政、首長に対して、チェック、監視の機関が議会であり、憲法で規定されています。政策提言もふくめて、抑制均衡のなかでよりよい地方政治をすすめていくということです。

 地方自治体の政治の問題がどこにあるのかを考える際に、理想としての制度と、制度がどのように運用されているのか、実態はどうかということは、やはり別個の問題として捉え、実態をいかに本来の姿に近づけていくのかということが重要です。
 ここのところ、地方自治体の首長と議会の関係は、オール与党体制のような形ですすめられ、癒着構造ができ、そこに本来あるべき姿と現実とのずれが生じてきていると思います。

 私が自民党の県会議員時代に本会議で、知事の多選問題を取り上げて質問したことがあります。 一方的に批判すると言うことではなくてアメリカ大統領は三選禁止との事例も挙げ、長くやり過ぎることはいかがなものか、首長の権限は非常に強いので、長くやるとすれば、首長は自戒の念をもって進んで行かなければいけないと取り上げました。
 そのあとで、他党の議員さんが本会議で質問に立ち「梅村議員は多選問題で、知事に対して批判的なことをいったけれど、私はそうは思わない。」そして「私は桑原、仲谷、鈴木と三代の知事にお仕えし・・・」といったのです。私は、「議員が知事に仕えるのか」と、びっくりしました。

 首長は、たとえ人格者であれ長く職にいれば、間違いも起こすこともあれば、時には暴走することもないとは言えないでしょう。
これが議会の役割、あくまで対等の関係です。議員の中にこんな意識の人がいるのかとびっくりしてしましました。これが、まさしくオール与党体制で、癒着というなかですすんできたことでしょうね。
 ある時は止める、時には背中を押す。
 これが議会の役割、あくまで対等の関係です。議員の中にこんな意識の人がいるのかとびっくりしてしましました。これが、まさしくオール与党体制で、癒着というなかですすんできたことでしょうね。

議論を尽くして

 本来、議会と首長を最高責任者とする行政は、基本的には対立の構造です。お互い、緊張関係の中で議論を尽くしてよりよい方向へすすめていくために、首長のほうも聞くべき所は聞き、修正するところは修正し、議会のほうも、首長の説明に納得するところは賛成へ、というのが本来の議会です。

 一つの政策を多数派であれ、少数派であれ、提言すれば実現するというものではないですね。一歩一歩地に足をつけて、すすめていきながら、そこで出てくる問題を一つ一つ解決して初めて実現できる。「千里の道も一歩から」ではありませんが、先ず第一歩を踏み出すことによって、それが次に繋がっていくのです。
それを決めていくのが本来の民主主義ですね。最終的には、多数決で決めるのですが、そこに当初、提示された議案は修正されていく過程があると思いますし、その過程が大事です。

 現在の名古屋市議会の実態が最高だと誰も思ってないし、私も思っていません。
 議会の場は市民のための政策論議をする場です。いかに、議会の議論を活性化していくのか、議会で参考人を呼んで質疑、議論の中から、政策を生み出していくこともできるわけですから、今の制度の中で、十分活性化するこ総とはできます。その基本的精神を唱ったものが「議会基本条例」です。

定数、報酬問題

 定数、報酬がどうあるべきか、どうでもいいという訳ではありませんが、議会改革の本質的問題ではないはずです。

 報酬を論じるときは、市民の側から、議員はこれだけの仕事をすべきだ、その仕事に見合う報酬はどれぐらいなのかというところから出発すべきです。当然、仕事をすれば経費が必要になり、民主主義のコストとして税金で負担をすることになります。しっかりとした仕事をすれば、それはプラスになって有権者に返ってくるのですから。ところが、数字の方が先に歩いてしまう、おかしな議論だと思います。

 河村市長誕生の時に、社会全体に閉塞感があり、閉塞感を打ち破ってくれるのではないかという期待が雪崩現象でいってしまった。生活保護世帯がひろがり、経済的に苦しい、そこへもってきて、いかにも、役人、議員が贅沢しているように宣伝されています。しかし、削ればいいというものではない、報酬を削り、仕事まで削ってしまうのですか。

 定数と報酬は関連してきます。地方自治法に定められた法定数があります。名古屋市議会は88の法定数に対して、現在75と削減率は政令市のなかでもトップクラスです。民意の反映というのであれば、法定数いっぱいというのも一つの考え方です。一方で、そんなに大所帯が必要かという考え方としてあるとは思いますが、政令市でそれをやっていくと2人区、1人区になり半分近い死票がでるわけですから、民主主義の制度としていいのかということになると思います。一票の価値の平等を基本に、もっと冷静にやってもらわないといけないですね。

司法改革―いったん立ち止まり論議も必要

 いま、弁護士の就職先がないという問題が生じています。いきなり独立して一人で出発するのは難しい。事務所に所属し、いろんな経験やノウハウを身につけて独立、開業していくのが従来の姿でした。今、修習期間が短縮され、所属事務所は見つからないとなると果たしていいのか。

 小泉首相の時に司法改革と称して規制緩和を一気にすすめました。
 法曹人口が少なかったという時代に増やせと言うのは分りますが、いったん立ち止まり、議論が今、必要だと感じています。

 趣味はと聞かれると困りますが、寝る前の読書ですかね。小説、経済評論など日によって読書時間が30分のときもあれば、気がつくと夜中の3時というような時もありますね。(笑い)

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