【12.09.06】幅広い批判勢力の結集、うねりに期待 反原発がひとつのキーワードに 「日本の春」を!―渡辺斉さん(元朝日新聞論説委員)

バラバラじゃあいかんと

 朝日新聞連載「野武士のごとく」の編集にたずさわりました。成瀬さんは、難しい言葉を使われましたので、ものすごく書き直しました。そしたら、すごく怒って「なべちゃん。何だ、これは。元の原稿がないじゃないか」(笑い)と。愛労評では通じても、朝日新聞では通じません、とこっちも聞き入れませんでしたね(笑い)。でもさすが、すぐに手を入れなくてもよくなりました。
 成瀬さんはいつも「人民戦線を作るために共産党と社会党が一緒にやらないといけない」と言っておられました。その信念は強く、共産党と社会党の接着剤として適任の人という気がしましたね。「バラバラじゃあいかんのだ」ということをいつも聞きました。

水、環境問題から見えること

 かっこよく言えば、記者一筋できました。(笑い)、駆け出しの20代、新幹線公害で南・港区を担当しました。新幹線公害原告団結成と新幹線公害和解をスクープし、大変印象に残っています。
 朝日新聞の論説委員を10年やりましたが、担当は水問題、環境問題でした。若いときから水、環境問題に関心があったのでその思いを仕事で貫けました。大気 汚染と水問題は広い意味で環境問題につながります。
 水問題からあらゆる問題が見えてくる。地球温暖化もそうですし、水俣公害もそうです。水と貧困問題は密接不可分です。政治が安定していないと安全な水に恵まれません。途上国問題でもあります。 イラク戦争で、アメリカが劣化ウラン弾を使う。すごい放射能で土壌も水も汚染をされることになる。汚染された水を飲んだり、作物を作ったりしなければいけない、これはまさに戦争と環境問題が密接不可分にかかわっているわけです。戦争は最大の環境破壊です。水問題からいろんなことにつながり、関心が広がっていきます。

メディアの果たす役割とは

 メディアの役割が低下しているとはいえ、果たす役割は重要です。今の政治は世論調査政治になっていると思います。メディアのやる世論調査に常に、一喜一憂して腰の座った政治ができなくなった気がします。
 今の民主党は、だらしがないと思いますが、日本の政治を見たときに、あまりにも、毎年、首相が交代する、これでよいだろうかと思いますね。

選挙制度に問題が

 今、国会で比例定数削減が問題になっていますが、比例代表制、完全比例が望ましいです。
 いまの選挙制度では、当選したら、次の選挙しか考えないように、落ち着いて政策の勉強ができない。人材が生まれない。これは選挙制度に問題があると思います。議席と得票に大きな差がある、これは小選挙区の最も大きな弊害です。これは異常ですね。ヨーロッパなどは比例の流れです。
 ポピリズム政治には警戒が必要です。維新の会のような流れが強まれば政治はますます右傾化します。河村氏、橋下氏に期待をしている人々がいる。英雄待望論、閉塞状況のなかで強力なリーダーシップをもった人が手助けをしてくれると思っている。橋下氏や石原氏も右派です。強いものに憧れるという点では、ヒトラーと構造は同じですよ。
 だから非常にこういう時代は怖いですね。

底辺にあるエネルギー

 わたしは、成瀬昇さんが言われていた「人民戦線」というかどうかはともかくとして、幅広い批判勢力の結集、うねりを期待します。
 底辺にあるエネルギーが、どういう形になっていくのか。一つのキーワードは、反原発だとおもいます。ゴリゴリの自民党支持者の人に浜岡原発反対の署名をしてほしいと頼まれました。「時代は変わった!」と思いましたね。かつて、反原爆運動で、杉並の女性たちが立ち上がって、大きなうねりがありました。
 それを思い起こせば、反原発がひとつのキーワードになるのではないか。多く人を結集することができるのではないかと思います。
 こういう勢力が次の世代をつくる。そういううねりが起きそうな気がしますし、起きて欲しい。この間の国会包囲行動はすごいですね。
 そういう人々と共同していくことが大事ですね。「革新」って若い人にはなかなかわかりにくい。それに変わるいい言葉がないでしょうか。「改革」はいい言葉ですが「改革」に踊らされてはいけません。小泉改革なんて、その典型ですよ。
 今の時代、やはり、ネット、フェイスブック、ツイッターなどをフルに活用して、「日本の春」をつくるということじゃないでしょうか。

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