【13.03.10】インタビュー「原発は日本の行く末を左右する根本問題」北村栄弁護士

弁護士だって役にたちたい!―脱原発応援弁護団@名古屋

 
 脱原発弁護団全国連絡会で活動され、愛知でも応援弁護団をたちあげ、取り組んでおられる北村栄弁護士を事務所にお伺いしてお話を聞きました。 
                     (聞き手・岩中美保子 撮影・加藤平雄)

北村 栄さん

 弁護士。1955年京都府綾部市生まれ。現在、名古屋第一法律事務所に所属。青年法律家協会あいち支部長。脱原発弁護団全国連絡会議、浜岡原発廃止訴訟弁護団。

原発問題を取り組むきっかけ  

 弁護士20年目の2011年、脱力感もあり落ち込んでいた時期でした。
その時に3・11大震災で原発事故が起きました。かつての名古屋大学の恩師が「人間は完璧ではない、放射能は恐ろしい、人間の手には負えない」と言っておられたことが思い起こされ、これはやらなくてはと思いました。

脱原発弁護団 全国連絡会議を結成

 原発問題は、弁護士の使命の最たるものであると思います。原発被害は、現在および将来にわたる史上最悪最大の公害です。
 健康、仕事、家族、人とのつながり、コミュニティ、土地、人生全部が奪われる根こそぎの人権侵害です。 電力会社など「原子力ムラ」が権力と金の力でマスコミ等情報統制し「表現の自由」、「知る権利」がない、民主主義が問われる大きな問題だと直感的に思いました。取り組んでいる弁護士を探しました。熱心にやるとそういう情報が入ってくるんですね。「北村さん、一緒にやらないか」と声がかかり、2011年7月16日に脱原発弁護団全国連絡会議結成に参加、すべての原発立地地域から170名の弁護士が結集しています。
 情報や、理論、資料、学者の証人などを共有化し、いまは、学者の方たちの協力もあるようになり、全国で10以上の裁判を進めています。例えば、数が少ない良心的な学者証人を探すのにこれまで大変苦労をしていましたが、今では情報を共有でき、学者証人の負担も軽減できるのです。
 脱原発弁護団の結成で、原発問題の困難な裁判に、展望ができます。
 一緒にたたかう決意を固めて連帯でき、それは、裁判官に影響を与えます。裁判官も判断を出すのは勇気がいる。裁判官にあなたの家族だって、いつ被害に遭うかわからない、それを止めなかったのはあなた方の責任だ」と訴え、司法、裁判官も変わっていく、変わってきていると思います。

「までいの力」に出会って

 飯館村のみなさんが作られた「までいの力」(手間暇を惜しまず、丁寧に心を込めて、つつましく、との東北の方言)の写真集に出会いました。
 飯舘村は、「日本の原風景の残る最も美しい村連合」に加盟し、本を発行しようとしていた時に3・11が起こりました。そして、この一頁が加わったわけです。「ここには、2011年3月11日午後2時46分以前の美しい飯館村の姿があります。」と、悲しいですよね。自然豊かで人々の笑顔で溢れていた美しい村はもう、ありません。原発がもたらすものを一瞬にして深く誰の心にも伝えるものです。
 是非、多くの方に見てほしく、普及しています。
 首都圏反原発連合のパンフを2,000部注文し、お手紙付きで郵送などして広げています。

脱原発応援弁護団@名古屋

 大飯原発の再稼働に反対する市民のデモは、全国で展開され、関西電力名古屋支社の前でも毎週、多くの市民が集まり、最近では中電前でも始まっています。
 これを敵視するかのように、愛知県警は、機動隊や警備課員を、関電不動産は警備員を動員し過剰な警備をしています。
 昨年の5月の行動参加者に対し5ヶ月もたった昨年10月末に「建造物侵入」容疑で取り調べるなどの介入も起きています。
 被疑者といわれる人に付き添ったのですが、関電の株主で、警備員に声をかけて入っただけです。驚いたのは、被疑事実について「静止を振り切って」と全く事実とはかけ離れたことで2日にわたり十何回も呼び出しされています。逮捕しようという狙いです。原発反対運動の盛り上がりで人々が気づいて行動を起こすことへの圧力です。
 事態を軽視せず、早期に組織的体制で取り組んだことで、今年1月16日に不起訴処分の通知が来ました。
 そばで寄り添って「何かお役にたてば」と22人が呼び掛け人になって応援弁護団を募っています。若い弁護士が「見守り弁護団」という名称をつけましょうと言ってくれています。
 いま、行動しないといけない。愛知県弁護士会会員1600人に広く呼び掛けようと思っています。
 高岳関電前に「原発訴訟弁護団」のノボリとタスキをかけ、数回行っています。 今後は「見守り弁護団」というノボリもつくっていきたいと思っています。

身近なところから行動を

 原発問題には、今後の日本の行く先を大きく左右する私たち自身の根底的な問題があると思っています。 私も含め、国民、市民に問題はなかったか。国策のため国任せ、人任せの意識がどこかになかったか。
 石原都知事、橋下市長、河村市長等々がもてはやされる現象にも共通するのですが、誰かがやってくれそうだから任せておけばよいとして、自分自身の問題として十分自覚してこなかったのではないでしょうか。
 原発問題を真摯に捉え、克服していくことは日本の民主主義の成長に繋がり、まさにピンチがチャンスであると思います。私たち一人ひとりの実践が問われています。家族に原発って危ないよと伝えるなどひとりひとりが身近なところから行動していきましょう。
 若い人を育てることが大事。人の三倍も仕事が出来ませんが、同じ志を持った若い人を三人育てていくことはできます。青法協の仕事をしているのは、そのためでそうすれは、引退して好きな趣味を思う存分楽しむこともできると思いますね(笑)。

このページをシェア