県革新懇ニュース−この人に聞く

【13.11.20】山田壮志郎さん――貧困問題 当事者が声をあげられる社会を

一万人の人が不服申し立て

  山田 壮志郎 さん 

1976年生まれ。日本福祉大学社会福祉学部准教授、NPO法人ささしまサポートセンター副理事長・事務局長。反貧困ネットワークあいち幹事。




 
 大学生のときから貧困問題に関心をもち、反貧困ネットワークなどで取り組まれている山田壮志郎さんに貧困問題、生活保護の問題についてお話を伺いました。



大学生から貧困問題に取り組んで

 貧困問題に関わったきっかけは、大学三年生の時です。当時、名古屋で林訴訟裁判がありました。林訴訟とは、名古屋市内でホームレス生活をしていた林さんが生活に困窮して生活保護を申請したものの認められず、1994年に提訴した訴訟です。僕が大学三年生の時に名古屋高裁で審議されており、裁判の傍聴に行ったり当事者や支援者の人にお話を聴くようなゼミ学習をしました。
 私は大学で、生活保護法は日本の社会保障・社会福祉の体系を下支えする最後のセーフティ・ネットであると勉強しました。しかし、ホームレスの人たちは住所がないからとか、働けるからといった理由で生活保護から漏れている。これは日本の社会福祉の根本的な問題ではないかと関心をもちました。こうしたことがきっかけで笹島診療所(現・NPOささしまサポートセンター)で、大学院生の頃からホームレス支援の活動に関わっています。
 生活保護の運用はいくぶん改善されてきましたが、まだまだ漏れはあります。捕捉率(最低生活費未満の収入の人のうち生活保護を受けている人の割合)は厚労省の示した数字でも32%ぐらいです。生活保護受給者が210万人を超えて戦後最多だと言われますが、少なく見積もっても倍ぐらいの人たちがまだまだ保護を必要としているのではないでしょうか。

「生活保護を受けさせない」法案に

 安倍政権は、先の通常国会で廃案になった「生活保護改正関連2法案」を今臨時国会で成立させようとしています。生活保護改正案は、生活保護が必要な人に申請すらさせない、受けさせないという法改正です。また生活困窮者自立支援法案は、生活困窮者の支援メニューの幅を広げる可能性を持っている一方で、新たな水際作戦の手段に使われるのではないかとの懸念も指摘されています。
 生活保護受給者が増加していることから、なるべく保護を受けさせないようにしよう、生活保護基準を切り下げて保護費を減らそうという動きがみられますが、貧困問題を解消することこそ必要です。生活保護が増えていることを問題にするのではなくて、生活保護を受給しなければならないほど生活に困窮した人たちが増えていることを問題にすべきです。

生活保護はさまざまな制度に影響が・・・・・・

この8月に生活保護基準が切り下げられました。3年かけて約670億円削減するかつてない大規模のものです。
 生活保護基準は、最低賃金や住民税非課税限度額の算定、就学援助、介護保険料負担、公営住宅家賃減免など多くの制度に連動し、これら諸制度の利用者に深刻な影響が及ぶ可能性があります。現状でも苦しい受給者の生活がますます苦しくなるだけでなく、幅広い市民生活にも影響してきます。
 つまり、生活保護基準を引き下げるということは、この国のナショナル・ミニマムが引き下げられるということを意味するのです。生活保護を受けている人たちだけの話ではなくて、みんなの問題であるということを分かってもらうことが大事です。

当事者が声をあげること

 朝日訴訟もそうでしたが、生活保護の改善のためには当事者が声を上げていくことが大事です。この8月の生活保護基準切り下げに対しては、全国で1万人の人が不服審査請求をおこないました。受給者の中には、生活保護を受けていることを恥ずかしいと感じたり、お世話になっていると考えている人が多く、審査請求をすることをためらう方も少なくありませんでした。そんな中、一万人もの人が声を上げたことは画期的なことだと思います。
 また、審査請求では共同作業所連合会や社保協などいろんな分野で活動する人たちにも協力をしてもらいました。基準切り下げ問題は、幅広い市民生活に影響を及ぼすだけに、運動の輪を広げていく可能性も持っているのではないかと感じます。
 昨年の生活保護のバッシング報道をみて、まだまだ貧困に対する理解が日本社会の中に浸透していないと感じました。派遣村の頃は貧困の問題について同情的な空気があったのですが、芸能人の一件で一転してバッシングが始まり、まだまだ浸透していないことを痛感させられました。
 学生たちと話をしていても、自助努力とか自己責任の考え方が世の中に根付いていることを感じます。人間は一人で生きているように見えて、本当は周りの人や社会の支えがあって生きているはずです。しかし生活保護のように、目に見える形で社会に支えられている人にばかり攻撃が向けられます。生活保護バッシングの背景にも、そのような考え方があるのではないでしょうか。
 こうした風潮を変えていくためには、同じような考え方をもっている人たちで集まって貧困を解消することの大切さを確かめ合うのではなく、違う立場の人たちにも理解を広げていくことが重要です。
 報道の影響もあって、生活保護受給者と言えばパチンコをしていたりお酒を飲んでいたりする姿ばかりがイメージされています。ギャンブルや飲酒に走ってしまう背景には、他に楽しみがなかったり、人や社会とのつながりが断ち切れてしまっていたりすることもあるのですが、なかなか理解されません。
 生活保護受給者が地域の活動に参加したり、何らかの形で活躍できる場をつくることができれば、住民との間に顔の見える関係ができ、報道によって作られたイメージを変えていくきっかけになるのではないかと思います。

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