県革新懇ニュース−この人に聞く

【15.03.10】奨学金・ブラックバイト 日本の未来にかかわる問題―大内裕和さん(中京大学国際教養学部教授)

学生の実態に耳を傾けて

  大内 裕和 さん

1967年神奈川県生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。中京大学国際教養学部教授。専門は教育学・教育社会学。主な著書に『日本の奨学金はこれでいいのか!』(あけび書房)、『「全身〇活」時代』(青土社)。奨学金問題対策全国会議共同代表。

奨学金説明会に長蛇の列

 「最近の教員は奨学金の返済で生活が厳しい」と聞き、当時非常勤で教えていた愛媛大学の教職課程の授業で奨学金問題を取り上げました。すると学生の反応が全然違う。コメントペーパーが表では収まらなくて裏まで書いて返ってくる。そんなことは初めてでした。借りている額も月8万〜12万という学生が多く、百名のうち七十名が利用していました。3回の授業でおさまらず、悩んでいてもしようがないから会をつくりなさいといって授業中に「愛媛大学 学費と奨学金を考える会」が作られました。それが原点になっています。
 2011年4月に中京大学に移り、比較的豊かな愛知県は、愛媛県とは違うかなと思っていましたが、すぐに覆されました。4月に大学の中庭に来たら長蛇の列ができている、学生に聞いてみたら奨学金の説明会です、と。今大学生が一番集まるのは、大学祭ではなくて、奨学金説明会ということになっています。
 2011年の秋からテレビ、新聞の取材を受けない週はありません。それくらい大問題だということです。

サラ金まがいの取り立て

 かつての日本育英会は2004年に廃止されて日本学生支援機構という独立行政法人になりました。
 有利子制度が導入されたのが1984年。今は全体の7割は有利子です。有利子枠ができるということは金融事業に変化したということです。
 2008年ごろから債権回収業務が民間委託になり、サラ金まがいの取り立てが行われるようになります。債権回収会社から職場に電話がかかってきて「給与を差し押さえる」というんですよ。さらに延滞金も発生します。
「返せるけど返さない」なんてありえません。

ブラックバイトの実態

 かつてゼミ合宿は1か月以上前に打ち合わせればできました。バイトがあっても休めた。でも今はゼミ合宿の日程を決めようとするとバイトのシフトが1〜2か月前から決まるから休めない学生が出てきます。一方でシフトが曜日固定制だから休めないという学生や一週間前にならないとシフトがわからないという学生もいます。
 試験前や試験期間中もバイトが休めず、勉強できない学生が出始め、ついには、試験に出られず、単位を落とす学生が出てしまいました。
 彼らが「勉強する気がない」のではありません。勉強したいから、合宿に参加したいからこそ私の所に相談にくるのです。

バイトに50社おちた

 かつては大学生活に必要なお金は親が出して、それ以外の「自分で自由に使えるお金」のためにバイトをする学生が多かったです。
 今では、バイトは「それをしなければ大学生活が続けられない」状況に変わっています。教習所や成人式の費用、就活交通費などをバイトで稼ぐ学生が増加しています。
 「バイトに受かるまでに50社落ちた」という学生もいました。態度もよく能力も高い学生です。なんでそんなに落ちるのか、実験や必修でバイトに入れない日があるといったら落とされるのだそうです。非正規が増えている現在、必修とか実験とかいう学生はいらないのです。そうなると簡単にはバイトも辞められません。

非正規雇用の蔓延

 やりたい放題の非正規雇用の増加が起こっています。かつて正規がやっていた責任の重い仕事を非正規が担わざるを得なくなりました。学生と主婦パートだけでまわす職場、非正規が正規社員にあったことがないという職場も登場しています。

再生可能社会へ

 若者二人に一人が非正規、さらに利子つきの奨学金返済がのしかかっている。これでは結婚できないし、子どもも持てません。つまり労働力の再生産ができないのです。それではさすがに支配層も困るでしょう。再生産可能社会をいかにしてつくっていくかが、勝負どころだとおもいます。

「友達に会えない」

 一年生の悩みを聞いたら「友達と会えない」というのをよく聞きます。
 「愛知県 学費と奨学金を考える会」の活動でも月に2回集まることが、とても難しい。驚いたのは往復280円の交通費が出せずに参加できない学生がいるということです。会費無料は当たり前で交通費もだす、そういう姿勢を示すことが今の学生の貧困と向き合うということです。これを認識してから「愛知県 学費と奨学金を考える会」はかなり変わりました。
 実態を知れば、呼ぶ側も工夫が出てきます。時間がない人、お金がない人を集める工夫を徹底してやることが大事です

多数の人の問題

 奨学金を借りている学生は2012年に全体の52.5%に達し、借りている学生の方が多いという構造に変わりました。
 ブラックバイトも奨学金も若者や学生だけの問題ではなくなっています。若年層が貧困で家庭が持てないということは、日本の未来にかかわる問題です。最賃千円や奨学金返済減額の運動は若者の心に響きます。革新懇でもそういう取り組みが必要ではないでしょうか。

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