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【15.10.10】愛敬浩二さん――大切なのは、安保法を使わせず、廃止にすること―「私たちの民主主義」を始めるために

愛敬 浩二さん(名古屋大学教授)

  1966年東京生まれ。現在名古屋大学大学院法学研究科教授。名古屋市千種区在住 1996年早稲田大学大学院法学研究科博士課程修了。1997年信州大学講師、2005年から現職。「立憲デモクラシーの会」呼びかけ人、「国民安保法制懇」メンバー。

政権にとっては予想外の国民的たたかい

 安保関連法成立に関して、安倍首相が4月にアメリカに行き「夏に制定する」と言い切ったのは、国会の議席数から成立させられると考えたからです。しかし、歴史的な議会外の反対運動の高まり、野党5党が最後までたたかいました。国民とそれを支えたメディア、インターネットなど後押しがあったからです。政権にとって予想外の事態だったと思います。
 国民は九条の根本に手をつけること、さらには、民主主義の軽視に明快にNOの意思を示したことの意味を確認しておく必要があると思います。

権力に迎合せず信念を貫く

 2014年に「立憲デモクラシーの会」、「国民安保法制懇」の呼びかけ人になりました。前者は人文社会科学の学者だけではなく、理系の学者や経済人が集まり、日本国憲法の民主主義は単なる多数決主義ではなく、憲法に従った民主主義だという考え方を広める役割を果たしました。元内閣法制局長官の大森政輔さん、元防衛官僚の柳沢協二さん、憲法学者の長谷部恭男さん、小林節さんなどが参加した国民安保法制懇は、専門家の立場から閣議決定や安保法案の問題点を指摘してきました。政府の中枢にいた大森さんが参考人として呼ばれたときの内閣法制局への批判はすさまじかった。多くの方々が信念を貫かれました。
 解釈改憲に異論を表明された歴代内閣法制局長官の阪田雅裕さん、山本庸幸さん、宮崎礼壱さんらの発言や朝日新聞(9月3日)に掲載の山口繁元最高裁判事のインタビューは厳しい発言でした。衆議院憲法審査会での長谷部さんらの違憲発言をきっかけとして、爆発的に反対運動が盛り上がりました。6月4日の衆議院憲法審査会の参考人質疑の3人の憲法学者の発言は、学者として信念を貫く、まさにモデルになったと思います。3.11以後、学者は信用できないと痛感していた一般の人にとって新鮮だったのではないでしょうか。
 これを受けて教育学者の佐藤学さんらが、即座に「安保関連法案に反対する学者の会」を立ち上げました。権力に迎合すれば、法律家も学者も、専門職業人としての尊厳を失う事になる。この思いで多様な分野の学者が、そして、裁判官や日弁連が声をあげました。
この動きは、今の政治状況を見るとき非常に重要だと思います。
 私自身も、名古屋地域で大学人が安保法案に反対する機運を高めるための活動に取り組んできました。

安倍政権の不真面目さ

 総裁選さえやらない、仲間内でしか話さない。全く聞く耳持たない。首相の地位にありながら汚いヤジをとばす。安倍政治の気持ち悪さ、イヤだという人々が増えています。その感覚ってとても重要だと思います。
 ホルムズ海峡も想定していない。アメリカ艦船に日本人が乗っている必要ないとこれまでの説明は全部撤回しました。何が残ったか。「その都度政府が判断します」ということ。しかし、信用できません。
 違憲だという疑問にたいして一切説明できていません。「戦争にいくわけではない」、「存立危機事態のみに発動する」という中身のない答弁に終始しました。衆議院での強行採決後、北朝鮮と中国の脅威を強調し始めましたが、それならば個別的自衛権で対応できるので、法改正は不要です。安保法案の説明ができなくなり、説明する意欲さえみせなかった。

制定されても使わせない

 第一は、制定されても使わせないことが重要です。法案通すため、政府は安保法案が「限定的」なものであることを強調したので、実際の自衛隊派遣のハードルは上がりました。スーダンのPKOで駆け付け警備から始めようとしていますが、本当に安全かを厳しく問うことで、安保法を使わせないことが大切です。
 民主党が徹底的に反対した意味は大きい。今後、安保法に基づいて自衛隊が派遣されるとき、最大野党の民主党は簡単には賛成できないでしょう。国会でも反対意見が多く、国民の支持もない状況下で、自衛隊を危険な地域に派遣することは困難なはずです。
 

「私たちの民主主義」の始まり

 第2の課題は、この法律に反対する勢力を国会で多数派にしていくことです。その際、立憲主義、民主主義の否定は許さないとの意思を多くの国民が持つことが大事です。ただし、安倍自民党の対抗勢力を作るため、野党再編を急ぐべきとの意見には賛成しません。安保法に賛成票を投じた議員を落選させるため、野党間で選挙協力を行う、その先で野党の連携が深まり、国会の多数派を獲得できたら、その時点で廃止する。時間はかかっても、意見の多様性を大切にするのが立憲民主主義だと思うからです。
 多くの人々が今回、生活に根ざした連携こそ、安倍政治に対する最善の対抗手段であることを学んだと思います。生きるに値する民主主義は、今ここから始まります。

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