県革新懇ニュース−この人に聞く

【16.06.10】ブラックバイトを根絶し、人間らしい暮らしを!――大学で弁護士が「ワークルール」の講義

  久野 由詠さん

1984年知立市生まれ。弁護士。ブラックバイト対策弁護団愛知事務局長。2012年12月弁護士登録。名古屋第一法律事務所所属

ブラックバイトとは

 私は母子家庭で育ち、三歳から母が女手一つで私と弟を大学院まで通わせてくれました。母は朝の9時から夜11時くらいまで働いていました。最近の報道をみるにつけ、私も貧困と隣り合わせだった、母の努力と周囲の環境に恵まれていただけだったんだと感じています。
 それゆえ、ブラックバイトは絶対に根絶し、若者の貧困状況を改善したいと思っています。
 ブラックバイトとは「違法な長時間労働をさせたり、契約内容とちがった業務をさせたり、厳しいノルマを課したり、大学の試験期間であっても休ませてくれないなど学生であることを尊重しないアルバイト」をいいます。

大学卒業し、多額の借金

 ブラックバイトが蔓延した背景には二つの「貧困」があります。一つは学費を賄えるほど世帯収入がないという文字通りの経済的貧困。もう一つは知識の貧困です。
 経済的貧困については、学生の半数以上が奨学金を借り、大学を卒業した時点で400万とか500万、多い人は1000万円という借金を抱えて社会へ出て行かざるをえません。就活費用とか、免許を取るにもすべてお金がかかる。アルバイトをしないと学生生活は成り立たない。
 知識の貧困については、アルバイトを始めるまでの間に労働者の権利(労働契約法や労働基準法で労働者が守られているということ=ワークルールと呼んでいます)を学ぶ機会がないため、違法・不当に酷使されてしまうのです。ワークルール教育の欠如は、使用者側も労働法を知らないことを意味します。
 義務教育・高等教育におけるキャリア教育で強調されるのは権利ではありません。いかに会社に順応して必要とされる人間になるのかということです。理不尽な扱いに抵抗する力については学びません。そのため、おかしい、きついと思っても、上司から「こういうものだ」と言われたら何も言えなくなってしまいます。アルバイト時代に違法・不当な労働環境に慣れてしまうと、正社員になった後、アルバイトを雇う側,すなわち被害者から加害者になりかねません。この悪循環を断ち切らないといけないと思います。
 日弁連もワークルール教育推進のためのPTを立ち上げ、日本労働弁護団もワークルール教育推進法を提案しています。 
 ワークルール教育を全ての子ども達に実施するのは労働者のためだけではありません。ワークルール教育は自分が尊重されているという意識を育むものす。また、人材こそ宝、働く人を大切にする意識は、企業の発展に繋がります。故意に酷使しているのは論外ですが、使用者がワークルールを知らないという事態をなくす必要があります。若者が人生を諦めず、未来に希望を持てるような社会にするために、ワークルール教育は不可欠だと思います。

大学授業に弁護士を派遣

 この間、大学でワークルールを伝える機会を作るために、県内の全大学に、「弁護士を派遣します。ワークルールについての授業をしますのでぜひ、ご依頼ください」と弁護団所属の弁護士で分担して電話をかけ、案内状や弁護団で作成したリーフレットを送りました。「そちらの大切な学生さんが大変困っていると思いますので」と送りつけました。かなり、押しつけ(笑い)です。この活動は弁護団としては2014年7月からはじめています。
 大学でのワークルールの授業には若手の弁護士が出向き、「声をあげるのはすごく勇気がいるけれども、職場が変わればその職場に働くみんなが得をすることだし、それは誤った会社・社会が正しい方向に是正される一つのきっかけになるんですよ」と話します。具体例として、東京のブラックバイトユニオンが協力して声を上げたことで、コンビニの給料が15分単位で丸められていたものを分単位で計算するというように切り替わったことなどを紹介します。現状で仕方がないと諦めてしまっていたら何も変わらないままです、一人で心細いとき、わからないときには気軽に相談してくださいねと呼び掛けています。
 学生は「初めて知りました」「ワークルールを知ることができて良かった」とアンケートに書いてくれています。一方で「職場の人間関係が悪化するから言えない」などの反応もあります。若者たちの、協調性を過度に重視する風潮や孤独を怖れる感覚を無視することもできず、難しさを感じます。

根っこはおなじ

 5月28日には「いのちや人間らしい生活が脅かされている状況を変え、・・・・人間らしい生活を獲得していくため共同した取り組みをすすめていこう」と「人間らしい生活の保障を求める集会」を開催します。
 現代の学生が置かれている状況について、世代間の意識に格差があります。アルバイトを辞められない事情やその背景はまだまだ理解されていません。また、最貧困層から「大学へ行けるのはまだまし」と言われることもありますが、これは、各貧困問題に取り組む運動体が権力側によって分断されているものと思っています。生まれた環境にかかわらず「挑戦・努力できる環境」を創るためには、今までバラバラだった運動体がつながっていくことが大事、根っこはおなじです。 憲法13条に保障された「すべて国民は個人として尊重される」自分の人生が尊重され一人ひとりが大事にされる社会こそ必要です。

こちらから歩み寄って

 多くの学生は、安保法制の問題を自分のこととして捉えていない。生活に必死です。だからこそ、学生達がワークルールを学び、ブラックバイトを告発することで自らの権利が社会と繋がっていることを肌で感じ、人間らしい暮らしをと声をあげていけるようこれからも活動をしていきます。
 大学や高校、中学校での啓蒙授業、無料相談やFBなどSNSの活用も大事です。相談を待つのではなく、こちらが歩み寄って問題を掘り起こしていきたいです。

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