【18.10.10】加藤 洪太郎さん(弁護士)―誰のための改憲か 本質を見抜く!主権者の力で

「水はよく舟を載せ、また舟を覆す」

 
加藤 洪太郎 さん

1944年瀬戸市生まれ。
1967年中央大学卒業、名古屋第一法律事務所所属。あいち九条の会事務局長。

国民主権とは何か

 私は、代々続いた陶器問屋の跡取り、一人息子でした。オヤジが亡くなり、祖父は私に継いで欲しいと思っていましたが、高校生の時キューバ危機があり、そこで自分は何をすべきか考え、平和構築に役立つ職業をと中央大学法科に入学、24歳で弁護士となりました。
 大江健三郎さんらが呼びかけた9条の会は、司令塔がなく会員同士、地域・職域など横でつながり合う活動です。
 それぞれが自覚して自分が人生の主人公であり、力をあわせて境遇を変えていく。いまこそ、国民主権とは何か、もう一度問い直すことが大事ではないでしょうか。
 国民主権はピラミッド型ではなく、対等平等です。国民主権の力を本当に発揮するには、それぞれが自主性を基礎に協力し合うということを、国民性として身につけていくことだと思います。 
 その点で、9条の会の活動の仕方は国民主権の力を発揮し、一人ひとりが協力しあっていくという一番の基本のあり方だと思うのです。

海外参戦体制をつくる

 そこで、私も自ら調べて考えてみました。“なぜ改憲なのか?”を。それは、海外で戦争をする海外参戦体制を作るためだと判断しました。艦船の航空母艦化、F35B戦闘爆撃機など装備の方向を見れば明らか。自衛隊の海外基地がジプチにあります。中近東からアフリカでも軍事力の行使や武力による威嚇ができる態勢が作られてきています。法制面でも改定安保法制のもと、かつて「満蒙は日本の生命線」と言ったように「中東は日本の生命線」として自衛隊を出動させることができる。
 総理は、自衛隊を南スーダンに派遣しましたが、憲法上の制約があり撤退せざるを得なかった。しかし、憲法を変えれば引き揚げなくてもよく必要な戦闘行動もできる。憲法が邪魔になっている。
 イギリスは自国防衛と海外参戦のためにGDPの約2%を軍事予算に使っています。自由民主党は、中期防衛力整備計画のなかで防衛費はGDP2%を参考にすべしといっています。それは6兆円、いまの倍です。

誰のための改憲か

 誰の為の改憲でしょうか。海外直接投資残高は、1998年は30兆円、2016年は152兆円と5倍です。大企業の内部留保が増える一方、賃金には反映されず、その行き先は、国外投資でした。
 それを守る為に軍事力がいるのでは。アメリカ合衆国の軍の基本的任務は、自由主義経済秩序の維持と明示されています。つまり、多国籍超マンモス企業の海外投資、取引資産、経済秩序を守ることとなります。
 日本は海外直接投資が莫大な額になっています。いままではアメリカの力によって秩序を守ってきたが、これからは、日本に秩序を守るために相当なことをしたらどうですか、ということだと思います。
 1%の人が99%の人を支配する体制をグローバルに維持することに向かっています。改憲は安倍さんの好みの問題ではありません。 こうした事の本質をしっかり見て行動することが大事だと思います。

主権者の力

 最高裁長官をつとめたことのある故横田喜三郎さんがある新聞に掲載した言葉があります。「裁判の判決は、法理論を積み重ねて考えた末に導き出されている結論だと、大抵の人はそう思っていますが実はそうではありません。国民的常識がどちらなのかということによって決めます。理屈は後付です。」
 国民的常識がどこにあるのか。真実がはっきりしてくれば、イデオロギーを超えた力になる。裁判でいえばそうなったときには裁判は勝つのです。
 政治の場合もそうではないかと思います。ひろく真実が知られて国民の常識となれば勝てる。
 院外運動、国会を取り巻く運動は日本の戦後史では数えるくらいです。 
 2015年の安保法制反対の運動は横と横の連帯、インターネット型の国民主権的な活動になりました。
 あなた頼みではなく、一人ひとりが着々と力を蓄えていく。
 そうであれば、たとえ、憲法が改悪されたとしてもそれで“一巻の終わり”ではありません。アメリカでは、海外での戦争はダメという法律はありませんが、それでも国民運動で派兵を止めてきた歴史を持っています。

 そういう力は何か。やはり主権者の力です。主権者の力というのは、憲法に書かれているから力があるということではありません。「水はよく舟を載せ、また舟を覆す」これは、中国の唐の時代の皇帝の言葉です。つまり、どの時代も主権者は、国民大衆です。人民(水)は、王様(舟)をうかべているが、転覆させることもできるということ。
 人々の結束によって、そこにしっかりと焦点をあててこそ、国民一人一人が自らを守ることができると思います。
 わからないことがあるときは、いろいろ調べることです。自分の意見に似たものを見つけて安心してしまったり、答えをただ信じるという癖はのりこえないといけませんね。
 真実に行き着くためには、いろんな角度から、あくなき真実の追求、不思議に思うことを好奇心をもって調べることだとおもっています。
 各々が実のある主権者として自己変革を遂げていくこと、この営為に主眼を置くことを、自らが参画する「運動」のなかで具体化する。そのための創意工夫に常に挑戦しあいたいものです。

自覚にもとづく民間外交

 ところで、名古屋第一法律事務所のことですが、中国大連に他事務所と協力して代表処を構えています。
 大きな目的は、武力による紛争の解決ではなく、司法の力で解決できるよう両国の弁護士が法律実務で協力し合い両国の経済発展と平和の維持に役立とうと協定。理念をもって取り組んでいます。
 国外の人との間でも自主的交流を、相互の法制を尊重しながら進めています。それぞれの自覚に基づく民間外交ですね。
 地道な活動の積み重ねが北東アジア地域の平和と豊かさをつくっていくと思います。

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