【21.10.10】弁護士・久野由詠さん

マイノリティの犠牲の上に 構築されている社会 「わきまえずに」異を唱え続けたい

 前JOC会長の森喜朗氏発言に端を発する「#わきまえない女」ムーブメントから、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)、マジョリティの特権(社会の不公正を感じずに生きられること)といった概念を学んでいる。
 原動力は、自身が差別的扱いを受けたときに当事者として、また他者への差別的言動を目撃したときに「行動する傍観者(Active Bystander)」として、瞬発的かつ適切に反論できるようになりたいという渇望。ただこれは、“(善意悪意を問わない)攻撃”を敏感に察知できる“被害者・マイノリティ側”としての意欲だ。
 他方、自身のマジョリティ性に無頓着だったり、コンプレックスが強すぎたりすると、自分の中の無意識の偏見から、相手を決めつけたり、過剰反応したりしてしまう。先日も、自分の言動が偏見に基づいていたことに気づかされて、大変なショックを受けた。
 学べば学ぶほど、感覚が研ぎ澄まされ、“日本社会で当たり前とされていること”に違和感を覚え、疲弊することが増える。逆に、自分も無意識に誰かを差別している可能性を考えたら、コミュニケーションが怖くなる。
 ただ、アンコンシャスバイアスは、膨大な情報を高速で処理するために備わった脳の防衛反応で、誰もが持っているもの。そして、そうしたバイアスは、社会に存在する歴史的・構造的不平等から自然と備わってしまったものも多い。
 偏見に基づく失敗をしたら真摯に反省して、アップデートできる自分でありたい。
 同時に、マイノリティの犠牲の上に構築されている社会の不公正に対しては、「わきまえずに」異を唱え続けたい。

このページをシェア