【23.05.10】阪井芳貴さん/名古屋市立大学名誉教授・沖縄県美ら島沖縄大使

沖縄「捨て石」への不安――ヤマトゥンチュは真摯に自分事として受け止めるべき

 13年前にインタビュー、3年前に「近ごろ思うこと」に登場しましたので、本紙には3度目となります。私は90年代初めから、ずっと沖縄とヤマトとの間にある溝や壁をどのようにしてなくすかを模索してきましたので、そのことを念頭に、その折々の想いを述べました。それから3年経ち、この3月末に35年間勤めた本務校の教壇を去ることになり、怒涛の研究室引き払い作業を終えて、ようやくホッと一息ついたところです。
 ですが、沖縄をめぐるここ数年の動き、とりわけ岸田政権になってからの沖縄軍事要塞化への前のめり状態は、とてもホッとしていられる状況ではありません・・・。20年前に、すでに沖縄では懸念が示されていましたが、2016年の与那国島への陸上自衛隊駐屯地開設に始まり、宮古島・石垣島に次々に新たな自衛隊基地が建設され、かつそれがいわゆる「反撃能力」たるミサイル基地として整備され始め、あっという間に要塞化が完成しようとしています。辺野古新基地建設と合わせ、この状況は、沖縄の基地負担の軽減どころか明らかな増強であり、これはもう負担どころではない現実味を帯びた危険を県民の日常生活に強いることにほかなりません。
 そのことをほどんどのヤマトゥンチュは知りませんし、知ろうともしません。相変わらず、沖縄に愉しいリゾートアイランドとして自ら発信すること求めるのです。ですが、沖縄県民は決して楽園の住人ではなく、新たな「捨て石」にされることに大きな不安を抱いているのです。このことをヤマトゥンチュは真摯に自分事として受け止めるべきなのです。

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