
6月27日、革新・愛知の会は、2026年拡大世話人会を開催しました。冨田宏治さん(関西学院大学教授)の記念講演「憲法を真ん中にすえた共闘の前進を草の根からー岩盤保守層の跋扈(ばっこ)と高市政権の暴走に抗して」をインタビュー形式にまとめました。 【編集・蛯原京子 写真・近田美保子】
意見の違う人との対話こそ大事!
冨田 宏治さん
関西学院大学教授。専攻は日本政治思想史/全国革新懇代表世話人/原水爆禁止世界大会起草委員長/著書に「維新政治の本質 組織化されたポピュリズムの虚像と実像」「憲法が生きる市民社会へ」など。
ネットの世界に咲いた「徒花」高市政権
高市政権をめぐるネット上の動きは、誹謗中傷動画問題だけではなく、暗号資産をめぐる疑惑や、ネット上の支持・動員の仕組みを含めて事態を捉える必要があります。
高市政権は、現実社会に根を張った政治勢力というよりも、バーチャルなネット空間のなかで生まれ、拡大した「徒花」のような性格を持つのでは、と思います。衆参両院で自公が過半数を失った地点から、短期間で改憲の危機が語られる状況に至った背景を、正確につかむ必要があります。鍵は「岩盤保守層」です。
「岩盤保守層」とは
「岩盤保守層」は安倍元首相が名づけたものです。
実体を厳密に測定することは難しいですが、日本政治を大きく動かす力を持つ層となっています。
「ネトウヨ」「宗教右派」、保守系の議員・秘書・党員、自民党の固い支持層などが重なり合い、伝統的家族観、改憲、男系男子天皇、外国人排斥などの争点で結束しやすい、「砂粒のような人たち」です。普段はバラバラに存在していますが、SNSが凝固剤となり、急速に固まり塊として右へ右へと動きます。
背景には、日本経済の長期低迷、実質賃金の低下、格差と貧困の拡大があります。高い学費、非正規雇用、低賃金に苦しむ10代から30代、就職氷河期で思うような人生を歩めなかった40代・50代など。生活の苦しさを抱える人々が、「自己責任」から解放されたいという思いを持ちつつ、その怒りが社会構造や政治ではなく、外国人、女性、高齢者など「誰かのせい」へと誘導されるところに危険性があります。
自民党は、小泉改革以降、従来の支持基盤であった商店街、町内会、農協などを自ら堀り崩しました。その空白を埋めるように、議員や党員の中にも岩盤保守層の影響が入り込み自民党の思想や体質を変えさせてきました。
高市政権の成立とジレンマ
選挙結果は、高市氏にとっても想定外の雪崩的勝利となりました。
アキレス腱は、裏金問題、統一教会との関係、靖国参拝や歴史認識、排外主義などで、「らしさ」を貫けば、公明党の連立離脱、連合の反発、韓国・中国の反発による国際的孤立を招きます。
一方で、「らしさ」を封印すれば、戻り始めた岩盤保守層への裏切りとなり、支持の急速な離反を招くという板挟みが、高市政権の不安定さでした。
公明党が連立離脱、助け舟を出したのが維新でした。 連立合意は、医療費削減、九条改憲、緊急事態条項、安保3文書改定、長射程ミサイル、スパイ防止法、原発再稼働、副首都構想、議員定数削減など、悪政のオンパレードになりました。
世代間・ジェンダー分断外国人排斥
「岩盤保守層」を動かす大きな要素として、「分断の政治」があげられます。 若者の手取りが増えない原因を高齢者の社会保障費に求め、女性の社会進出を男性の不利益として描くミソジニー、生活苦の原因を外国人に向ける排外主義が、SNS上で増幅されました。 「手取りを増やす」のであれば本来は賃金を上げるべきですが、社会保険料や高齢者への敵意へ誘導することで、若者と高齢者を対立させる政治が行われています。
企業が国際標準に合わせて女性登用を進めるなかで、若い男性やロスジェネ世代の一部が、生活の苦しさや将来不安を女性への敵意にすり替えさせられています。 こうした怒りの向かう先を変えることが、対話の重要な課題です。
高市政権の危うさ 外交、安全保障、物価高
高市政権はその存在そのものが、物価高の要因になっています。
米トランプ政権による軍拡要請、GDP比3.5%への防衛費引上げ要求、財源の手当なしの積極財政などが、円安、債券安を招き、輸入に依存する日本では物価高に直結しています。
安全保障面では、「存立危機事態」発言で台湾海峡有事での集団的自衛権行使を明言、非核三原則の見直し、官邸幹部の核保有発言などにつながりました。
ナフサはプラスチック製品だけでなく、農業用資材や肥料にも影響し、夏から秋にかけて、農業にも大きな打撃が出る可能性があります。
「岩盤保守層」の突撃隊化と現実社会との乖離
ネット上の「岩盤保守層」が「突撃隊」化し、政権や特定の政治家を批判する人に対して、誹謗中傷を浴びせる事態が広がっています。
ここには、バーチャルな「新日本帝国」と、現実の日本社会との乖離があります。
高市氏は、ネット空間では円安を肯定し、軍拡や強い国家を称揚。しかし、現実には物価高、生活苦、産業への打撃、外交的孤立が進んでいます。
その矛盾が顕在化すれば、熱狂は急速に崩れる可能性があります。
私たちは何をすべきか
私たちは、旗を立てる必要があります。
極右、中道、左派の「天下三分」の構図をつくり、左派は曖昧に中道へ寄るのではなく、憲法を真ん中に据えた旗を掲げるべきです。
旗印は、「Vote Left」「 Tax the Rich」「 No War」。
アメリカではDSAなどが大都市で前進し、富裕層に応分の負担を求め、戦争に反対し、左派の旗を明確に掲げる動きが生まれています。日本でも、同様に憲法を中心に据え、暮らしと平和を結びつけた運動が必要です。
ペンライトデモなどで、特に若い女性たちが声を上げる新たなうねりが希望です。この変化をつかみ、広げることが重要です。
対話とシール投票の意味
欧州の経験から見ても、極右を支持する人々を単に排除するのではなく、徹底して対話することが必要です。彼らはしんどさ、生きづらさ、息苦しさを抱え、犯人探しをしています。
まずは、どれほど苦しいのか、何に困っているのかを聞くことから始めるべきです。
そのうえで、「本当に苦しいのは外国人、女性、高齢者のせいなのか」と問いかけ、真の原因がどこにあるのかを共有していくことです。「岩盤保守層」こそ、こちら側の支持層になり得るプールです。
要求アンケートやシール投票は、すでに支持してくれている人とだけ対話するための道具ではありません。 反対側にシールを貼った人、意見の違う人、極右的な言説に引き寄せられている人と対話するためのものです。
