【14.03.10】塚田薫さん―「日本国憲法を口語訳してみたら」を出版

僕たちの憲法を今こそ考えよう!―「日本国憲法を口語訳してみたら」を出版

 
塚田 薫さん

1989年愛知県生まれ。全日制高校を中退後、フリーターを経て名古屋市立中央高校夜間定時制課程を卒業。現在、愛知大学法学部に在籍中。

2ちゃんねるに投稿から出版まで

 大学3年生のときに友人と行った飲み屋で「憲法ってなに?」と聞かれ、憲法ゼミにはいったばかりだったので、何気なく憲法について話したところ友だちの評判が良かったのです。
 そこで口語訳で憲法はこんなことをいっているんだよと2ちゃんねるに投稿しました。2ちゃんねるは比較的よく見られています。予想以上の反応がおこりました。
 ネットでは、たくさんの人が読んで話題になっていたようで、朝日新聞朝刊「論壇時評」(2011・2・7)で作家の高橋源一郎さんが「インターネットで話題の『口語訳日本国憲法』」を取り上げていただき、すぐに本にしないかとのお話がありました。
 特に憲法に深い思い入れがあったというわけではないのですが、人に訴えかけていこうという時に、世間話の感覚で話したほうが受け入れられやすいと思います。護憲、改憲という前に「憲法というものがあるんです」
「憲法を読んだことがありますか」と問いかけ、いろんな人が議論をすればいいと思いました。
 そうしたら「これなら読める」「面白い!」と新聞やラジオ・ネットで反響が大きかったことを知りました。
 出版の話があって、長峯信彦先生に監修をお願いしました。
 この本は、敷居はひくくと思い、分かりやすくしました。
 たとえば、戦争の放棄のところは「第9条 俺たちは筋と話し合いで成り立っている国どうしの平和の状態こそ、大事だと思う。
 だから国として、武器を持って相手をおどしたり、直接なぐったり、殺したりはしないよ。もし外国となにかトラブルが起こったとしても、それを暴力で解決することは、もう永久にしない。戦争放棄だ。第二項 で一項で決めた戦争放棄という目的のために軍隊や戦力を持たないし、交戦権も認めないよ。大事なことだから釘をさしとくよ。」というような調子ですね(笑)

危険な安部改憲

 安倍改憲は、集団的自衛権のように憲法解釈が係る立法案につき、法体系の整合性を保つ役割を担う内閣法制局長官を任意の人物に変更しての立法は、その後に起こりうる司法審査に堪えられない可能性が高く、法秩序の安定という観点から危険だと思います。参院選で自民党が圧勝したのは必ずしも争点が憲法問題ではなくアベノミクスなどの経済政策への期待と、景気の回復により生活の改善を期待する人が多かったようです。
 若者の右傾化ということが言われますが若者が右傾化しているという以前に若者が選挙に投票にいっていません。選挙に行かなくてもまわっていくんだと後ろ向きの「信頼感」があるのではないでしょうか。
 政治と自分たちがどうかかわっているのか、わからない。そこを変えていくことは時間がかかると思います。
 小泉政権下での労働や産業に関する規制の緩和については、単純な失敗というよりも当時の景気が上向きになるという期待があった背景からしては一つの選択肢としては十分にアリだった(郵政選挙での圧倒的な議席獲得も国民の多くがその予測に共感していたと言えます)のですが、その読みが外れたことが問題と思っています。またこれも国民の「改革」への期待の空回りした一例かもしれません。40%の若者が非正規雇用、構造改革で規制が取っ払われた。そういう国づくりが失敗したのではないでしょうか。
 選挙に若者が行かない、社会にコミットしない態度の根本にあるものは1989年以降の20~30年間で社会の構造が変わった。国政選挙でも票の分散や、投票率の低下などからしても、政治自体の求心力が失われたことを現しているのではないでしょか。

いろいろな出会いが

 ぼくは中学校もろくに行かなかったし、高校も中退しています。その後、定時制にはいり直して24歳で大学生、かなり遠回りをしてきました。でも、ものごとは最短距離ですむことばかりではないと思います。
 いろいろな出会いもありました。憲法も「過去幾多の試練を堪え」とあります。
 議論は、大事、でも勝ち負けではないと思うのです。「こうしていきましょう」とつながりあっていくことではないでしょうか。そのためにも、僕たちのやるべきことは多いと思います。
 いまは、定時制で学ぶ人たちの力になりたいと定時制の教師をめざそうかなと考えています。

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