【15.12.21】TPP大筋合意――予め排除される民主主義 岩月浩二(弁護士)

 TPPの正文は英語と、スペイン語、フランス語である。TPP参加国の大多数は英語圏の国であり、これにスペイン語を加えると大半の国では、参加国の国民は母国語で条文を読むことができる。
 日本は、交渉参加国中、第2位の経済規模の国であり、日本抜きではTPP構想自体が成立しない決定的に重要な参加国である。にもかかわらずTPPの正文には日本語は採用されていない。
 TPPは6000頁に及ぶ膨大な条文からなり、今後の国内法制や国内行政のあり方に決定的な影響を与える。条約は法律に優位するから、TPPは、軍事分野を除く国内の政治分野の全てに関係する根本法となる。
 政府は、わずか97頁の日本語版「概要」を示しただけである。そこには政府に都合のよいことしか書かれてはいない。野党議員が日本語訳を要求しても、政府は、TPPが署名されるまでは日本語の翻訳を示すつもりはないとしている。
 TPPは秘密交渉だと批判されてきたが、今は、一応、世界的にはその条文は明らかになっている。
 日本国民だけが排除されていると言ってもよい。
驚くべきことに日本語がTPPの正文とされなかったのは、米国政府が拒んだためではない。日本政府が求めなかったからだ。日本語を正文とすると、国内の批判が強くなることを想定し、ひたすら秘密裏にTPPを成立させたいからに他ならない。
英語の読めない国民は、日本国の主権者たりえない。
 この国は、英語独裁の国家になりつつある。

*岩月浩二さんは、2013年10月号インタビューに登場され、「TPP 日本の主権を外国企業に売り渡すISD条項ー許されない憲法破壊の道」と語っていただきました。

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