【17.08.04】澤田昭二さん―人類史の転機となる核兵器禁止条約実現!!

名古屋大学名誉教授、原水爆禁止日本協議会代表理事、革新・愛知の会代表世話人でもある澤田昭二さんに歴史的な核兵器禁止条約実現についての思いなどを綴っていただきました。

 
澤田昭二さん
名古屋大学名誉教授
原水爆禁止日本協議会代表理事
原水爆禁止世界大会実行委員会議長団

核兵器禁止条約発効に
 去る7月7日核兵器禁止条約が国連の会議において国連加盟国の3分の2に近い122ヶ国の賛成で採択されました。そして9月20日から批准が始まり、50ヶ国が批准した90日後に核兵器禁止条約が発効します。

科学者として被爆者として 
 1945年8月6日、私が中学2年生のとき原爆で同じ部屋にいた母を失いました。
 1954年3月のビキニ実験で広島原爆の千倍の爆発威力の水素爆弾が出現したことで、専門にしようとしていた物理学が人類絶滅の道具をつくり出したことに衝撃を受け、原水爆禁止広島学生協議会を発足させました。
 それ以来、学生として科学者として、そして被爆者として原水爆禁止運動をしてきた者として、核兵器禁止条約の制定によって核兵器のない世界への具体的一歩が始まり、物理学が人類絶滅に繋がらない世界に向かうことになったと感激しています。

条約の前文に「ヒバクシャ」非人道性が盛り込まれる
 この条約には被爆者を含む核兵器廃絶市民運動を受けとめ、原爆や核兵器実験の被害を受けた人たちをヒバクシャとして条約の前文に記したことは画期的です。とりわけ、今回の条約ができたのは核兵器使用がもたらす非人道性についての国際会議が開かれ、条約に非人道性が盛込まれたことです。
 この禁止条約は核独占を狙って核兵器国が制定した核不拡散条約(NPT)と国際原子力機関(IAEA)のつくり出した体制を核兵器のない世界でもそのまま活用するので、核兵器国も「核の傘」依存国も加盟しやすく、条約文も大幅に縮小されています。
 この条約で大事なことは、1945年6月に作成された国連憲章は国際紛争では平和的な話合いなどによる解決を原則とし、武力の使用や武力による威嚇をしない原則を打ち立てましたが、その裏で原爆が作られ、核兵器の威力を見せつけて、力を付けてきたソビエト連邦(ソ連)をアメリカに従属させる目的で広島と長崎に原爆を投下しました。
 ソ連のスターリンは対抗して覇権主義の立場から核兵器の開発を始めました。そのため第2次大戦後は国連憲章に違反する核脅迫政策の時代になってしまい、ソ連崩壊後も続きました。
 今度作成された核兵器禁止条約では「核兵器を使うぞと威嚇する」ことが国際規範として禁じられますので、核脅迫政策の下で「核兵器が安全保障に必要」とする核兵器国の主張はできなくなります。
 北朝鮮問題は核脅迫政策によってつくられてきたので核兵器禁止条約によって解決します。

市民運動が国連や世界の歴史をつくる時代に
 被爆者を含む市民運動の代表が各国代表と同じ禁止条約の会場に入って対等に発言したことも画期的です。そうした被爆者や市民の役割も条約の内容に反映されました。 今回の会議で、大国中心の国連の体制から世界の中小の国と市民運動の役割が国連や世界の歴史を作っていく時代に入ったことを示しています。「ヒバクシャ国際署名」を推進して核兵器国も条約に加盟させる取組みが一層重要になってきます。

核兵器禁止条約に加盟する政府の実現を
 こうした中で日本の安倍政権は核兵器国と非核兵器国の「橋渡し役」をすると言ってきたことが全くの嘘で、結局は米国と安保条約を結んで「核密約」による「核の傘」にしがみつく立場が明らかになったことです。直ちに核兵器禁止条約に加盟する政府を実現し、核兵器国に条約加盟を働きかける政府をつくりましょう。
 核兵器禁止条約に核兵器国や「核の傘」国が加盟して核兵器のない世界が実現すれば国連憲章の国際紛争において武力の行使や行使の脅迫をすることをしない原則が守られ、人類社会は国連憲章の武力不行使をさらにすすめて武力を使う軍隊を持たないとした日本国憲法第9条が世界に広がることになり、科学や技術や医療の発展と福祉が世界中に広がっていく素晴らしい社会になる新しい人類史の時代が始まるでしょう。

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