国は正規雇用の抜本的対策を 手をつないで社会に立ち向かっていこう!
野宿を強いられる人たちへの自立支援をされている竹谷基さんを、名古屋市東区にある「福信館炊き出しの会」にたずね、野宿者支援にかかわっての思いをお聞きしました。
竹谷 基さん プロフィール
NPO法人ささしま共生会理事長。
1954年名古屋市生まれ。
カトリック名古屋教区東海教会主任司祭
厳しい寒さ――安定した仕事と住宅が必要
1975年12月、名古屋駅周辺で野宿者が11人、凍死した事件がありました。このことに心を痛めた人たちが集まり野宿者の支援をはじめました。私は、南山大学のカトリック神学院で神学の勉強をしていましたが、1981年夏ぐらいから、野宿者(以下、ホームレス)の支援に関わるようになりました。
90年代後半バブル崩壊後、ホームレスの方がどんどん増えて、多いときは、2カ所の炊き出しに600人が集まりました。
最初はおにぎりなどの炊き出しをしていましたが、「飯はいらない。まず仕事をくれ」といわれたと報告がありました。結局炊き出しは緊急避難的なことで、それ以上のことは出来ません。炊き出しだけでは、ホームレス問題はなくならならない。野宿しながら仕事には行けません。
安定した仕事と住宅が必要です。
NPOを立ち上げて
2001年に、仕事と住居を確保していこうと、NPOを立ち上げて活動しています。
アパートを一軒借りまして自立を希望している人、高齢者、病弱な人など優先して入ってもらい、生活保護がとれるよう支援しています。現住所がなくても、生活保護を受けることは出来ますが、名古屋市は生活保護を取るためには、現住所が必要だといって、受給を抑制しています。
2003年に「ホームレス自立支援法」ができましたが、名古屋市は、名城、白川に一時宿泊施設(シェルター)、熱田と笹島に自立支援センターをつくりました。名古屋市はシェルターや自立支援センターを通過した人の数だけ見てホームレスは減っているといいます。しかし、自立し自分の人生を生きていくための支援にはなっていません。 生活保護を受けても、その後どういう生活をしていくのか一人一人の思いを実現させるお手伝いもなかなか難しいのが実情です。
名古屋市の自立支援は愛知万博開催前に公園などの小屋の撤去が目的でしたので、その後は戻る所がなく、天白川や庄内川の河川敷で生活されている方が増えています。この冬の厳しい寒さで、本当に大変です。生活保護基準以下の生活をしている人がたくさんいます。国は、生活保護基準をへらせといっていますが、逆です。生活保護基準をもっと引き上げる必要があります。
「自立支援」とは聞こえがいいですが、「家も自分で探しなさい」「仕事も自分でさがしなさい」ということです。自分の持てる能力を活かすためのゆとりなどありません。とりあえず、今日の食事代をかせぐ生活では「飼い殺し」同然です。
国は正規雇用の対策を
いまのホームレス問題は、「日雇い」労働者を、使い捨てにしてきた結果です。いま、非正規雇用をどんどん増やそうとしています。「日雇い」や非正規雇用があたりまえの働かせ方では、ホームレス問題は解決しません。
ホームレスはなまけ者だ、自業自得だという考えの方は多いですね。職がないのは、「自分の責任、自分が悪い」と思っている人もいます。本当にそうでしょうか。そうではなく、国は正規雇用の対策をしっかりすべきです。
多くの人と手をつなぎ
「戦争のために学校へ行けなかった」「勉強できなかった」「家が貧しかったから」というホームレスの方がいます。その人たちが、戦争がなければまた別の違った人生があったと思います。戦争は、失業や野宿の人たちを生みます。
高度経済成長時には、就職先はたくさんあったと思うのですが、いまは非正規しかないですね。今、突然、失業やリストラ、倒産にあっても不思議ではない時代です。ひょっとすれば、何かのきっかけでだれでもホームレスになり得ることもあるのです。個人の「努力が足りない」という問題ではありません。
新しい貧困層がどんどん増えていっています。「ネットカフェ難民」などいろんな形の貧困がどんどん出てきています。多くの人と手をつないで、社会に立ち向かっていかないといけないですね。
倒れるまで働かせられて、充分な保障もない。本当に日本はおかしいです。今のうちに手を打たないといけないです。
若者を戦争に行かせてはならない
軍事費や余分な道路などにお金をかけるようなことは止めないといけません。クラスター爆弾は一発で何百万円だそうです。いかに沢山の人を殺すかという爆弾です。そんなものを持つ必要はないですね。
日本はまた戦争をしようとしていますからね。
憲法9条は守らないといけません。仕事のない若い人を戦争にいかせようということにもつながっていきます。イラク戦争を続けているアメリカのようになってしまいます。
そんなことに絶対にさせてはならないと思いますね。