【11.12.23】派遣切り裁判画期的判決 派遣先の三菱電機の責任認める!

大企業、三菱電気の「派遣切り」を告発し、「三菱電機派遣切り訴訟」をたたかい、派遣先である三菱電機の責任を認めさせる画期的な判決を勝ち取りました。その原告のTさんと弁護団の裵明玉弁護士にお話を伺いました。

対談者は三菱派遣切り裁判原告のひとりTさん(41歳)と弁護団の裵明玉弁護士です。

早期退職通知を受けて

(Tさん)退職通告を受け、路頭に迷っていたとき、三菱の門前で「派遣切り許さない」とチラシを受け取りました。いろいろ悩み、1箇月たって名古屋北青年ユニオンに相談をしました。そこで、はじめて三菱電機は違法行為を知りました。

(裵弁護士)Tさんへの早期通知が2008年12月19日、裁判は2009年3月9日に提訴したのですが、当時はリーマンショック後、全国的に派遣切りが次々と始まっていた時期でした。特に、派遣先に仕事があるときだけ働くことのできる登録型派遣は、労働者の生活と、ときには命さえ脅かす働かせ方であることが明らかになったのです。

(Tさん)三菱から人間ではなく、物のように扱われました。担当者に早期退職だと言われて、今度は自分の番だとうなずくしかありませんでした。娘に「お母さん仕事なくなっちゃった」といったときに、電話の向こうで、泣き出しました。「大丈夫、直ぐ見つかる」といった反面、とても苦しかったですね。
母と娘二人の生活ですから、仕事がなくなるということは収入が途絶える。二年後には娘は進学を控え、この先、収入がなくなり、生活が出来なくなる恐怖、不安で親子心中も考えました。14才の娘の人生を親の都合で奪ってはいけないと思いとどまることが出来ました。
会社の間違っていることを正したい。同じように解雇された人がたくさんいたので、その分まで頑張ろうと思いました。
普通の生活ができなくなったことは辛かったです。
提訴する前に手持ちが600円くらいになったこともあります。

同じ派遣の人たちのためにも頑張ろうと

(Tさん)三菱で長年、仕事に自信と誇りを持って、正社員同様に働いてきたのに、裏切られたという気持ちが強く、辛かったです。事実は、ひとつだけなのに。私たちがいなかったら事実を闇に葬られていたと思います。やらなきゃあいけない、同じ派遣の人たちのためにもたたかおうと思いました。
支えになったのは、娘、そして支援してくれた人と弁護士の方々です。
娘は、尋問の時に、お守り代わりにと腕輪を貸してくれました。勝訴判決を一番最初に伝えたかったのも娘です。すぐメールすると「おめでとうー!おめでとうー!やったー!嬉しい!」とメールが入ってきました。

派遣先三菱の不法行為を認める画期的内容

(裵弁護士)派遣先である三菱には、雇用契約の形式的なものはありませんが、製造業派遣が禁止されていた2002年から、偽装請負、違法派遣と様々な違法行為を行いながら、Tさんを正社員同様に働かせていたのだから、雇用責任を負うべきである、正社員といて処遇せよと求めました。また、リーマンショックで破産がはじまると、年末の就職活動が困難な時期に、何ら補償もせず、すぐさま派遣元との派遣契約を中途解約し、派遣元にTさんらを解雇させたことについて、派遣元との共同の不法行為であるとして、慰謝料を求めました。
 結果、長期間にわたる偽装請負の実態を明らかにすることができ、派遣先の三菱の不法行為責任が認められ、三菱への慰謝料支払い命令が出されました。
 派遣切り裁判で、形式上の雇用主ではない派遣先の責任を認めた判決はほとんどない中、画期的な内容です。三菱による派遣切りは、派遣労働者の「勤労生活を著しく脅かすような著しく信義にもとる行為」であるとして、信義則違反であるとみとめたのです。
 裁判所は、特に、三菱が、正社員でなければあり得なかった形態で長年派遣労働者を働かせておきながら、生産の都合のみで、派遣労働者の就業機会確保に向けた配慮をまったくしないまま突然派遣契約を中途解約したことについて「身勝手ににも甚だしいものがある」「無節操」と大変厳しい文言で謝罪しています。

勝利の要因

(裵弁護士)原告の皆さんの尋問で非常にいい加減な解雇で、派遣切りで失ったものがどれだけ大きいいか、一番大切な命、家族を犠牲にせざるを得ないという重みが裁判所に伝わったと思います。傍聴、要請行動などで、この裁判を支えてくださった「三菱派遣切り裁判を勝たせる会」の粘り強い支援も勝訴につながりました。

(Tさん)判決が出たときは、よくわかりませんでした。終わったあとに「勝ったよ」といわれて、でも実感湧きませんでした。裁判所が、三菱のやったことはひどいということをみとめてくれ、事実が明らかになったことは嬉しかったです。
まだ、ゴールじゃないですから。これから、です。

(裵弁護士)原告たちは、地裁で認められなかった正社員化を求め、高裁に控訴しました。三菱もこの判決を不服として提訴してきました。
 非正規雇用が広がり労働者がつながりが持ちにくく分断されている中でのたたかいは、原告の皆さんにとって苦労の連続だったと思います。
 製造業派遣の禁止などが削除された骨抜きの派遣改正案が問題になていますが、自分のことだけでなく、新しく仲間をつくって頑張ろうという人たちがいるから、必ず、制度は変わっていくと思います。弁護団も労働者派遣法の抜本的改正への流れを切り開く裁判にするため、原告の皆さんとともに引き続き努力していきます。

(Tさん)たたかってよかったと思うことは、いろんな人に巡り合えたことです。この争議がなかったら、いろんな人とつながり会えなかった。人間が行ったこと、行おうとしたことは防ぐことができます。私たちのような非正規労働者が物のように扱われない社会、安心して働ける社会をつくっていかないといけないですね。

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