これからの社会を構築するのは中小企業
地域循環型の社会をと取り組んでおられる愛知県中小企業家同友会前会長の山本栄男さん。ご自宅を訪ね、森林を生かした自然の再生などの取り組みや、連帯し助け合っていく社会の実現をとの熱いお話を伺いました。
(聞き手 岩中美保子 写真 山本晃子)
山本 栄男さん
1943年生岐阜県生まれ。豊明市在住。愛知中小企業家同友会・顧問、前会長。株式会社サカエ代表取締役。自然エネルギー、地域循環型社会構築のためにヨーロッパ等を視察し、取り組んでいる。
モノづくりの原点は中小企業
愛知中小企業家同友会は1962年に34名の経営者で創立され、いまや3200名の会員になってきています。良い経営者、良い会社をつくろう、良い経営環境を作ろうと3つの大きな目的をめざし、自主、民主、連帯を合い言葉に取り組んでいます。
日本の経営環境を考えると、大手企業が安い労働力を求め、海外に進出していますが、これで日本の景気が良くなるのか。430万社といわれる中小企業は仕事がこない状況に置かれています。
モノづくりの原点は中小企業です。ヨーロッパの小企業憲章は、第一条「小企業は経済の背骨である」、第二条「小企業は、雇用の源泉であり、ビシネス、アイデアを育む大地である」、第三条「小企業政策を政策の要に据えたときに新しい経済のおとずれがあるだろう」と非常に崇高な言葉で謳われています。それはヨーロッパだけでなく、日本でも同じことです。
地域と共に地域循環型社会をめざして
環境問題もふくめて、地域のなかで循環する経済のしくみをつくり、循環型社会をめざすことです。地域を活性化させていかなければ本当の意味で景気はよくなりません。
自立型企業をめざし、地域と共にやっていくことが私たちに課せられた一番大きな課題です。
地域のお役に立つことを一生懸命考えてやっていこう、ということではないかと思います。
「海は山の恋人」
山は「宝の山」です。愛知県は、東栄、新城、設楽、豊根など山林が25万ヘクタールくらいありますが、どこも疲弊しています。地球全体で見れば、毎年、九州と山口県を足したような自然林の面積が消滅しています。日本の国土は68%が山ですが、未来の人たちの為に自然豊かな地域を残していくことが重要です。
気仙沼の牡蠣養殖業の畠山さんが「海は山の恋人」とおっしゃっています。40年前から牡蠣が採れなくなって外洋に出ざるをえなかった。そこで、山に木を植えたら、海の動物性プランクトンが増え、小さな小魚がふえ、それを餌にする牡蠣などがふえた。その後3・11震災の被害を受けましたが、立ち上がって取り組んでおられます。
森林を起こすことによって、海が活性化する。この方向で行けば、日本はもっと豊かになりますよ。実際にドイツのフライブルグは、森の木をチップにして地域暖房をしている、インフラを整備して、仕事おこしが起きているのです。
自然エネルギーの方向を
「安全、安全」と言われてきた原子力発電、あのような悲惨な状態をつくりました。一番の原因は、地震です。日本は地震国ですから、しょうがないというわけにはいかないですね。人間の力で簡単に防ぐことができるような甘いものではないです。ですから、原子力発電に頼らず自然エネルギーの方向をめざしていったらいいと思います。
太陽光が地球に降り注ぐエネルギー計算のデータ(1995年)をみると自然エネルギーだけで十分まかなえるのです。
3月11日の大震災をへて、日本人のものの見方、考え方が深く変わろうとしている。「ふるさとを捨て、ふるさとから遠ざかることを代償にしなければならなかった富や反映が、本当に我々に幸をもたらしてきただろうか」と・・・・。
今の社会は、心の満足がない。経済効果だけを追い続け、日本の社会が金儲けだけに走ってしまってきた、世の中が何を犠牲にして成り立ったっているのかを考えていかないといけない。その時が、今ではないかと言いたいです。
どういう日本をめざすのか。そのための税は・・・
どういう社会を目指すのかということを考えていかないといけません。
デンマークの時間給は、日本に換算すると一万円です。なおかつ、外国人労働者にも同一賃金を守っています。消費税は、20~25%、税金は43%です。子ども手当の支給、会社を首になったときには、賃金を90%二年間保証しています。教育は無償、医療費は無料、貯金する必要がない。
セイフティネットが整っている社会っていいじゃないですか。
消費税を上げる、上げないという議論の前に、そういう社会を日本も目指していくとしたなら税金は、どういうようにしたらいいのか、どういう税金の集め方をするのかを問うことが必要ではないでしょうか。
疲弊したものを良くしていかないと意味がない。中小企業でも半数の方々が借金付けになっている。どうしたらいいのか。ヨーロッパの実情を紹介することが大事だと思います。「デンマークは、時給一万円」ということを知ってもらって意識改革をやることです。
家庭でも、地域でも、気遣い合いながら、言葉をかけ合って、連帯をつくって、助け合っていく、そういう社会っていいですよね。
そういうところへというのが私の原点です。