弁護士が憲法を語らずして誰が語るのか!ー弁護士の使命として
「人権を守ることは、弁護士の使命」今年、憲法問題を真正面にと取り組んでおられる愛知県弁護士会会長の纐纈和義さんを弁護士会館におたずねして、お話をうかがいました。
同弁護士会副会長村上満宏県弁護士も同席されました。(聞き手・岩中美保子 撮影・加藤平雄)
纐纈 和義 さん
1948年12月、岐阜県多治見市生まれ。愛知県弁護士会会長。日本弁護士連合会副会長。日弁連死刑廃止検討委員会。
断固とした運動を
弁護士会新年のあいさつで、「私たち弁護士が憲法を語らずして誰が語るのか」と憲法問題で断固とした運動をと申し上げたのは、昨年の総選挙の結果、新政権ができましたが、このことに大きくかかわっています。
色々な考え方の弁護士はおりますので新年の挨拶にとりあげるのがいいのかどうか迷いました。
しかし、やはり弁護士会が真正面に受けて取り組むべき課題だと思い発言しました。
自民党の新憲法草案は、明らかに基本的人権を制限する方向での憲法「改正」です。
弁護士の使命は、基本的人権の擁護と社会正義の実現にあります。現憲法が謳っている基本的人権は尊重しなければならないかけがえのない財産です。
この認識は日弁連でも、愛知県弁護士会でも公式見解といってもいいと思います。私個人も腹の底からそう思っています。
国民の基本的人権、民主主義、平和主義をおざなりにすることは許されないと言わなければなりません。
「国防軍」を持つということは
徴兵制については書いてありませんが、「国防軍」を持つということは、必然的にやがてはそうなるでしょうね。前線に出て戦っている人がいるときに、批判的な発言は許されないことになると思います。
そうすると必ず言論の自由、表現の自由は制約せざるを得なくなります。戦前を見て分かるように、これはある意味、戦う国家の必然だと思います。そんなことを許してたまるかと私は思っています。こういうものを読むときは、想像力といいましょうか何を予測しなければいけないのかという視点が必要です。
政治状況から見ると、本当に危うい状況だとおもいますね。
私はもともと小選挙区制反対でした。小選挙区制度は、少数意見が反映されない仕組みで結果は目に見えていました。少数政党、少数の意見が反映されない政治体制の危うさが今回の総選挙でこういう形になって、あらわれました。
政府は、いま、国家安全保障基本法案そして秘密保全法案を考えています。これは憲法よりも下位の法律です。本来あってはならないのですが、下位の法律で、憲法の内容を変えていくことになります。 例えば、国家安全保障法案は、集団的自衛権を認めるという内容になる可能性が強いといわれています。秘密保全法はまさに、戦前のような形になると言われています。国家安全基本法案は内閣法制局を通しますと、基本的に、憲法違反かどうかを議論されますので、議員立法でやろうとしています。しかも、衆議院の議席は8割以上が改憲賛成になっていますから、ここが一番の危機であろうと思います。
世論を広げる様々な取り組みを
さっそく1月18日に愛知県弁護士会会員向けに憲法学習会を開催し、憲法問題の基本的問題は何かということを議論していただきました。
5月12日に孫崎さんを招き、中区役所ホールで憲法記念行事を行うなど憲法委員会を中心に世論をひろげようと様々な取り組みも考えています。
国民の権利を守るという立場から、憲法問題を正面からあつかうことは弁護士の使命の一つです。単なる政治問題ではありません。
むしろ、私たち弁護士がまっさきに物を言わなければならない。憲法という法律の最上位概念にかかわる問題ですから、ここで、遠慮をしてはいかんと思います。
弁護士自治権を守る
国家に対して税務訴訟、あるいは地方自治体や国に対して損害賠償請求、憲法「改正」の反対運動をやるというときに、躊躇することがあってはなりません。そのために弁護士に自治が認められています。国民の基本的人権を擁護するという観点から見ても弁護士自治は守らなければなりません。
死刑廃止について
また、私は、市民のみなさんに、死刑廃止のご支持を得たいと思います。
死刑制度は、世界の先進国の中でもアメリカと日本だけです。アメリカでも州の半分は廃止です。ヨーロッパは死刑廃止です。
冤罪などの問題もありますが、基本的人権を考えるとき、最大限に尊重されなければならないのは命です。 無理やり、国家が命を奪うのが死刑ではないかと思います。
たしかに被害者の心中察するにあまりあるということはありますが、これは訴えていかないといけないと思っています。弁護士のなかでも意見は拮抗しています。
県弁護士会会長の任期は3月までですが、憲法問題は、次に引き継ぐ形でやって行きたいと思います。
私たち弁護士は、使命にもとづき、法律について一生懸命勉強し、日々、研鑽をしている集団です。
どんどん、ご利用頂きたい。地下鉄の広告なども活用して広報していますが、こんなことを弁護士に頼んでいいのか、というようなこともあってためらっておられる人も多い。
そういうためらいもぜひ、取り払っていただきたいと思います。