【18.05.10】松田正久さん(愛知教育大学名誉教授・前学長)

改憲許さない正念場・3000万署名で!―科学者として何をすべきか

 
松田 正久さん

1948年島根県生まれ 愛知教育大学名誉教授・前学長、名古屋大学卒・広島大学大学院修了、理学博士、専門は物理学(素粒子理論)。日本物理学会・日本平和学会等の会員。あいち9条の会代表。

世の中わからないことがいっぱい

 私は大学で物理学を勉強しました。世の中にはわからないことがいっぱいあり、それを探求するという憧れみたいなものがありました。山の中に育ったので人と付き合うのが苦手でしたから、基礎科学をやっていればあまり人と関わらなくてもいいじゃないかと思ったんですね。今は勿論違いますけど(笑) 

3000万署名呼びかけ人に

 益川敏英さんは、全国の呼びかけ人であり、愛知では一緒に呼びかけ人になっています。益川さんは大学の時のゼミの先生でした。湯川秀樹、朝永振一郎博士とともに日本の素粒子物理学をリードした坂田昌一博士に憧れて大学に入学し、広島で小川修三先生(名大平和憲章起草委員長、元理学部長)について素粒子論を学びました。
 2011年の東日本大震災後から今も月1回、名大の益川さんの研究室でOBが集まって討論しています。科学にまつわる諸課題(原発や核兵器、軍学共同など)、憲法を含む国内外の社会問題などを県外のOBもスカイプで参加し学びあっています。「科学者は科学者として学問を愛するより以前に、まず人間として、人類を愛さねばならない」という坂田先生の言葉に共感する(元)物理屋の集まりです。
 坂田先生の言葉にもあるように、科学者の社会的責任ということはいつも心にあります。核兵器も原発も、その原理は物理学です。核兵器は、今も1万5千発もこの地球にあるのです。科学者として一人間としてなにをすればいいのかと、ずっと考え続けています。昨年、核兵器廃絶条約が国連で成立し、発効に向けた動きが強まっていることに期待をしています。

安倍首相の倫理矛盾

今の国のあり方は率直にいって憲法がありながら憲法を法を守ろうとしていない、と言えます。その矛盾について考えざるを得ないし、どうしていくのかを若い人たちを含め一人一人が考えなくては、と思います。
 安倍首相の思考には論理矛盾があります。自然科学を学んだ人はこのロジックは正しいのかと常に考えるわけです。間違っているとすれば間違っていると言わないといけません。 秘密保護法、共謀罪、安保法制が強行され、戦争への道を突き進み、憲法が壊されるという危機感を持っています。
 憲法をはなから全く守らないで、壊そうとする。「地方創生」「一億総活躍」「女性活躍」「人づくり」「働き方」すべてが論理矛盾のワン・ワードで、その最たるものが九条に自衛隊を書きこむ九条改憲です。 この状況になんとかしないといけないとの思いです。3000万署名で安倍政権を追い込むことが大事です。

常になぜと考える力を

 私たちは、国の最高法規である憲法のもとで生きているわけです。一番大事な憲法、立憲主義について特に若い人に考えてほしい。関心をもってもらうにはどうしたらいいのか。
 『茶色の朝』(フランク・パヴロフ)をご存じでしょう。危ないと思った時にはすでに遅いことにどうしたら気づいてもらえるのか。 今危ないのは君たち若い人たちの未来だということを伝えたいのです。
 どんどんごまかして、超えてはならないものを超えて改憲したら、どうなるのか。物事に矛盾を感じ、どうしてだろう、なぜなろうと疑問をもたないといけないと思います。
 教育は何も知識を詰め込むためにあるのではないです。個人が個人として自立できる、自分の意見をもちそれを対等に言い合えるような自由で平等な民主主義社会をつくることです。個人の尊厳の確立、そのために教育があるわけです。 「教えるとは希望を語ること 学ぶとは誠実を胸に刻むこと」というフランスの詩人ルイ・アラゴンが一節を残しています。ヒトラー占領下で、大学の復権を願って創りました。
 権力者がおごり高ぶる社会、格差が拡大する社会は異常な社会です。

日本のやるべきこと

4月の日米首脳会談で安倍首相はトランプ大統領に米朝会談で「拉致問題」を取り上げてもらい見返りにアメリカの武器を買いますって、一方では北朝鮮への恐怖心を煽り立てています。 米国頼みの外交では日本の存在感は薄れるばかりで、独自の政策をなぜ訴えないのか、仏のマクロン首相とは対照的な感じがしました。
 日本がやるべきことは核兵器廃絶条約への署名・批准を世界の先頭に立ってすすめましょうということではないですか。日本は核兵器禁止条約を批准し、世界をリードしていく、そういう国になってほしいです。 南北朝鮮で非核化と平和に向けた対話が進んでいるときに日本は圧力一辺倒です。日本の国の首相としてはずかしい。朝鮮戦争終戦宣言ができれば新しい時代の幕開けです。東アジアにおける平和構築をして非核地帯をつくる、その方向にすすめましょう。

改憲を阻止するために

日本の軍学共同研究の進展も深刻です。
 防衛省は、大学や研究機関を軍事研究に取り込む「軍学共同」の動きを強めていますが、日本学術会議は、学問研究は平和のために、と軍学共同研究に反対する声明をだしました。それに対応する大学が大半ですが、そうでない大学もあります。どうその動きを封じるのかも我々研究者がどう関わっていくのか、責任でもあります。
 私も自分のできるところでやっていかなければと思います。
 改憲を許すか許さないか、われわれは正念場にいます。分岐点にいると思います。
 安倍改憲NO!3000万署名の力で改憲発議を止めるために頑張りたいですね。

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