狙われているのは9条だけではない
藤田 早苗さん
大阪府出身、英国エセックス大学人権センターフェロー 。名古屋大学大学院国際開発研究科修了。英国エセックス大学にて国際人権法学修士号、法学博士号取得。
*日本の表現の自由に関する国際活動の支援、資金協力を
☆郵便振替 口座番号
00870-7-216543
〇八九(ゼロハチキュウ)店
当座:0216543
加入者名:日本の表現の自由を伝える会
国際世論を高めるために
秘密保護法が2013年12月に強行採択されましたが、愛知をはじめ全国各地で秘密保護法に反対する会がつくられました。私は、イギリスに在住していますが、秘密保護法はひどい、こんなに日本がひどい国だとショックをうけました。
情報が隠されるということは人権、自由が制約されることです。
法案を英訳して国連へ伝え、その結果国連特別報告者は日本政府にたいして公式声明を発表しました。
2016年4月の国連特別報告者デビット・ケイ氏の日本調査訪問に尽力、2017年5月プライバシー権利の特別報告者ジョセフ・カナタチ氏に英訳の共謀罪法案の情報を提供などしてきています。私は国際レベルで専門家とのネットワークを広げ、国際世論を高める大切さを実感し、活動をすすめています。
政府には人権守る義務が
世界人権宣言は1948年12月に、国連総会で「すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準」として採択されました。この世界人権宣言に基づいて細かく規定しているのが人権条約です。第二次世界大戦での人権侵害の痛苦の経験からこれを反省し、基本的人権尊重の原則を定めたものです。
日本は人権を「おもいやり」と混同していますが、人権イコールおもいやりではありません。おもいやり、優しさは人からもらうものです。人権とは、すべての人が生まれながらにもっているものです。生まれてきた人間すべてに対して、その能力が発揮できるように政府はそれを助ける義務がある、その助けを要求する権利が人権です。日本政府にその義務があるということを知っている人は残念ですが、少ないです。
「人権ってなんだろう」(アジア太平洋人権情報センター)は要点をわかりやすくまとめています。子どもたちも読んでほしいです。道徳教育が必須になりましたがこのなかには「人権」が一社の教科書をのぞいて一切書かれていません。
若い人と繋がって
日本での教育活動にも力をいれています。講演会に呼ばれるのですが、同じ顔ぶれで年配の方が多い。学生の参加者はほぼゼロです。講演会にはこない。ずっとたたかってきた人たち、この人たちが動けなくなったらいったいどうするのか、というものすごい不安をかかえました。
講演会に来ないなら学生のいるところに乗り込んでいけばいい、と関心を持ってくれる先生を通じて大学の講義を行っています。この冬は12月の1か月で12大学で17コマの授業で話し、2000人以上の学生が講義を聴いてくれました。これを毎年2回行っています。小さなゼミから300人ぐらいまでさまざまですが、ありがたいことに寝ている学生はほとんどいません。
準強姦罪で訴えている伊藤詩織さんのことを話すと非常に衝撃をうけています。毎回多くの学生が衝撃をうけ「気づき」のきっかけとなっています。学生たちがそうした意識をどこまで維持できるかわからないですが、全く知らないで社会に出るよりはいいと思います。
授業のあとすぐに帰らないようにしています。授業中に質問をする学生はなかなかいませんが、終わってからもっと知りたいと来ます。そういう学生は関心を持っているのは自分だけだと思っていて孤独なんです。「Dr藤田をHubとして繋がろうの会」を立ち上げ、学生たちをつなげることを去年から始めました。大学の枠を超えて同じような意識を持っている学生同士が繋がり本当に生き生きとしているんです。今日も講演会のまえに8人が来てくれます。仲間がいるということを感じてくれたらと思います。
狙われているのは9条だけではない
現行憲法36条には「拷問及び残虐な刑の禁止」のなかで「絶対にこれを禁ずる」となっていますが、自民党の草案は「絶対に」が削除され「拷問禁止条約」に違反します。また、自民党草案では97条(基本的人権は侵すことのできない永久の権利)は削除されています。
9条だけではありません。 緊急事態条項の追加は、安倍政権の本丸であると思います。秘密保護法、共謀罪が強行され、緊急事態条項があればなんでも出来てしまいます。その危機感が知られていない。「ワイマール憲法の教訓 なぜ独裁がうまれたのか」報道特集ステーション(2016年3月放送)を見てください。この番組はギャラクシー賞を受賞しましたが、YouTubeで検索すれば今でも見ることが出来ます。
勉強したいと
ラーメンを食べたい人にカレーを押し付けてもダメ。デモは怖いと思っている若い世代に「デモは怖くないよ、来てみたらいいよ」というだけでは溝は埋まりません。「どういうものなら参加したいのか」と聞くと「勉強したい。」と言います。それなら、参加しやすい学習会を企画して、そこに友達をつれてきて関心を持つ人をひろげようと呼びかけています。
若い世代は無関心だといわれますが、自由に考えさせない、意見を持たせない。そういう教育制度、道徳を作ったのはだれなのか。子どもの責任ではありません。 私は高校生のときにグローバルな視野で活躍したジャーナリストの松井やよりさんの本を読み、大変なショックをうけました。著しい人権侵害を繰り返してはしてはいけない。
これからも国際世論を高めるために取り組んでいこうと考えています。次回の日本での講義講演ツアーは5月の後半の予定です。私の活動の詳細は「日本の表現の自由を伝える会」で検索してください。