【20.10.10】長峯信彦さん/愛知大学法学部教授・憲法学――菅政権は「第三次安倍内閣」

大切なことをわかりやすく すべての人に届く訴えを!

 
長峯 信彦 さん

名古屋市生まれ。県立千種高校、早稲田大学法学部卒。
愛知大学法学部教授・憲法学。
趣味はバイオリン。

モラルの崩壊

 安倍政権とは一言でいえばモラルの崩壊です。安倍さんのやりたい放題、「おともだち」だけで内閣や秘書官を固めてしまいました。私は高校生のころから新聞を読んで、政治を見てきましたが、ここまでの政権はない。安倍さんは「恥ずかしい」という感覚がないのでしょう。普通の人には理解できない人です。官房副長官時代にNHK慰安婦特集に介入して、番組を改変させたのは安倍さんです。この問題は裁判になっていて、東京高裁の判決に「政治家の発言を忖度して」という言葉が出てきます。安倍さんはこの時から「忖度」に味をしめていたのです。

桜を見る会

 森友カケ桜、どれも問題だが、「桜を見る会」については次元が違います。法律の専門家である弁護士や元最高裁判事ら662人が刑事告発していています。ただのスキャンダルではない。マスコミも取り上げましたが、安倍首相はぬけぬけと嘘八百を言う。ジャパンライフの山口会長(当時)が逮捕されましたが、この問題は明確な違法行為として追及してほしいです。

最大の無駄遣いは軍事費

 税金の無駄遣い、最たるものが軍事費。今年の軍事費は5兆4000億円です。安倍政権になってからうなぎのぼりに軍事費が増えています。無駄な武器購入、軍事訓練が多すぎます。昨年1月、自衛隊がアメリカにある大演習場まで戦車や装甲車を100台以上運んで合同演習やっています。中東をイメージした架空の町をつくり、イスラム教徒を実際に雇って住まわせて、
市民を巻き込んだゲリラ戦を想定した手のこんだ訓練施設です。日本の防衛のためならばまだしも、あきらかに将来、自衛隊が米軍と一緒になって中東での軍事作戦に参加させるための訓練です。こんなことに膨大な予算が割かれているのです。
 このような無駄遣いは、いま、コロナ禍だからこそ問い直されるべきです。

「敵基地攻撃能力」

 安倍前首相が辞任直前に「敵基地攻撃能力」談話を出しました。「敵基地攻撃能力」と言っても、移動式発射台や、燃料投下の有無など、何をどう判断するのか。攻撃してみたら違っていた、では完全に先制攻撃国際法違反です。こんなの国会で追及されたらあっという間に崩れてしまいます。国民の不安を煽って、改憲の機運を高めようとしているのです。

コスト意識をもって

 「政治は自分に関係ないこと」、「選挙にいっても変わらない」という無力感が近年の低投票率につながっています。マスコミの影響も大きいですね。日頃から学生と話していて、観念的に「平和大事」では伝わらないと感じています。私たちの税金がどう使われているのか、年金がどうなるのかなど、納税者としてのコスト意識を呼び起こすような問いかけが必要ではないでしょうか。

忖度社会、根深い

 数年前に「忖度」が流行語になりましたが、日本は根深い「忖度社会」であると思います。私の尊敬する学者・樋口陽一は「『個人』の確立」ということを言いました。自分でもの考え、判断するという当たり前のことですが、これがとても難しい。現在の教育の中で「意見=異論」となってしまい何も言えない雰囲気がある。これは、日常の人間関係から、政治の世界までつながっているような気がします。「私益」を追求するエゴイスティックな人間ではなく、他人と違うということを認め合える社会の構築、つまりはそういうことを認め合える『個人』の育成が根本的に必要です。

第三次安倍内閣

 菅政権が誕生しましたが、これは「第三次安倍内閣」とも言えると思います。
 日本学術会議での任命拒否は本当に驚きました。拒否された一人、加藤陽子さんは日本史教科書の執筆者の一人です。いわば文科省にも認められた人ですよ。少しでも政権批判をする人を恐れて排除する。これは思想差別とも言えますし、菅政権が安倍政権類似の幼稚さを露呈したと言えます。

わかりやすくインパクトのある訴え

 立憲野党は、共産党もいれてかなり連携をとれるようになってきていますよね。選挙協力がどこまでできるかということがまず重要ですが、もう一歩前に進める必要があります。
 1998年の共産党、2009年の民主党の大躍進の際、無党派層が大きく動きました。無党派層は、決して政治に無関心というわけではない。世間の流れやマスコミの報道は敏感に感じ取っている。だからこそマスコミで持ち上げられると菅政権の支持率が上がるんです。これはマスコミの責任が非常に大きいです。
 こういう人たちに、わかりやすく、インパクトもって、何が本当に大切かを訴え続けることが重要です。

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