現地と避難者に心を寄せた支援を
戸村 京子さん
チェルノブイリ救援・中部理事、初代代表。現在、愛知県被災者支援センター等で活動。2006年、龍谷大学大学院在学中、ウクライナ国立キエフ大学に留学。2009年、ウクライナの被災者団体へ半年間の研修の経験をもつ。
【ウクライナ救援基金】
振込口座:
銀行名:三菱UFJ銀行
支店名:名古屋営業部 (店番150)
口座番号:普通 6949211
口座名義:特定非営利活動法人チェルノブイリ救援中部
(トクテイヒエイリカツドウホウジンチェルノブイリキュウエンチュウブ)
チェルノブイリ救援・中部の立ち上げ
1986年4月26日、ウクライナ北部のチェルノブイリ原発で事故が起きました。8000キロ離れた日本でも放射能が検出されました。私たちでさえこんなに不安なのに、現地の母親たちはどうしているのか、と心配でした。ソ連邦崩壊の頃、現地の深刻な状況が明らかになってきました。1990年4月にチェルノブイリ救援・中部を立ち上げました。まず現地の様子と必要な支援を知るために手紙を送りました。結果、地元新聞社のジャーナリスト達とつながり、現地の母親たちは母乳から放射能が検出されるので、代わりに野菜スープを飲ませている、自家菜園のものしか手に入らない、原発事故の消火活動や除染作業をした事故処理作業者が病気になっているが医療が不十分である実情を知ることができました。
チェルノブイリへ視察へ
同年8月に、粉ミルクや医薬品などの支援物資をもって現地視察へ代表団を送りました。ソ連邦の社会経済体制の影響から、医療技術が遅れていることが分かりました。小児病院を中心にどういうものが必要か調べて、保育器や注射器・医薬品などを送りました。当初から粉ミルクを送る活動は現在も続いています。
キエフから西へ120キロ程のジトーミル市は放射能の被害を最も受けている州内です。この地域の病院への医療支援を中心に、子どもたちへクリスマスカードを送ったり、事故処理作業者の支援をしたりという活動を31年続けてきました。
3.11 福島原発事故
2011年3月11日、福島原発事故が起きました。チェルノブイリの方々は「いつも支援してくれる日本のために」と、少ないお金の中から募金を集めてくださいました。私たちはこれで当時日本では手に入らなくなっていた放射能測定器をウクライナから購入しました。その測定器で福島の放射能値を調べるという活動を10年続けています。
一刻も早くウクライナに平和を
今、ロシアのウクライナ侵略によって、私たちの仲間が命の危険にさらされています。私はウクライナに留学していました。キエフには世界遺産もたくさんあり、歴史と文化の豊かな趣のある素晴らしい街です。その他の街々もロシア軍の無差別な攻撃で破壊されています。
現地の仲間が伝える惨状に胸が張り裂けそうです。ロシア軍は村々の民家を攻撃し、チェルノブイリ原発の労働者がまとまって住んでいる街があり、ついにチェルノブイリ原発を占拠しました。稼働中のザポリージャ原発も占拠しました。そこに住む原発労働者はまともな物資も届かない中、飢餓に苦しみ、ロシア軍から銃を突きつけられて働かされていると聞いています。
一刻も早くウクライナの人々に安心と元の生活を返してほしいです。
支援物資、第一陣届ける
ジトーミル市も攻撃を受け、現地のカウンターパートの事務所は破壊されてしまいました。支援ルートを探している時、ドイツのNGOが同じ病院の支援していたこと思い出しました。支援物資をドイツから国境まで運び、ジトーミルから私たちの仲間が受け取りにいくルートを確保。3月26日の夜に第一陣が届けられました。もっと迅速に届けるためにポーランドからのルートも決まりました。
私たちの支援金は、がれきを除去する機械や、救急処置の道具・薬品などの支援物資を購入し確実に届けます。これまでの活動あってこその私たちの強みです。
避難者支援を本格的に
ウクライナからの避難者の受け入れを国も自治体も決めました。先日もキエフの女性から日本に避難したと連絡が来ました。彼女は家族がいるから避難したくないと言っていましたが、家族に先に日本に行って生活基盤を作ってほしいと言われたそうです。今後はこういう方への支援も必要になってきます。まずは市営住宅など住居の確保。生活用品なども一から必要ですし、就労支援や言葉の問題もあります。子どもへの医療や教育も。過酷な体験をしているので心の問題も出てくるでしょう。
これまで東北や福島他からの避難者支援を11年やってきました。専門家などとのネットワークも生かしてこれから本格的なウクライナからの避難者の支援が必要です。
核を世界からなくす
チェルノブイリ原発では今も神経の使う廃炉作業が必要です。ロシア軍に原発をコントロールできるのか?なにかあれば地球規模の被害になります。だから、核兵器も原発も持ってはだめなのです。チェルノブイリを見てきた私たちはそう主張してきました。ましてやこの危機に乗じて被爆国の日本が「核共有」なんて悪質です。
今、世界の民主主義が問われています。プーチンの時代錯誤なやり方を絶対に許してはいけません。
同じ時代を生きる者として、この現実から目を背けることはできません。身近なところから支援の輪を広げていただきたいです。