【22.9.10】田原裕之さん(弁護士)――立憲主義を揺るがす 憲法違反の 安倍元首相の「国葬」中止を!

民主主義を敵視し、破壊した安倍元首相

 
田原 裕之さん
弁護士。名古屋大学法学部卒。名古屋第一法律事務所所属。
自由法曹団愛知支部・支部長、日本労働弁護団(東海労働弁護団)、日弁連刑事拘禁制度改革実現本部事務局長代行。

「負の功績」の批判 を封じることに

 自由法曹団は7月14日に岸田首相が安倍元首相の葬儀を行うと発表した直後の7月20日に「岸田首相による安倍元首相の国葬声明に抗議し、その撤回を求める緊急声明」を出しました。 安倍元首相は集団的自衛権行使容認の閣議決定、戦争法の制定、秘密保護法・共謀罪の制定、日本を戦争する国にする施策を進めてきました。
 また、桜を見る会など国政の私物化という民主主義破壊、ジェンダー平等に背を向け、気候危機無策、核兵器廃絶、原発廃止にも国民の声を無視し続けてきた「負の功績」の批判を封じることになります。
 民主主義を敵視し、破壊し続けた者を「国葬」とすることは許されません。
 憲法論から見ても、死者をどう弔うかは個々の国民の意思にゆだねるべきことです。

統一協会と関係の深い安倍氏の国葬はおかしい

 国葬とはなにかということですが、もともと旧憲法下で国葬令(勅令)がありましたが新憲法のもと国葬令は1947年に廃止されました。現在、国葬をおこなう法的根拠はありません。
 今回の閣議決定では、内閣設置法の国の儀式にあたるというのですが、内閣の意思のみで葬儀に国費(税金)を支出することは、財政支出に国会の議決を要するとした憲法83条の法治主義にも反します。国会の議決が必要であるとなっているのに予備費で出すから議決はいらないという手法自体が安倍元首相がやってきた議会軽視、政治の私物化、内閣が決めれば何でもできるという延長線上です。
 憲法上の問題から言えば憲法19条(思想良心の自由)に反し、内閣の権限を定めた憲法73条にも反しています。「国葬の実施」は内閣の権限に含まれていません。
広い意味では立憲主義破壊がここまで及んでいるということです。閣議決定だけで済まそうということ自体が立憲主義に反しています。国葬問題でも同じことが続いています。

国葬反対世論のひろがり

 8月29日の朝日新聞世論調査は、国葬に反対が多い。それを推進している岸田首相の内閣支持率が急降下しています。さらに、統一協会との関係について「断ち切るべきだ」は82%です。旧統一協会の政府の対応が政権を直撃しています。ある週刊誌は「政府の葬儀予算は2・5億円に騙されるな」と血税33億円、最大130億越えの試算と報道しています。
 国会での閉会審査はいつやるのか決まっていません。27日までは国会を開かず、費用も事後報告で終わりとするのではないでしょうか。
 東京はじめ各地の弁護士会が反対声明を出しています。国葬反対の声を大きくひろげましよう。同時に反対を押し切って国葬が行われたときに弔意を強制させないことが重要です。政府は弔意を強制しないといっていますが、君が代・日の丸についても、強制しないと言いながら、東京都が10・23通達で従え、違反すると懲戒処分すると戒告処分がされました。「強制はしていない」と言いながら、自治体職員に自治体が弔意を強制させる危険もあります。
 自治体、学校、司法などに注目しています。特に学校現場で、「今日は国葬の日です」と事実上、黙祷や弔旗の掲揚が強制されることがあり得ます。私たち弁護士としては、名古屋高裁、地裁に申しれを行っていく必要があると考えています。
 また、報道機関には「国葬一色」の報道にならないよう申入れをしたい。これらの活動については、労働組合のみなさんと連携しながら働きかけていきたいと思います。
 国葬を中止させる運動を強めたいし、仮に強行するならば、岸田首相には国葬をやって失敗した、あんなことをしなければよかったというくらいの状況を作り上げていきたい。安保法制で国会を取り巻くような状況をつくりあげたときのように。国葬は反対の声が大きくなっています。国葬は反対が多いと報道せざるを得なくなっています。押しているのです。私たち自由法曹団は内閣、自民党、公明党、立憲民主党、共産党などの政党に声明をおくりました。
 今後各団体とも共同して関係方面へ抗議と行動を一緒にやっていきましょう。連帯して頑張りましょう。

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