
大坂 恭子(おおさか きょうこ)さん
弁護士(ラヴィーダ法律事務所)2007年9月弁護士登録、外国人研修生問題弁護士連絡会共同代表。日本弁護士連合会外国人労働者受け入れ問題プロジェクトチーム委員、専門は、外国人労働事件、入管事件など。著書「外国人技能実習生法的支援マニュアル」(共著、赤石書店)
10月22日、外国人労働事件や入管事件をとりくんでいる弁護士の大坂恭子さんをお尋ねし、日本で働く外国人労働者の実態と、今後の課題などをお聞きしました。 【聞き手・写真 近田美保子】
外国人労働者に依拠して成り立つ日本経済
外国人労働者の受け入れをすすめてきた政府
その背景にあるのは、深刻な人手不足です。外国人労働者は、2024年10月末時点で230万人を超えて、過去最多を超えて更新し続けています。すべて日本政府から在留を許可された正規の滞在者で、雇用主から届け出のあった労働者です。
日本政府が外国人労働者を受け入れる政策をとらなければ、外国人労働者が急速に230万人を超えることはなかったのです。
政府は、雇用主や、業界団体からの強い要請をうけて対象職種を広げ、受け入れ人数を拡大してきました。
法務大臣の「論点整理」、副題に「国民の安全・安心の死守」
2024年の出生数は、68万人台となり少子化が急速に進んでいるのに、少子化対策が示されるのでもありません。外国人に頼らざるをえない状況があるのに、さきの参院選挙での外国人敵視、「排外主義」が横行し、ただただ外国人を敵対していじめ、憂さ晴らしをしているみたいになっていませんか。
政府も異常なほど、排外主義的な政策を打ちだしています。
今年8月に法務大臣は外国人受け入れの「論点整理」を出しました。「外国人との真の共生を実現」し「活力ある日本社会の実現」と今後の外国人の受入れの在り方」を検討するとしています。この検討は必要ですが、その「論点整理」の副題に突然、「国民の安全・安心の死守」との表現が出てきます。本文では、外国人の刑法犯の検挙件数、人数が2006年より減少傾向が指摘され、治安の悪化をうらづける事実は示されていません。
しかし、政府がこのような表現をすることは、外国人への偏見を助長させることになりかねないと思います。
ビジョンなき受け入れ
外国人受け入れについて、日弁連は、技能実習制度を廃止し、人権を保障した形で労働者受け入れ制度にすべきだと主張しています。
政府は、「専門的じゃない労働者については受け入れない」とか、「移民政策は取らない」などと外国人労働者受け入れのビジョンを描いてきていませんでしたので、「実習」という名目で受け入れ、その欺瞞をずっと続けてきました。
技能実習制度は、2027年度に廃止され「育成就労制度」と移行するのですが、「育成」という名目での職場移転の自由制限など多くの問題があります。
場当たり的な、わかりにくい在留資格制度のつぎはぎに国民の理解は追いついていません。
外国人にヘイトスピーチをしている場合ではなく、少子高齢化対策、外国人労働者受け入れ政策、移民政策について本当の意味での論議が求められていると思います。
入管政策の問題 強制送還
外国人労働者、特に在留資格上最も弱い立場が47万人もの技能実習生です。本人が日本政府に直接応募するシステムではないので、送り出す国に、派遣会社みたいなものがあって、日本政府の手が及ばないところで高額な手数料や保証金を背負い、多額の借金を背負ってきています。
在留資格発行は入管がやるのですから、そこで調整し、正規、非正規を問わず、受け入れ、摘発が法務大臣の手の中にあるのが入管政策です。
昨年5月からは、「ゼロプラン」といって「非正規滞在者をゼロにしようという」キャンペーンが始まりました。年度の途中にもかかわらず強制送還した数字を公表することは、異常としか言いようがありません。
日本で生まれ、日本語しか話せない子どもも定期的に入管に行かせ、強制的に国外追放する。救済はしない。人権問題です。
労働力と納税だけ頼って、働かせるだけ働かせる仕組みです。技能実習生など長期間日本に暮らしても家族を呼べない労働者がいます。
全国知事会宣言、外国人受け入れに動く企業や自治体
最近では日本企業がインドネシアやベトナムなどに人材育成施設を設け、現地で採用活動を強化する動きが強まっています。自治体でもこれに連携して外国人受け入れを進める動きが広がっています。
7月23日、24日にわたり、青森県青森市で、全国知事会が開催され「青森宣言」を全会一致で採択しました。 全国知事会が政府に対して「その場しのぎではない真の政策論議を」求め、更なる外国人の受け入れ拡大を国に求める提言を出しています。
同時に、参議院選挙での争点となった急増する外国人問題への対応について、外国人差別を訴えた政党が躍進しましたが、「排外主義を否定し、多文化共生社会を目指す我々47人の知事がこの場に集い、対話の中で日本の未来を拓(ひら)くに相応(ふさわ)しい舞台となった」という言葉を盛り込みました。大変重要な宣言です。
高市早苗氏の「鹿」問題での発言は、決して許されません。政府は、みんなが感情的になりそうな時に、「日本社会の置かれている足元を見ましょう」と、排外主義への批判をきちんよすべきです。
デマや偏った主張を検証し発言を
私自身は外国人事件をやってきて、外国人として暮らすことの厳しさを痛感しています。
入管政策、在留資格制度からも、永住者であっても日本人より優遇されるということはありません。
生活保護の受給が可能な在留資格は限られる一方、すべての外国人に納税義務や保険加入義務はあり、「優遇」どころではないです。ひとり一人が排外主義に基づくデマや偏った主張を検証し、積極的に発言してほしいです。
私はこの仕事を通して、多くの文化をたくさん知ることができて、世界が広がり楽しいです。
皆さんも直接つながって、いろんな国、いろんな人がいて日本社会が成り立っていることがわかるとすごくいいんじゃないかなと思ってます。
身近な外国人とつながることは、排外主義に対抗していくためにすごく大事なことですね。
