津田 正夫(てにておラジオ代表)
2017年1月で任期満了となるNHKの次期会長が、“続投”に意欲的な籾井氏になるのか、交代させるのか、任免権を持つNHK経営委員会の議論が注目を集めてきた。というのも安倍政権は発足後、矢継ぎ早に法制局長官や日銀総裁、NHK経営委員など、政権の意のままになる露骨な人事を行った。籾井会長は就任会見で「政府が右ということをNHKが左というわけにはいかない」と言い放ち、熊本地震に伴う九州の原発の安全性の問題でも、「公式発表をベースに伝えてほしい」などと取材現場を規制する発言を繰り返し、およそ公共放送やジャーナリズムの責任者としてふさわしくないと、NHK局内、OB、研究者や多くの視聴者から指摘されてきた。
この3年間、NHKの退職者や各地の視聴者は、会長罷免を求めて、署名、NHK包囲デモ、院内集会などさまざまな運動を粘り強く展開し、終盤では、退職者有志による「会長候補推薦委員会」が独自の会長候補を経営委員会に推してきた。
去年末、12月6日の経営委員会では、その一員である上田良一氏(三菱商事出身。NHK常勤監査委員長)を次期会長と決定した。“問題会長”を交代させたことで、NHK内外に一定の安堵感があることは事実だが、視聴者や国会などに図らず、お手盛りで経営委員自身が公共放送の会長になっていいのか、首相が任命する現在の経営委員選任の方法が公正か、放送・通信行政の監理が、独裁国家のように権力の直接支配のままでいいのか、課題は山積したままである。
(*津田正夫さんは、2014年4月号インタビューに登場され、安倍政権のメディアコントロールを許さない 籾井会長は辞任を!――声をどんどん届けようと語っていただきました。)