【10.09.05】革新・岡崎の会 ニュース9月号より  強い感銘を与えてくれる鶴彬

強い感銘を与えてくれる鶴彬

 鶴彬-こころの軌跡-の上映活動、ありがとうございました。

会場でのアンケートには答えましたが、改めて感想を書き留めたいとお手紙を差し上げる事としました。何よりも、小林多喜二氏のことは知っておりましたが、表現方法は異なっていても、今と同じような一生を送った若者がいたことをはじめて知りました。このことは私の一生の思いとなるでしょう。私は歌にもならない俳句と短歌を少々つくりますが、川柳はとっても難しいと思っていましたし、この映画を見てもますますその思いが強くなりました。俳句は「自然」を詠み、短歌は「人」を詠み、川柳は「社会」を詠むと私なりに考えています。

 「自然」を詠んだり、「人」を読むのは個人的な思考でもそれなりの形にはなりますが、難しいことだと感じます。いずれは「川柳」が詠めるような人間になりたいと願いますが、まだまだ道は遠いというのが正直なところです。鶴彬の感性の鋭さ、社会を見つめる目の鋭さは、ただただ感心するのみであります。彼が戦後まで生き延びることができたら、日本の文学にどれだけの影響を残すことができたろうかととっても残念の一言に尽きます。

鶴彬の句はひとつひとつ心をえぐるような力強いもので、これだけの句を作りながら、常に住むべき家も持たぬような一生を送っていった彼の思いはいくばくのものであっただろうかと思いをめぐらしますが、とっても私の能力ではそれを理解することはとても無理であります。シナリオ台本のパンフを何度も見直しております。句碑を一度訪ねてみたいと考えております。

彼の川柳は当然でありますが、柳樽寺剣花坊氏の川柳は、さすがに「川柳中興祖」と言われるだけのことはあるとしみじみ感じました。「火は西に月はまだ出ぬ世紀末」は「菜の花や月は東に日は西に」の本家取りの感じがしてとってもユーモアが感じられますし、当時の日本をまさに五、七、五で一刀両断に切り取った名句と私の心に一生残ると思います。「頭ほど足は進まずつんのめり」は、本当に人間の可愛さ、愚かさをこれほどリアルに表現した句に今まであったことはありませんでした。「柳樽寺天下の芋を集めけり」とさつま芋を鶴彬と共に食べるシーンは思わず拍手を送りたくなりました。「飢えたらば盗めと神はなぜ言わぬ」には、食うに食えない貧しい庶民に対する思いの深さをと、社会に対する国の政治に対する激烈な批判を感じます。金700円で購入したシナリオパンフレットは私の一生の宝になります。私の映画の見方は製作者や上映活動をを進めてみえる方々とは少々異なっているとは思いますが命を懸け、命を削っても社会に対する抗議を五、七、五に託して真正面から戦い続けた天才鶴彬のことを生きているうちに知ることができたことに心からの感謝をするものでありす。それと同時に彼を支え続けた剣花坊夫婦の存在と同氏の「川柳」に出会えたのはとても幸いに思いました。

決して楽しいと言う意味でなく非常に「愉快な映画に出会ったことを心から感謝するものであります。ただ日本にあの時代があったことを知らない日本人の方が多数を占めている現代に,あの映画をきちんと理解して見れる人がどれだけいるのかとの思いはしました。最後になりますが、素晴らしい映画に出会うチャンスをつくっていただいたスタッフの皆様に重ねてお礼を申し上げるものです。

2010年 5月 24日 M

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