【13.07.16】橋下慰安婦発言に思う―青木陽子さん(作家、革新・愛知の会代表世話人)

 戦争であれば、兵士という「猛者集団」のために「慰安婦制度は必要」との橋下発言に、唖然とした人は多いだろう。彼はそのことを「誰だってわかる」と言った。
 冗談じゃない、そんなこと誰が理解を示すか。だが、石原維新の会代表は、「軍と売春はつきもの、歴史の原理のようなもの」と橋下氏を擁護する。極右の彼ならさもあろうかと思うものの、そのような発言が白昼堂々と発せられること自体に慄然とする。
 安倍首相を先頭に、日本の政治が憲法改定を目論み、戦争への道を辿りつつある昨今、何としてもその狙いを打ち砕かねばという思いは強くあるが、その戦争が起こった時には、いまのところ(建前だけでも!)尊重されている女性の人権が、かくも見事に蹂躙されるのだという腹立たしい見通し。同時に、そのことを仕方のないこととする人間が、この日本にはまだまだ少なくないのかもしれないという恐怖感も湧く。
 内外からの批判の高まりは橋下氏にとっては「想定外」であったろう。誤報であり当時の論であって現在の自分の考えではないと弁明し、世界各国、慰安婦はいたのに、日本だけが非難されるのはおかしいと嘯く――悪さをした子どもでも恥ずかしくなるような言訳、その考え方の低劣さ! 思想の貧困は、しかし、呆れている内に、偏狭なナショナリズム醸成の土壌になるのではないか、そんな懸念もふと浮かぶ。
 報道は彼の根底の「思想」を脇に置いて、表層で右往左往しているようにも見える。まあ、そうかもしれない。根底から彼の発言を批判しようとすれば、人間と女性の人権と尊厳を守り、それらを侵害する戦争に反対する立場に立たなくてはならないのだから。性奴隷抜きに戦争があり得ないなら尚更、私たちは強く、戦争への道を閉ざし、人権を守る豊かな社会をめざしてたたかわねばならない。

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