ぜひ知ってほしい。現在国会で多数の自民党は、小選挙区制のトリック(虚構)によって巨大権力を掌握しているという事実を。
2003年小泉政権時の衆院選で同党の小選挙区得票率は43・85%なのに、議席占有率は56%(168議席)に上る。
しかし自民党が政権復帰した2012年衆院選の同党小選挙区の得票率はそれを下回る43・01%なのに、議席占有率はなんと79%(237議席)という驚異的なレヴェルにハネ上がっているのだ。「4割ちょっとの得票で8割の議席を独占」というこの事実は、いわば「4万円余しか払っていないのに8万円の品物を掠め獲っている」に等しい、と言わねばなるまい。誰が見ても不公平極まりない話だ。
民意を完全に歪めて議席に反映してしまう小選挙区制のトリックの上に成り立つ安倍政権が、こんどは強欲にも、改憲発議のルールを定めた憲法96条「衆参両院の総議員の3分の2以上」というハードルを「2分の1」にまで緩和したいという。
どこまで図々しいのか。
さて、今、サッカーの試合中。「オフサイド」ルールによってシュートを何回も無効にされたチームのキャプテンが、コワイ顔して審判の胸ぐらを掴みながら(←ルール違反! 退場に相当)抗議している。
「このルールだと、頑張ってシュートしても無効にされて点が入らないじゃないか! 試合の後半からは『オフサイド』ルールを緩和しろ!」
ルールが不利だからと言って、実力不足を棚に上げて、事もあろうにルール違反しているキャプテン自身が、
試合の最中に《 ルールを変えろ! 》と言うのはあまりにも身勝手な話だ。しかし実は、これこそが安倍首相の姿なのである。
なぜなら総理大臣とは、大きな権力を手にして、国中から脚光を浴びて「政治」フィールドのど真ん中で「権力行使」というプレーしているキャプテンのような存在だからだ【最高権力者】。大臣や国会議員は、共に「権力行使」というプレーしている選手そのものだ【公権力者】。
その選手たち全員に課せられた義務は、まずは「憲法」という根本ルールに従うことなのである【憲法尊重擁護義務(憲法99条)】。
ルールの下でこそプレーさせてもらえる【憲法の下で授権されている】のだから、ルールを批判するのなら、その座を退いて一市民として言うべきだ。
しかし、事もあろうにその安倍総理が、こんどは明確な憲法違反をしてしまった。憲法63条「総理大臣〔は、国会から〕出席を求められたときは、出席しなければならない」とあるのに、国会を故意に欠席したのだった。
参議院はその責任を問い、ついに問責決議を可決した(2013年6月26日)。総理大臣への問責決議とは極めて重大である。「96条改憲」を声高に叫ぶ安倍首相の姿は、まさに、自らルール違反しながら「ルールを変えろ!」と怒っているワガママ選手そのものなのである。(終)
2013年7月1日