6月8日、シンポジウム《安倍政権の改憲動向をどう見るか》を開催。参加者は、97名。(1)自民党改憲で私たちの暮らしはどう変わるのか(2)平時にこそ冷静な憲法論議をする(3)安倍政権は新自由主義を強めているなどパネリストから問題提起がされました。たくさんの方から質問が出され、パネリストは丁寧にこたえられました。
≪主催者挨拶:大島良満代表世話人≫
革新懇は、平和・民主主義・生活向上をめざすことを共同目標にしている。そのうちの一つでも一致すれば一緒に共同できる。
今日は、4人の忙しい方――論客を招くことができた。7月の参議院選挙は、日本の将来に大きくかかわる。ここで学んだことを職場・地域で広げてほしい。
≪シンポ開催にあたって:コーディネーター・小林武さん(沖縄大学客員教授)≫
3人のパネラーをお迎えしている。革新懇運動は、3つの目標を掲げているが、選挙の時は、特定の政党を支持しません。しかし、考える場を設定することをやりたい。自由なご意見が出てくることを期待しています。革新懇の示している方向と違う意見が出てくるかもしれないけれど、じっくりと考えてもらうことが大切と考えます。
安部政権の半年をどうみるか
飯室勝彦さん(元東京・中日新聞論説委員)
安倍政権は侮れない。結構もつのではないか。「日本を、取り戻す」などといっている事は一緒だが第一次安倍内閣のときの失敗から学習している。安全運転をしている。96条の改定のハードルを下げることについては、予想外に反発が強いので、「論議することが大事だ」と修正している。
参議院選挙が終わるとがらりと変わるのではないか。政治的スタンスは単純でイエスかノーかであって連立方程式は解けない。単純化して二者択一を国民に迫ってくる。
梅村忠直さん(弁護士・元自民党県議)
「はじめまして」。自民党から新進党へ・・・・。私は、本来の意味で保守であってリベラルである。政治にかかわっていた時も退いてからもこの立場は変わらない。21年前、県議会で憲法問題で論陣を張った。
昨年12月の総選挙の争点は経済問題であって改憲も脱原発も争点にはならなかった。日本経済だけが落ち込んでいるのを何とかしてほしいとの思いが相対的には自民党に流れた。アベノミクスは株高、円安でそれなりの成果。今後どうなるかは不明。安倍政権は憲法改正が国民から支持されていると思っているがこれは錯覚。改正手続きを
二分の一で発議する、安易に憲法を変えるのは、憲法への冒瀆である。
憲法は、冷静に論議をすることが必要。平和主義など基本的理念は変えられない。最近、郵政民営化、政権交代など熱狂的な対応で劇場型政治がつくられた。憲法問題をはずみ・悪ノリでやるのは評価できない。
本 秀紀さん(名古屋大学教授)
安倍政権は安全運転か――(1)明文改憲と解釈改憲とを両方打ち出している(2)「戦後レジームからの脱却」が無頓着に進行させられている。閣僚、国会議員の靖国参拝、「定説のない事項は、教科書に載せない」として教科書会社を自民党が呼びつけている。よほどの強シンゾウ(3)新自由主義(規制緩和、格差拡大など)を進めると同時に新保守主義(国家主義による一体化)を強めている。社会権生存権のために国家が規制することを弱め、国家が国民の精神に介入している。アベコベ内閣だ。
自民党改憲草案をどう見るか
梅村忠直さん
安倍首相は本当に憲法がわかっているのかと思う。岸信介の強い影響を受けている。(1)現憲法前文は美しい。崇高な理想がある。改憲草案は全然美しくない(2)改憲草案は改憲ではなく現行憲法を廃棄してまったく別のものをつくろうとしている(3)改憲派の小林節慶大教授すら、96条を改めることに反対といている。「9条を守れといっているだけでいいのか」――自衛隊の存在は認めても海外派兵はしない、核兵器は持たない、との歯止めをかけて憲法論議をすることが大切。
自民党の中には、リベラル派の人々が消えていっている。小泉の劇場型政治のように内容も見ずに流れだけで投票行動に走ることがあってはならない。平時に冷静に憲法の論議をしよう。憲法をかえないのはいい。しかし、憲法の論議をしないのはよくない。
飯室勝彦さん
論説委員時代、憲法ウオッチングとして社説を50~60本書いた。憲法は、「この国のかたち」を決めるものだ。
自民党改憲草案では、どんな国家像がめざされているか。(1)天皇を「戴く」、内閣の「進言」、憲法尊重擁護義務から天皇をはずす(2)国防軍は「憲法のさだめるところにより」、国連決議なしに海外出動できる。戦争しやすくなる(3)人権――「責任及び義務が伴う」とし、「公益及び公の秩序」が強調されている。表現の自由、結社の自由についても「公益及び公の秩序」の制約がつく。個人より公けが強調されている(4)「家族は、互いに助け合わなければならない」としている。これは国際人権規約23条の「家族は・・・・社会及び国による保護を受ける権利を有する」に反している。
本 秀紀さん
(1)憲法そのものの性格を変えようとしている――人権を保障するため国家に縛りをかけるから、公の秩序、公の利益のために国民を縛るものに(2)改憲草案の国防軍規定も問題だが、集団的自衛権の行使を議員立法で成立させようとしていることにも注目を(内閣法制局のチェックを要しない)(3)96条のハードルを下げることは何をねらっているのか。二分の一にすることは時々の多数派で憲法を変えることになる。96条を改めることには原理的なことで批判することが必要ではないのか。立憲主義が崩される、憲法が憲法でなくなる(4)平和主義を国政・外交にどう生かすかが大事だ。
改憲阻止に向けて
飯室勝彦さん
新聞の読み方を深める。報道は事実と論評に分けられている。一つ一つの事実を積み重ねることで事態は変わる。日常生活のことを憲法で考えてみる。こうした事実の積み重ねが投票、議会の数につながると思う。
梅村忠直さん
改憲の動きは、小選挙区制の実施、ご意見番のような人がいなくなったことによる(たとえば後藤田正晴、野中広務)。国会議員も深く考えずに時の勢いばかりに気をとられている。憲法について、論議をきちんと始めることが重要である。時の勢いにのまれず、根本精神をしっかり深めることが求められている。海外派兵を許さず核兵器の使用を禁止する。
本 秀紀さん
「国防軍」は、憲法の基本理念から考えれば出てくるはずがない。改憲の動きを国会のなかで阻止をする、国民の間で論議を進めていく。改憲の動きを参議院選挙で阻止しよう。国会にも世論を反映しよう。何が起こっているか、広く知らせていく。声を出していけば輪が広がる。
終わりに:コーディネイター・小林武さん
3人の方を迎えシンポの狙いが実現できたのではないか。
今日の論議に見るように、国民の多くは憲法とはどういうものか、立憲主義の本質をつかみ出した。しかし安倍政権の国家主義的な流れは軽視できない。国家主義の強調に伴走する橋下、みんなの党、原発輸出の動きも強くなっている。オスプレイは沖縄だけでなく八尾でも。
各人が改憲の動きを選挙で下すことが大切だ。自民党改憲草案を読んだ人が「息子は徴兵されるのか」と切実な不安を持ったという。国防の義務が改憲、法律制定でのしかかってくる。これらをはねかえしていこう。
ご協力ありがとうございました。