【14.02.10】名護は屈しなかった-小林武(革新・愛知の会代表世話人、宜野湾市在住)

 
 2014年1月19日は、名護市と沖縄県そして日本の民衆が大きな勝利の足跡を刻んだ日として歴史に残ることでしょう。その夜、稲嶺圧勝の報に、人々は感涙に咽びました。ぼくも片隅で。
――――ほんとうによかった!

 物心両面の支援を寄せてくださった革新・愛知の会の皆さんに、あらためて厚くお礼を申し上げます。

 権力が総力を挙げて民衆に襲いかかった選挙でした。とくに昨年来、安倍政権と自民党中央の圧力の下、沖縄選出の同党国会議員全員が県内移設反対の公約を投げ捨て、続けて自民県連もそれに倣いました。その上で、クリスマスの日、安倍晋三首相は、上京中に入院していた仲井真弘多沖縄県知事に、毎年3千億円という沖縄振興基金を示して見せ、知事から、「有史以来の予算」「驚くべき立派な内容をご提示いただき県民を代表して心から感謝申し上げる」「良い正月が迎えられる」という、金で沖縄の魂を売る卑屈な言辞を引き出しました。その2日後、知事は、辺野古に新基地を造るための公有水面埋立ての申請を承認しました。名護市長選挙は、まさに沖縄の誇りを取り戻すたたかいだったのです。

 稲嶺進候補の相手は、対立候補末松文信氏を超えて、アメリカの意を体した東京の権力と沖縄の植民地エリートたちという、途方もなく巨大な構図が出来ていました。石破茂自民党幹事長が、告示日の12日に「基地の場所は政府が決める」と述べ、また14日に菅義偉官房長官が、「市長選の結果にかかわらず埋立てを進める」と断言したのは、地元の民意は無視する、稲嶺に投票しても無駄だという恫喝でした。仲井真氏は、要入院加療の診断で公務は休みながら、連日末松カーに乗り、菅氏と電話で相談しつつ利益誘導の演説を繰り返しました。選挙戦天王山の「3日攻防」に入る16日、石破氏が来沖して、「末松が勝てば500億円の名護振興基金をつくる」と市民に公言したのは、極め付きの懐柔策でした。

 こうした中で、名護市民は、ムチにも屈せず、アメにも騙されなかったのです。仲井真氏も石破氏も、有権者に顔を見せた分、票を減らしました。安倍氏や菅氏が来沖していればもっと減っただろうというのは真実です。稲嶺陣営のウグイス嬢さんは、手を振る市民に「ありがとう」を返す回数が多すぎて政策を話せなかった、といいます。

 市民は「大勝」「圧勝」「歴史的勝利」(20日付各紙)をおさめました。それにもかかわらず、政府は、選挙結果の出た何と翌々日、移設手続に着手しました。安倍政権は凶暴で、わきまえを知りません。「粛々と」(安倍)、「淡々と」(菅)進めるというのです。彼らの眼中には、民主主義も地方自治もありません。

 私たちは、小休止の間もなく、新しいたたかいの局面に否応なく入りました。しかし、この度の勝利で民衆の誇りは弥増しに育ちました。名護は、屈しません。沖縄は、いま、「移設反対のオール沖縄の輪の再形成」(20日、稲嶺)に向かって前進しています。

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