
福島原発事故から15年、「だまっちゃおれん!原発事故人権侵害訴訟・愛知岐阜」原告団長として、活動を続けてきた岡本早苗さん。総選挙後の2月21日、このたたかいの現状と課題、今後の取り組みをお聞きしました。【聞き手・蛯原京子 写真・近田美保子】
岡本 早苗(おかもとさなえ)さん
1978年生まれ 福島県伊達市から避難。「だまっちゃおれん! 原発事故人権侵害訴訟・愛知岐阜」原告団長。原発事故被害者の会・愛知共同代表。「命・健康・くらし・環境を守り強制被曝させない世の中を」と活動。
今後も被ばく被害の救済を求めて!
「だまっちゃおれん原発事故人権侵害訴訟」とは
だまっちゃおれん訴訟のはじまりは、2013年6月、損害賠償請求訴訟愛知と岐阜の原告のみなさんとの名古屋地裁への提訴でした。(2019年8月、国の責任は認めず、東京電力の責任は無過失責任という不当判決が出されました)控訴審から新たに、原告団を組織しなおし、裁判をすすめました。
地裁では、裁判の中で、私たちが何を明らかにし、何を求めているのかを、明確にみなさんにお伝えすることができませんでした。
原発事故のせいで、住んでいた場所が汚染され、いまだに汚染されていて被曝を強いられる、このことから私たちは避難をした、という原点を裁判で訴えたいという思いでした。控訴審からでも携わってくださる弁護士を探すことから始めました。
地裁での一審判決後あらたな弁護団を結成
地裁での判決後に、それまでの弁護団を解任するという経験をしました。
私のように普通に生きてきて、裁判に関わったこともない人にとって、弁護士を解任するということは、恐れを抱くような経験でした。弁護団に思いを伝え、解任の手続きをしたことで、自分の中に、ちゃんと物が言える、物を言う自分がいることに気が付きました。それは新たな自分との出会いでした。
原告団長としてたたかう覚悟もでき、弁護団の会議に参加し、準備書面作成など、裁判について学び理解を深めていきました。
たたかう仲間とつながることで励まされ
裁判の経験から、裁判官の印象は大事で、世論がどれだけ関心を持っているか、傍聴席や雰囲気でちゃんと醸し出さないといけないと思っていました。傍聴席をいっぱいにするために、避難者のみなさんと相談してチラシを作って配布もしました。
全国連絡会の方々ともつながり、裁判期日の情報をいただいて、九州、仙台、福島、東京、関西などに傍聴に出かけました。同じ思いでたたかっている仲間に出会うと、すごく励まされ、声をかけていただいたり、訴訟を応援していただけます。全国で訴訟をたたかう原告数は15000人くらいで、その内約半数の原告が「なりわい訴訟」(福島原発事故の被災者が「生業を返せ、地域を返せ」と国と東京電力を提訴した最大規模の損害賠償集団訴訟)でたたかっています。
裁判をやらなかったり、やれなかった人たちも、裁判の行く末を見ている人がたくさんいることを、忘れてはいけないと思います。
私たちがたたかっているのは、そういう人たちのためでもあります。原発容認の人たちでも、この被害は受けさせたくないと思っています。
原発事故で被害を受けるということが、どういうことなのか、生の声を聞いてもらい「それでも原発やりたいですか」と訴えていきたいです。
最高裁を包囲するヒューマンチェーン(人間の鎖)
裁判が最高裁へ係属され、最高裁を包囲する「ヒューマンチェーン」に2回取り組みました。 最高裁への要請行動では、裁判官と会う機会は作ってもらえませんでした。
裁判官任命の仕組みや判決の出し方にも疑問があり、民主団体や市民活動をされている人、安保法制や原爆訴訟でたたかっている人たちにも声をかけ、最高裁に襟を正させる市民運動ができないかと「ヒューマンチェーン」に挑戦しました。
2024年には、公式で950人、最高裁が包囲できる数で集まっていただきました。労働組合や公害問題で活動する人たちもたくさん集まっていただきました。2025年は、前年を上回る人を集めようと、財政支援もしながら、愛知、岐阜、三重から30~40人が参加し、「原発事故は国の責任です」と「だまっちゃおれん訴訟」の横断幕を掲げました。
市民運動が変化をつくった
こうした取り組みのせいか、最高裁の裁判官に、企業側ではなく労働者側にたって弁護活動をされてきた方が任命されました。
また、退官した裁判官の後に、これまではほとんど東京の弁護士が任命されていましたが、久々に大阪弁護士会から任命されたと聞きました。司法に期待してはいけませんが、ある意味で、市民運動が積み重ねてきたことが勝ち得たものだと思います。
黙ってはいられないできることに全力投球
最高裁では、「国に責任はない」とこれまでの流れを踏襲する判決が出されました。判決が出されたとはいえ、被害がなくなったわけではありません。
事実として汚染は続き、その被害を避ける権利を私たちは行使し続けます。被爆という被害を受けたことに関して、救済は求めるべきだと思っています。
今後の取り組みについては、政府交渉であったり、原発は大公害問題なので、厚生労働省との交渉などをやっていきたいと思っています。全国連のみなさんとも、協議をしてすすめていきたいと思います。
若者の甲状腺がんが発生している現状も事実としてあるので、私たちはこれを放置させるわけにはいきません。原発がある以上、この状況が続き、最近では、中部電力のデータ改ざんもあり、原子力規制庁はこれに対して「気が付きませんでした」と被害者のような発言をしています。
原発事故がまた起こるかもしれないことを分かったうえで、誰も規制ができず、司法の場でも責任がとられません。国としては、原発再稼働をすすめ新設までしたい意向です。誰も責任を取らなくて良いので、こんな楽なことはありません。
これに対して、私たちは、どうボールを投げ返すのかが問われています。
この先も、安全に電気を使い続けていきたいと思うなら、やはり転換していくしかないと、あらためて世論喚起をしていくことだと思います。
福島原発事故の被害を受けた私たちだからこそ、もう二度とこんな被害を受けさせたくないと思っているので、なんとかして一人でも多くの人に思いを伝えて、ひっくり返していくしかないと思っています。
政治のたずなを握るのは私たち主権者
高市首相が、所信表明演説で原発推進についても触れましたが、現状を知った上で、それでも原発を動かしていいか、本当の意味での真を問う必要があると思います。
高市政権のすすめる軍拡は、戦争で人を殺すという事、一方で日本が戦争をして、人を殺すという事の準備です。戦争は、ただの人殺しです。具体的に想像して、みなさんと対話して社会をかえようとする政治へ角度を1度でも2度でも戻していくことが必要です。 人権、原発、どんなテーマでも、政治のたずなを握るのは、私たちです。
