
賑わう金山駅から少し歩いた沢上商店街に、どこかほっとする魅力的な「TOUTEN BOOKSTORE」があります。閉店後の本屋をたずね、オーナーの古賀詩穂子さんに本のこと、お店への想いなどお話を伺いました。 (聞き手:写真 近田美保子)
古賀 詩穂子(こが しほこ) さん
1992年生まれ。愛知県出身。元・出版取次、その後上京し本屋の企画運営に携わる、独立後、2021年1月、名古屋/金山にコーヒーやビールも飲める新刊書店「TOUTEN BOOKSTORE」を開業。
本屋の魅力に取りつかれて
本屋をオープンして今年で5年目です。大学卒業して出版の取次会社に勤めていたころ、本屋を訪れたり人と触れ合う中で本屋の魅力に取りつかれました。
本屋は、一日に一件のペースでなくなっていました。構造的な問題はありますが、こんなに面白い場所なのになぜと疑問でした。
本屋に行く習慣がある人は減っていて、来る理由を作ればやっていけるんじゃないか、自分でやろうと思いました。
直ぐに、開店に向けて動いていたのではなく、東京の会社で新事業立ち上げに声をかけてもらい、出版社の9割以上が東京にあることもあり、東京に行きました。
名古屋に帰ってきて、いろいろな出会いの中から、超スピードで築50年超えの建物を契約し、リノベーションしました。
生活圏内にあって、コンパクトで「町の本屋」として立地も好きです。
コロナ禍を体験して
2021年1月だから、コロナが蔓延していました。緊急事態宣言や、コロナで価値観とか、生き方が変わった、都会に暮らしてたけど、そうじゃない。もっと違った自分の生き方をしたいと、朝から夜まで働きづめじゃない違う生き方を模索する人が増えているように思いました。
多様性に気づく、視線が変わる場
本屋は、本を通じて社会を知る、社会との接点でもあると思います。本を読むと自分の時間が戻ってくるような感じがあって、かつ本屋は属性にとらわれない、性別も年代もバラバラな人たちが集うところ、公共的な魅力的場所で社会に必要です。
文字の情報はいやというほど溢れています。何が真実なのか、また情報疲れというものがみなさんあると思います。
スマホのデバイスって、アルゴリズムで自分の情報が吸われて、それがカスタマイズされてクリックしたものが次々と広告として出てくる。
そんな中でアナログの本屋は、アルゴリズムから一旦切ることができる、そこがすごい大切な部分だと思っています。
ふだん、子供の本を全く見ないビジネスマンが、絵本に出会える、違う属性が交差する本屋というものの面白さがあります。
思考を広げたり、自分が見えてないものが見えるようになったり、視線が変わる、選択肢があることに気づく、多様性に気づくことができるのも、見えるところにこういう棚があるからだと思っています。
いろんな本屋に私も行くんですけど、生活圏内にある本屋はこのぐらいコンパクトの方が情報疲れが抑えられるのかもしれない、ある程度コンパクトの良さなのかなと思っています。
さりげなく、なくてはならない存在へ
「TOUTEN BOOK」の名前の由来は、文章につかう読点(、)からで、文章のなかで息継ぎしたり、アクセントに使われ、さりげないけどなくてはならない存在です。
暮らしの中でそんな本屋になりたいと思いました。
8月29日まで一階スペースで「戦争ゆるさん ほんとにやだ いいかげんにしろブックフェア」「平和をつくるブックフエア」に参加・開催しています。
8月28日からは、「生きる本大賞フエア」を開催します。
未来屋書店さんが主催していて、書店員が「生きる」に寄り添うテーマで本を選ぶのですが、今年から私も選考委員になりました。
9人の書店員がそれぞれノミネートし、大賞が決まって、そこからフェアを1ヶ月ぐらいやります。生きることに寄り添うテーマで、コーナーを作っています。
行き交う人々と響きあう場に
沢上のある熱田区には空襲を受けた軍需工場があって、そこの慰霊の平和地蔵を残す運動をした人の展示や、ハンセン病などの展示を2階スぺースで開催してきました。
この土地に根付いた活動をしている人と知り合いました。
本屋も街も場所であるから、そこを行き交う人たちが互いに響きあう瞬間があるのが、面白くて好きなんです。
アンテナ張って
ひたすら、本の出版情報を見たり、新聞やSNSを見たり、お客さんから教えてもらったり、日々勉強です。
なるべく広い視点で選べるよう、社会とアンテナ張っています。それは楽しいです。
「独立書店ネットワーク」に参加しています。独立書店が連携し、各書店が持つ問題意識を共有し、ともに考え、行動しながら持続可能な書店経営をめざしています。
どんどん横につながっていき、広がっていくといいと思います。
戦争は点で終わらない
高市政権の下、「戦争する国」への流れの中で、一生活者としては結構不安が大きいし、閉塞感ですか、どうしていけばいいんだろうとお客さんとも話したりします。
歴史を学ぶことはとても大事だと思うんです。戦争は点で終わるわけじゃなく、ずっと続いていく。戦後もPTSDとか暴力というものがずっと連鎖していたりします。
今の自分が立ってる地点で切り離して戦争を考えるのではなくて、とても地続きなものだなと思うし、だからこそ、今の社会の動向も注視して見ていかないといけない、アンテナも張らないといけない、みんなで話していくことはすごい大事だと思います。そういった時に、本はとても独立したものであるし、歴史的事実、個人の体験を伝えてくれるものです。
歴史と自分をつなげてくれるものとして、触れられる場所が存在し続けないといけないと思います。
SNSの強い言葉で傷ついたり、SNSで疲れてる方がいらっしゃったら一度、本屋に足を伸ばし、ちょっと深呼吸してみることも、意外と気持ちがリフレッシュされるかもしれません。
★2階にはギャラリースペースとカフエの席もあり、コーヒーやビール、ヴィーガンクッキーなどが楽しめる。読者会やトークイベントも多数開催。日々の生活の中で息抜きができる場所となるようなお店づくりをしている。
