
安保法制違憲愛知訴訟弁護団
事務局長 松本篤周さん
26年8月5日、名古屋高裁民事第1部(新谷晋司裁判長)は、安保法制が憲法9条に違反するとして、国に対して精神的損害の賠償を求めた事件の控訴審において、地裁判決(2023年3月24日)に続いて憲法判断を回避し、控訴棄却の不当判決を言い渡しました。 裁判所は、平和的生存権について、地裁判決と同様「抽象度が高く、具体的内容について社会的な共通認識が形成されるに至っているとは認められない。」として否定し、人格権侵害・平穏生活権侵害についても、具体的な権利利益の侵害が生じていない段階で、憲法判断等を求めて予防的な訴訟を提起することは、「憲法81条の付随的違憲審査制と抵触する」として昭和27年最高裁判決(警察予備隊違憲訴訟)をあげた上で、「生命・身体の安全が侵害される具体的危険性が発生したとまでは認められない。」として否定しました。さらに「自らの政治的信条や信念に反する立法等がされたこと自体による精神的苦痛は、法的見地からは社会的に受忍すべきものと解さざるを得ず、受忍すべき範囲内にとどまるものといわざるを得ない。」として、地裁判決と同じく提訴自体に敵意を示すような判断をしました。
これまでの同種訴訟では全国の地裁高裁で結論としてはいずれも結論は敗訴でしたが、中には、理由中で「原告らの心情は理解できる。」という趣旨の見解を示したり、仙台高裁判決では、違憲の疑いはあるが、安保法制法自体が集団的自衛権の発動に極めて厳しい限定をもうけているので、明白に違憲とは言えない旨、憲法判断したことなどに比べても、単なる門前払いに止まらず、安保法制の違憲判断を裁判所に求める提訴自体に対して「裁判所に余分な課題を持ち込むな」という敵意を感じる判決でした。 「裁判所は、行政の行うことを大前提に、よほど具体的な間違いを起こさない限り、口出しするものではない」という姿勢を示しているようです。 新谷裁判長は、生活保護切り下げ取消訴訟でも熊本地裁の原告勝訴判決に対して、福岡高裁裁判長として原告逆転敗訴(その後最高裁で原告再逆転勝訴)を下した裁判官なので、その姿勢は「一貫」しているのでしょうが、それに同調する最高裁を頂点とする裁判所全体の「空気」を判じるのは私だけでしょうか。
しかし、安保法制はまだ発動には至っていません。集団的自衛権による自衛隊の出動を阻止するための闘いは続きます。
★松本篤周さんは、23年4月号にインタビュー「安保法制違憲訴訟!高裁へ」でも語っていただきました。
