新しい市民運動のはじまり 

 国会前や全国各地を飛び回り、連帯を広げている菱山南帆子さんを講師に、「憲法を真ん中に!路上からの声 希望の光へ」と講演会を行いました。参加者から、お話をきいて「勇気がわいた」「ともに声を上げたい」等の感想が寄せられました。編集者の責任でまとめました。(編集・写真 近田美保子)

菱山 南帆子 (ひしやま なほこ)さん

 1989年東京都八王子生まれ。市民連合共同代表。戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会共同代表。許すな!憲法改悪・市民連絡会事務局長。半生と運動論を綴った単著「嵐を呼ぶ少女とよばれて~市民運動という生き方~」(はるか書房)

市民運動や労働組合が「アンカー」として

大きな岐路に

 いま、私たちは憲法と民主主義をめぐる大きな岐路に立っています。
 国会では、憲法改悪に向けた動きや緊急事態条項をめぐる議論、比例定数削減、安保3文書の拡大、改憲発議に向けた条文起草委員会設置など、危機的状況です。
 一丸となって闘っていかないといけない状況です。

社会は変わっていくかも‥‥期待
 
 高市首相は人気があるのかをお話したいと思います。
高市人気には陰りが見えてきていますが、いろんな人に話を聞くと、これまで立憲民主党や国民民主党に投票していた女性が、今回は自民党に投票したといっています。
 なぜか、「初の女性首相だから応援しなくては」「これから日本は変わっていくかもしれない」と政策や政治的立場とは別に「女性だから応援したい」と感じる人がいることは、長く続いてきた男性中心の社会への、女性たちの複雑な思いを映しています。
 同時に、若い世代には「政治=怖いおじさん、裏金、権力」というイメージが存在します。
 私の住んでいる八王子の小学生へのアンケートでは「政治と聞くと思い浮かべる言葉は」に対して、第3位おじさん、第2位裏金、第1位萩生田でした。
 未来も希望も持てない。政治の世界に、親しみやすい映像やSNSで発信される「女性リーダー」が登場すると、それだけで新鮮に映る

どういう社会をつくるのか

 私たちは「改憲反対」と声を上げるだけではなく、なぜ反対するのか、言葉にしていく必要があります。自由、平和、基本的人権を守るために、どのような社会をつくるのかという大きな視点が必要です。
 特に、SNSによって政治的な情報が、短い動画や刺激的な言葉で拡散される現在、選挙のたびに新しい政党や政治家が登場し、「この人なら社会を変えてくれるかもしれない」と期待が一気に広がることがあります。
 永年の男女格差、非正規雇用の拡大、貧困、将来への不安など、人々の生活にはさまざまな不満や怒りがあります。自分たちの生活が苦しくなると、その原因を社会構造ではなく、より身近な外国人、女性、障害者、生活保護受給者などに求めてしまうことがあります。こうして「弱者同士が争う」状況が生まれ、社会の分断が起きてしまっています。
 「誰かを敵にする」のではなく、異なる立場の人々がともに生きられる社会をどうつくるかを示さなければなりません。

危機感から立ち上がる市民運動

 今、新しい市民運動が生まれています。
 その象徴の一つが、ペンライトを使った集会やデモです。私は、韓国で10万人が参加したユン大統領退陣デモにいきました。ペンライトがすごくきれいで、このペンライトの光の革命を必ず日本に持ち帰ると約束をしてきました。
 実はペンライトには歴史があるのです。
 1987年まで韓国は軍事政権でした。ユン大統領の時も含めて17回もの戒厳令を市民がくぐりぬけてきています。
 民主化運動の歴史のなかで、ろうそくが非暴力の抗議運動の象徴となりました。近年では、KーPOPアイドルのファンが使うペンライトも民主主義を守る運動の場に登場しています。そこには、従来の政治運動とは異なる若い世代の参加の仕方があります。

ペンライトやかわいいプラカードで

 日本でも、「大きな声で叫ぶ」「組織された人々が整然と並ぶ」というイメージから離れ、自分なりの方法で参加できる運動へと変化しています。
 KーPOPの音楽に合わせてコール、ペンライトを振ったり、仮装したり、ユニークな「架空団体」の旗(「親知らずを抜くのに苦労した人の会」など)を掲げ、一人ひとりの思いで参加しています。多様な参加方法によって、「デモは怖い」「政治運動は敷居が高い」という壁が低くなりました。

運動が楽しさを持ち始めた

 若い女性をはじめ、これまで政治運動に参加しなかった人たちが参加しやすくなりました。万単位で集まるというのが半年以上続いているのは、日本の運動でもなかったことです。
 民主主義を守る運動だからといって、悲壮感を抱え続ける必要はありません。「一生おいしいタコスが食べたい会」「無糖炭酸水を毎日飲む人間の会」などののぼり旗や、音楽や文化、笑顔、交流を通じて、人と人がつながることそのものが運動の力になります。
 デモに行く人を応援するために食事や飲み物を提供したり、オンラインで支援したりする。民主主義の危機に対して、一人ひとりが自分のできる方法で参加しています。

新しい市民運動のはじまりと未来志向へ――私たちがロールモデルになる

 新しい市民運動をさらに広げるためには、その積み重ねを次の世代につなげることが必要です。 私も13歳から市民運動をやっているので、いろいろ大変でした。運動には波があります。盛り上がる時期もあれば、引き潮のように人が少なくなる時期もあります。
 だからこそ、永年、活動してきた市民運動や労働組合が「アンカー」として社会に根を張ることが重要です。その土台があるからこそ、新しい世代が安心して参加できます。
 かつて蒔かれた種が、世代を超えて新しい形で芽を出しています。
 「過去は現在を助けている」韓国のノーベル文学賞を受賞した韓江(ハンガン)さんの言葉です。 私たちの永年の運動の積み重ねがペンライトブームを巻き起こし、確実につながっている。
 希望を持って、互いの違いを認めながら歩んでいく。同じ社会を生きる一人ひとりが、自分の言葉で未来を描き、その実現のために行動する。
 「市民連合」は、選挙で政党や政治家を選ぶだけでなく、政策も市民が立案し政党に実現を求める取り組みを始めました。
 みんなで考える政治へ、政策提言を募り練り上げていきたいと思っています。
 いろんな政党の動きがありますが、ぶれずに頑張ることは必ず実を結ぶと思います。
 私たちの信念は、間違っていません。しっかりとぶれずに手を携えて頑張っていきましょう。

憲法を真ん中に 路上からの声 希望の光へ

(菱山さんの講演)

(グループに分かれての話し合い)

 9月26日、労働会館ホールでの企画には、100名が参加。
 あいち総がかり行動の草地妙子さん、路上でのペンライトデモを主催しているアシカガさん、ちゃわさんが、それぞれの思いを語りました。
◆憲法を守り、差別をなくすために◆
 3人は「都知事選をきっかけに政治に興味を持ち、2025年の参院選でふりまかれた差別に怒り、路上でアクションを起こすことに」「小学生の時に憲法9条が大事と聞き、これを守らなければと思ってきた。人前で話すことが苦手だったが、3・11原発事故をきっかけに出来ることを精一杯にやろうと今に至っている」「もっとつながりたいという思いで参加。今の若い方が必死になって差別を止めてる、運動を盛り上げてる。組織や政党のベテランの活動家や政治家の方の力は絶対に不可欠。」「自民党政権、改憲、高市首相を辞めさせたい。一緒に頑張りましょう!」等の思いが熱く語られ、会場からは共感の拍手がおこりました。
◆若い人たちに負けないように◆
 参加者は、グループに分かれて自己紹介や、思いを語り合いました。
 「仲間であることを心強く思い、勇気づけられた。楽しかった!」「全くイメージと違う会で実に有意義。次回からはペンライトをもって参加したい」「若者の路上での声は、目からうろこでした。元気をもらえるお話でした」「菱山さんの経験及びたくましい話に感動」「草地さんの話に納得。ちゃわさん、アシカガさんもスタンディングありがとう」等の感想が寄せられました。

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