【08.06.10】藤本幸久監督「誰が兵士になるのか。戦争する国を取材して」

ドキュメンタリー映画「アメリカばんざい―crazy as usual」

 
8月から名古屋シネマテークで上映されるドキュメンタリー映画「アメリカばんざい―crazy as usual」の藤本幸久監督に事務所にお越しいただき、お話しをうかがいました。

藤本 幸久 さん
1954年三重県生まれ。北海道上川郡新得町在住。映画監督、「闇を掘る」(2001)「Marines Go Home-辺野古・梅香里・矢臼別」(2005)ほか

「戦争する国」とは 戦争に送られる若者とは

米軍「再編」という名で日米の軍事的一体化が着々と進められています。

 「戦争する国」とは、どういう国なのか、戦場に送られる若者はどんな顔をした若者たちなのか、06年10月から今年4月までアメリカで合計7回、延べ二百日間取材しました。

 沖縄の辺野古や日本や韓国の米軍基地のあるところに暮らしている住民たちを撮影した映画「Marines Go Home(マリーンズゴーホーム)」をアメリカの大学などさまざまな場所で上映し、繋がっていきました。

 「大学進学したい」「家族も軍の医療保険に入れてもらえる」と入隊する若者が多いです。コスタリカの移民の息子は、17歳のときに、家計のため入隊時のボーナス1万ドルと引き替えに海兵隊に入隊、04年8月に20歳でイラク南部で戦死。父親は息子の死と引き替えにアメリカの市民権を得ることになりましたが、悲しみは癒えることはありません。

社会から排除される帰還兵

アメリカ兵の死者が4千人といわれていますが、その何十倍の人たちが手足をなくし、深い心の病を背負い帰ってきますが、行き場がありません。戦争で目を負傷し、手足は人工関節の男性は、明らかに働けない体です。軍を相手に3年間、裁判でたたかいようやく勝ち取ったのが、たったの月額1000ドルの傷病手当(日本円で約10万円)です。

 アメリカのホームレスは300万人、そのうち4人に一人はいずれかの戦争の帰還兵だと言われています。

ワシントン州、オリンピアのホームレスのキャンプに通い、取材をしました。支援スタッフも、軍隊経験者でドラッグ中毒者でした。その彼が言うのです。「今日もまた、イラクの帰還兵がきたよ。裸足で『靴がほしい』と泣きじゃくり、手がつけられない。関係機関にケアできるよう連絡したが、今日もいつものようにクレイジーな一日だよ」、と。

 本当にひどいことが日常、そしてどこでも、毎日、あまねく起こっている感じです。

誰が兵士になるのか

誰が兵士になるのか、沖縄に来る海兵隊員は、どんな若者なのか、海兵隊のブートキャンプ(初年兵教育キャンプ)を取材しました。

 サウスカロライナ州パリスアイランドにあるブートキャンプに毎週5百人から7百人の若者が入隊します。12週間の訓練を受け、ここだけで毎年約2万人が海兵隊員になるのです。凶悪な子たちが海兵隊になるのではありません。普通の子です。 命令に従って、組織として戦争ができる一定水準の人間を大勢つくることだとわかりました。考えてみると当たり前ですが、思想改造して戦場で人殺しのできる人間を作るのです。

 新兵たちは、バスやワゴン車に乗せられ深夜に到着します。疲れさせ、兵士への精神改造を容易にするためです。到着後48時間、眠ることが許されません。怒鳴り散らされ、丸刈りにされ、持っている全て、個性までとりあげられるのです。恐怖のなか訓練に突入、戦場で人を殺せる兵士になっていきます。個人の意志の問題ではありません。

 その後に自分がしたことに気づくと、一生、心の病を抱えることになります。ある女性兵士は、「敵だと思ったのはまだ12歳ぐらいの少年だった、彼は自分の家族を守ろうとしただけだった」と。そこからPTSD、苦しみが始まるのです。

「逮捕される価値はある」とおばあさんたち

どんなひどいところでも頑張っている人がいる、すごいですね。

 イラク行きを拒否しても大学に行って暮らしていけることを証明しようと頑張っている元兵士、ホームレスの人々を支援する元ホームレスの人、軍のリクルートセンターのドアに「closed」と貼って毎週座り込んでいるおばあさんたち。「Marines Go Home」で沖縄の辺野古で座り込みを続けているおばあたちをみて「自分たちも毎日座り込もう。若者がセンターに来ても帰りなさいと説得する時間を長くしよう」と。

警官たちはおばあさんたちに手錠をかけて次々逮捕していきます。しかし、「イラクの人たちの事を思えばなんでもありません。たった一人の若者でも入隊をやめる人がいれば、それだけで逮捕される価値がある」と明るく笑い、座り込みを続けています。

名古屋で8月から上映

この映画をこの時期につくろうと思ったのは、日本の今と行く末を深く心配するからです。

 深まる日本の格差社会、アメリカの青年たちに、日本の青年たちの顔が重なります。憲法をかえてアメリカと同じようにしたら、どういう事になるのか。

相当、無理を重ねて(笑い)気持でつくりました。ぜひ、見て考えて欲しい。

名古屋では上映推進チームができ嬉しい限りです。いろんな地域、団体、グループでの自主上映も期待しています。

8月から名古屋シネマテークで上映予定です。

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