市民の声が生かされる市政を
「公立保育園をなくさないで」と取り組まれた「名古屋市の公立保育園を廃止・民営化の是非を問う住民投票条例制定」署名は、一ヶ月という短期間に13万を超える署名が集まりました。
この運動の実行委員長の水谷暎子さんに、お話を伺いました。
水谷 暎子(てるこ)さん
1943年名古屋市生まれ。愛保協会長。瑞穂短期大学、日本福祉大学非常勤講師。元ひまわり・どんぐり保育園園長。公立保育園をなくさないで実行委員長。
法定数の3倍をこえる署名
立保育園をなくさないで実行委員会は、3月27日「名古屋市の公立保育園を廃止・民営化の是非を問う住民投票条例制定」を求め署名12万8298筆(有効署名数)を、名古屋市長に提出、実に法定数の3,75倍、市民のみなさんの保育園と子育てへの高い関心を実感しました。
名古屋市の公立保育園の廃止・民営化の計画
名古屋市は07年10月に「名古屋市保育政策のあり方指針」を策定、中核保育所を残し、公立保育所を順次廃止・民営化する方針を出しました。08年の秋、2016年までの9年で123ヵ園のうち最大50ヵ園の公立保育所の廃止・民営化を公表、08年11月には千種台・山田・苗代保育園の個別整備計画が出され、うち2カ園は、すでに運営する社会福祉法人が決まっています。
民営化の流れに反対し保育の運動を続けてきて
私たちは、毎年、児童福祉法にもとづく公的保育の拡充を求め、廃止ではなく、公・私の保育園の充実のための予算を要望してきました。請願の紹介議員のお願いに自民党、民主党、公明党、共産党と全会派を訪問し懇談してきました。
しかし、毎年市民の願いを託した23万筆を超える請願署名は十分な審議がされずに行政の現況説明を受け、不採択、審査打ち切り、保留にとどまっています。
公立保育園は市と市民の財産
公立保育園は保育のセフティーネットと地域の子育て支援のセンター的役割を担い、住民の生活に普段にかかわっています。
今、格差と貧困が子どもにも重くのしかかっています。保育園は父母のライフスタイル・ライフラインがみえ、「昨日、ご飯が食べられなかった」というようなことも見えるでしょう、 保育園は保育士が子どもと親たちの生活状況を捉え、市策に反映していく窓口でもあります。
則武保育園が民営化され、千種台、苗代、山田保育園と民営化が進む中、この局面を打開するには、と議論を重ね、廃止・民営化について住民の賛否を聞こうと、この運動に行き着ました。
公立保育園は歴史的にも「ポストの数ほど保育所を」の市民運動、父母と市民の願いで建設されてきました。「子どもは社会の宝」――子どもが育つ保育園も社会の財産です。
民営化をストップさせよう!運動の大きな広がり
藤前干潟の運動にも学び、1月22日の署名スタート集会から1ヵ月の期間でしたが、直接請求代表者と1万人を超えた受任者が連携した大運動でした。
「毎日がサンデーだからね」と経験豊かな年金者組合の人たちが大きな力をくれました。また公・私の差別、偏見、格差の痛みを感じてきた高校生が「世の中変えよう!」と自分のことに引き寄せ、パソコンのデーター入力などの実務を献身的に支えてくれました。
名古屋市職労の保育士さんが本当に頑張り、市職労のOB、民間保育園の小規模保育園の職員の皆さん、福祉労の組合員の皆さんも一緒に頑張りました。則武保育園民営化反対運動時に保育関係団体で発足させた「名古屋の保育をまもる保育ネット」も運動の展開の大きな柱になりました。新婦人、各区の労働組合の協議会、市の職員労働組合の仲間もターミナル宣伝など精力的に署名を集めてくれました。
子どもの健やかな育ちのためには公立保育園の存在は必要というたくさんの市民の声が結集されました
保育所の国庫負担金削減し、民営化を促進する国
国は、1980年代から保育所の国庫負担金を減らし「規制緩和」を進め、営利企業の参入を認め、保育条件を悪化させてきました。 09年2月、厚生労働省少子化対策特別部会は「新しい保育の仕組み」として、“利用者と保育所による直接契約”認可制度から指定へと大きく二つのことを柱に意見を取りまとめました。 児童福祉法の理念、そして24条の市町村の保育所の設置義務をはずし、利用者の選択を売りにしていますが、認可制度から安易な指定制も児童福祉施設最低基準の形骸化が懸念されます。国の保育責任はずしの意図が見えてきます。現行の保育制度のもとで必要な保育所を建設し待機児童とこれから働きたいなどの保育要求を受け入れ、すべての子どもの健やかな育ちを保障する公・私の保育所を充実させる児童福祉法を守り通すことが最大の課題です。
4月6日・7日の本会議では名古屋市議会がこの署名の重みを受け止め、「条例制定」に賛同するよう、各区で議員要請行動をすすめ4月10日には、議会結果の街頭宣伝・報告集会も予定しています。
いのちを豊かに育み、未来の市民のために市税を使って欲しい
4月26日の名古屋市長選挙には、市民のみなさんが「公立保育園をなくさない」とはっきり主張する人を選んでくれれば嬉しいですね。
政治と普段の暮らし、生活が直結していることをこの運動でも実感しました。 市税を使わない水のための徳山ダムなどの死税にしないで、未来を育む命を大切にする良い循環に使ってもらいたいと切実に思っています。
注 条例の制定を求める直接請求制度
憲法92条にもとづいて制定された地方自治法第74条に保障されたものです。有権者の50分の1以上の署名を添えて提出された請求は、市長が意見を付して議会にかけ、その結果を公表します。