【11.04.10】インタビュー 玉置昌義さん「福島第一原発でなにが起こっているか」

危機回避に全力を!

 
3月11日、東日本で起こった大震災。震災の救援、復興に全力を尽くすことが求められています。さらに問題を深刻にしている福島第1原発で何が起こっているのか、原子核工学専門の玉置昌義さんに3月26日、お話を伺いました。

玉置 昌義さん

1943年7月生まれ。名古屋大学大学院工学研究科博士課程満了。原子核工学。現名古屋大学共同研究員。TAMAKI記念研究所主宰。 

ツイッターで発信

3月11日の事故から、15日くらいたち事態が刻一刻とすすんでいます。
福島第一原発に現在、何が起こっているのか。

 いろいろな立場で発言されている方々がみえますが、私自身は、原子炉工学の安全の研究を40年くらいやってきて、今回の事故は、私自身にどこまで判っているのかと、問いかけられている気がします。
 私は事故が起こったときから、どう対応するのかという事を、リアルタイム・ツイッターで250回くらい発信しています。言ったことは全て記録されるわけで、覚悟を決めてやらざるを得なかったのです。
不眠不休でほんとうにヘトヘトです。そのなかでもふれていますが、福島第一原発事故はレベル5で、どんどんレベル6に近づいてい
るギリギリのところにきていることは確かです。

どのような対策が必要か

 1号機から4号機までの原子炉の燃料棒は壊れ、燃料は、水面下に沈んでいるだろうと思います。水面下に沈んでしまえば水素はそうは発生しないのではないか。また水が抜けるようなことがあれば、燃料棒が丸ごと熔けるようなことがあるかもしれません。もともと最低限なければならない水面からは、1メートル50センチ位下がっています。この値は本当に信じていいのか、計器がどこまで正確かわかりませんが、この値を、よし、とすると本来の形の燃料も1メー50センチ頭を出しているはずです。燃料の温度などから見ると、燃料棒は壊れてしまって、燃料が水没しているのではないか。
 私が、今日の時点(3月26日)で一番気になるのは、一号炉です。格納容器といって放射能が外に出るのを留めるという容れ物ですが、圧力がここ二・三日一番高くなっていて、格納容器の耐圧に余裕がなくなってきている。もし、格納容器に破損が生じるとなかにはいっているのは、殆ど水素といってもいいので、水素が出て空気と混ざると、今までもありましたが、水素爆発です。下手をすると、10倍とか、ここまで来ると、そのぐらいの凄さの爆発を想定せざるをえません。いままで、一号機は、最初の爆発以外、圧抜きのために、外へ出していませんので、殆んど全て溜まっています。そこを、どうやって抑え込めるかというところです。
 そこの対策に絞って言いますと、一例ですが勿論、大爆発をさせずに、水素を上手に抜いて、といっても大量ですので燃やすしかありません。小出しにして、上手に火をつけて、小さな小爆発をさせて行くしかないと思います。大爆発になりますと、今までの比ではなく、いろんな問題が一気に生じると思います。   今までテレビ報道で見られたように、消防放水やヘリコプターのように上から人口雨のような形で水遣りをしながら、水素小爆発でコントロールする。その水素の気体には、ヨウ素、セシウムとか、場合によってはウランとか含まれています。小爆発といえども放射性物質は広がりますから、そこに雨が降っていれば建物の外に出すことを最小限に抑えられます。
 排気塔という煙突のような高いところから出すことになるにしても、煙突の上のところからシャワー状に雨が降るような形にする工夫をすれば、小爆発をさせても、放射性物質を外にだすことを最小限にとどめることが出来るのではないかと想います。
 大爆発を避けるために、対策をすすめてほしいです。大爆発すると放射性物質が大量にでて、それこそ、20から100キロメートルまで影響を与えることになると思います。

プルトニウムについて

 福島原発三号機では、地震が発生したときにプルトニウムを含むMOX燃料を使うプルサーマル運転中でした。正確ではないですが、500体のうちの20体くらいがプルトニウムを原料にしています。
 1・2・4号機でも、プルトニウムは出来ています。
 ウランには、235、238の二種類がありますが、核分裂するのは235です。ウラン238が中性子を吸って、そのあとベーター崩壊を二回やると、プルトニウムに変わります。普通の燃料を三年くらい燃やすとウラン燃料でも1%くらいのプルトニウムが出来てきます。それを加工し、MOX燃料として、プルサーマルという方式で燃やそうということです。
 三号機は、黒い煙がでており、格納容器の横腹辺りに穴が何らかの事情で開いて、そこから水素も含んだ水蒸気とともに、ヨウ素、セシウム、さらには、ひょっとするとプルトニウムをも含まれているものが噴出しています。空気中で燃え続け、建屋を焼いて黒い煙が出ている、そんな印象をもっています。
 私は、正確な判断できる情報を十分には持ち得ていません。何とも言えませんが、ごく微量だとは思いますが、プルトニウムが出ていても不思議ではないです。

危機回避に全力を

 現地では、多くの関係者が不眠不休で危機回避に懸命に取り組まれています。
 私は、このまま事態が収束に向かうように、とそういう思いです。

  ◆これ以上重大な状況に至らないでほしいと時折、涙を浮かべながら語られました が、国の総力を挙げて一刻も早い収束が求められています。

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