【20.03.10】学習の力で改憲に立ち向かう―「戦争の記憶」を風化させない

 
久保田 貢さん
1965年生まれ。南山中高男子部教諭を経て、現在、愛知県立大学教授。専門は教育学。著書に『知っていますか?日本の戦争』等。

自ら入会の申し込み

 以前から革新懇運動に注目はしていました。「市民と野党の共闘」と言われている時代において革新懇の立ち位置は非常に重要だと。これからの運動も気になっていたので、ニュースの購読と入会申込みをさせてもらいました。むしろ、いつお声かけいただけるかと思っていたくらいです。

15年・戦争法強行採決から何が変わったか?

 まず、自衛隊の軍隊化が当たり前のように着々とすすんでいることです。オスプレイも配備されるときにはあんなに反対したのに今では日本中当たり前に飛んでいる。そして、市民がそのことに慣らされてしまっていることが恐ろしい。日常生活の中で戦争法の影響を実感することは少ないが、実感するようになってしまってはおしまい。問題意識あるものが「違う」「おかしい」と強く言い続けないといけないです。

我々をなめているのか

 さらに許しがたいのは、安倍内閣は2015年の戦争法強行採決以降、なんでも力づくで強行しています。沖縄の新基地建設や、昨今の国会をみても「我々を舐めているのか」と言いたくなります。20年前ならこんな政権は倒れて当然。自民党の内部からも反対の声があがって当然なのに、そうならないですね。これは本当に異常な事態だと思います。

戦争への認識が後退

 大学で学生と話すと、戦争に対する認識が後退していると感じます。名古屋で空襲があったことを知らない学生がどんどん増えている。「日本は原爆おとされた」くらいの知識でしかアジア太平洋戦争を捉えておらず、日本が75年前、朝鮮半島やアジア諸国でしたこともほぼわかってない。同時に、戦前の日本でどんどん「自由」を奪われ、戦争に向かって行ったということが想像つかない。アジア太平洋戦争の歴史について知らなければ、その反省の下に作られた憲法という理解につながらないですよね。今の日本を「戦前に戻ったようだ」と訴えても伝わらないし、「憲法守ろう」ということにもつながらないんです。

学校教育の現場で

 なぜ、後退しているのか。それは学校で教えられていないからです。30代の教員も戦争についての知識がありません。「名古屋で空襲があったんですか」と学生と同じ反応が返ってきます。これでは教えることはできないですよね。
 こういう実態の背景には、安倍教育改革で教員が縛り付けられ、ひどい学習指導要領のもと、ひどい教育しかできていないことがあります。「評価」によって待遇も賃金も変わってくる。教員はどんどん疲弊していきます。そんな教員たちを支えたいと思っています。

戦争について知る場所を意識的に

 社会全体の中で戦争を直視して考える雰囲気が後退していると感じます。映画にしてもドラマにしても日本の戦争を事実に基づいて描く良質な作品が90年代以降減っています。あるのは戦争賛美の作品ばかり。ヨーロッパや朝鮮半島などではそういう作品をちゃんと作ってますし、日本軍「慰安婦」の運動などにも若い人がかかわっています。
 日本では戦争について考える場がない。私たちが意識的に作っていかなくてはいけません。

地道な学習運動が重要

 小林よしのりに代表されるような歴史修正主義者たちが90年代から台頭し、徐々に社会に浸透してきた。彼らも20年余かけてジワジワやってきたわけで、現在の「改憲」という流れにつながっています。これに対抗するには、やはり、丁寧で地道な学習が不可欠です。時間はかかるでしょうが、これ無くしては改憲の動きには対抗できません。
 いろんなところに呼ばれて講演などしますが、地道な学習を積み重ねているところは強いなと感じます。

次世代へ語り継ぐ

全国の戦争モニュメントをみていますが、きちんと管理されず、朽ち果ててしまっているものが増えています。語り継ぐ人も高齢化していたり、そもそも見に行くこともできなくなっているものもあります。これらのモニュメントは戦争の記憶の継承であり、学習のための教材です。反戦平和の地域の拠点となるようにしっかり保存していかねばと思います。

3つの共同目標

 ひどい安倍政権を早くなんとかしなくては。そのためにも「市民と野党の共闘」が必要です。 一方で、天皇制や日米安保、新自由主義の害悪など、革新懇の3つの共同目標に掲げているようなテーマは国の根幹にかかわるような重要なテーマです。真正面から取り上げて、声を上げ続けていくことが大事だと思っています。革新懇には3つの共同目標に基づいた独自の取り組みにも期待しています。

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