【22.8.10】高田健さん――国民投票に持ち込ませない大運動を!

9条改憲反対は世論の多数

 
高田健さん

許すな!憲法改悪・市民連絡会を1999年に結成。
戦争させない9条壊すな!総がかり行動共同代表。
市民連合結成呼びかけ人。

民意は改憲を認めていない

 参院選挙は、改憲派の自民・公明・維新・国民民主党の改憲派4政党が94議席をとり非改選も含め177議席76.52%を占める結果となりました。改憲派圧勝とみえますが、必ずしもそうではありません。自民党が議席を増やしたのは1人区を含む選挙区に限られ、比例区では自民党が1議席を減らしました。自民党は比例区で前回より54万増やして1826万票ですが、16年の参院選挙2000万、21年衆院選挙は1991万ですから、自民党が圧勝というのは苦しいと思います。
 
 投票日直前の7月8日、安倍元首相が統一教会というカルト教団の被害を受けた青年に遊説中に銃撃され死亡する前代未聞の事件が起きました。各メディアは安倍元首相の政治上の業績を称え、安倍元首相の殺害という重大事件によって選挙戦が最終版に大きく歪められました。
 50年間一度も選挙に行かなかったという人がインタビューを受けて、「今回は自民党に投票にいこう」と応えていました。お線香をあげるような気持ちで一票を投じたのです。日本の風土には死者に鞭を打つなという風潮があり、自民党は安倍氏の追悼を自らの選挙に最大限活用しました。
 ロシアのウクライナ侵略も今回の選挙に大きく影響しました。岸田自民党はいかなる政策も明確に訴えませんでした。9条改憲や歯止めなき軍拡強化路線が信任されたとは到底言えない状況です。

改憲より物価経済を

 憲法改正を重視して投票した人は3.3%、有権者が物価、経済重視が41.8%です。選挙後の世論調査では改憲を急ぐ37.5%に対して急ぐべきでないは58.4%です。しかし、改憲派は選挙が終わったら改憲4項目は喫緊の課題だ、改憲が支持されたと改憲に力を入れてきています。
 改憲・大軍拡か、アジアと日本の平和か、ロシアのウクライナ侵略はヨーロッパだけにとどまらず、東アジアにおける台湾有事の可能性や朝鮮半島危機として語られ、中国に対する包囲網が作られつつあります。
 東アジアで必要なことは米国やNATOと同盟して中国を包囲することではありません。

市民と野党の共闘の立場にたってこそ

 私たちは安保法制のたたかいを通じて共同をひろげ、本格的に主権者として国政選挙に関わっていこうと2015年、市民連合をつくりました。2016年選挙はすべて32挙区で野党が1本化し、11人当選、2019年は10人が当選しました。2013年は一人区は2人しか当選していません。野党の共闘がどれだけ有効かはっきりしています。
 しかし今回、野党は一本化できませんでした。理由は、とりわけ立憲民主党と日本共産党に対する攻撃で野党と市民の共闘が分断されました。とくに与党、メディア、連合の三者が野党と市民の共闘を分裂させることに成功しました。強烈な攻撃がありました。
 そうしたなかでも東京の3区長選挙の「市民と野党の共同」の前進、長野、沖縄、青森での勝利、新潟、山梨や北海道の惜敗、日本維新の会の全国政党化の阻止などという点もきちんと見ておく必要があります。
 従来の野党と市民の共同で、安全保障は専守防衛で一致して野党が共通政策でたたかってきました。しかし、今度の参院選の立憲民主党の安全保障政策は、自民党が軍事費2倍にたいして、「日本の軍事力を強化する」と、尖閣を守るための「領域警備法」など大きくずれていました。
 立憲民主党には、今度の国会を通じてもう一度14年、15年、16年19年と積み重ねてきた市民と野党の共闘の立場に復帰してくれることを望んでいます。

軍事大国化、戦争する国づくり

 4月21日に自民党政務調査会安全保障調査会の「新たな国家安全保障戦略に向けた提言」は非常に危険な内容です。軍事費を5兆円強から12兆円へと増大し、敵基地攻撃能力を反撃能力と読み替え、相手の国のミサイル基地に限定せず、相手国の指揮系統機能等を攻撃する。まさに全面戦争を想定した提言です。
 持続可能な防衛産業の構築、宇宙、サイバーなど新たな領域の能力強化、軍産学協同を推し進め日本は自前の兵器をつくるとまで提言しています。

東アジアに平和をつくる希望が‐日中の4文書

 戦争は政治の延長、政治が失敗した時に戦争になる。
政治は何をやるのか。戦争に至る前の粘り強い交渉による解決が重要です。
 あらためて日中間で確認された4つの政治文書の点から、外交が行われなければなりません。
 (1)日中共同声明(1972年)、(2)日中平和友好条約(1978年)、(3)平和と発展のための友好協力パートナーシップの構築に関する日中共同宣言(1998年)、(4)戦略的互恵関係の包括的推進に関する日中共同声明(2008年)の4つの条約的共同声明があります。
 朝鮮との間でも日朝平壌宣言があります。アジアの平和をどう作っていくのかはっきりと書かれています。1972年の日中共同宣言のあと平和的な流れや努力が泡になりつつあります。
 参院選後の7月11日、中国の外交部が「中国は日本とともに、中日間の4つの政治文書で確立された諸原則に基づき、両国の善隣友好協力関係を引き続き発展させていきたい」と記者会見で述べています。
 4文書に基づく日中関係が改善されれば、南西諸島にミサイル配備の必要はありません。ここに東アジアの平和をつくる希望があります。夢物語ではなく、非常に現実的です。中国との4文書で改めてアジアの平和を積極的に作る必要があります。東南アジア10か国からなるASEANが共同し、アジア全体に広がっていけばここに希望がある。

「国民投票に持ち込ませない」

 今やらなければならないのは国民投票に備えることではなく、「国民投票に持ち込ませない」ことです。
 「改憲発議」は改憲派が勝てると思った時に発議します。ですから院外での戦争反対・大軍拡反対・改憲発議反対の大衆行動を大きく作っていくことが重要です。
 朝日新聞の7月19日世論調査では、自衛隊を憲法に書き込む51%賛成 反対33%、ミサイル攻撃に50%が賛成。今の世論の状況は私たちにとって必ずしも有利ではありません。多くの人が安全保障で心配し、南西諸島にミサイル基地を、軍事費倍増は仕方がないという人が増えてきているのは事実です。これとのたたかいは相当に重要です。軽視をしない。事実として見てどうひっくり返すか。
 もう一つは、公明党は動揺していますが、改憲3党が一致する「緊急事態条項」の暴露は急務です。
 私たちは戦争の道か平和な道をえらぶのか、世論を作り出していくたたかいを野党共闘を構築し、国会の外で世論を大きくすることが大切です。戦後77年、平和に対する信頼はそう簡単に無くならないと思います。
 秋の沖縄知事選、来年の統一地方選挙で改憲反対派がどれだけ奮闘するか、今後の改憲反対のたたかいの帰趨を左右します。
 「希望とは地上の道のようなもの。もともと地上に道はない。歩く人が多くなればそれが道になる」これは魯迅の言葉ですが、9条改憲反対は世論の多数派、ここに確信をもって反戦・反改憲運動の勝利を!

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