【23.04.10】フリーライター 白井 康彦さん

生保裁判、勝訴続く   裁判をあきらめさせる運動へ 

 生活保護基準をめぐる「いのちのとりで裁判」が2014年以降、全国29地裁で提訴されました。原告側から見ると、地裁の勝敗は3月28日時点では7勝9敗です。2022年5月上旬までは1勝8敗と苦しみましたが、そこから形勢が大逆転。直近は4連勝です。
 問題になったのは、2013年の基準改定。一番大きな理由は「デフレ調整」(物価スライド)でした。厚生労働省は、自前で作った「生活扶助相当CPI」が2008年~2011年に4・78%下落したと説明しました。日本の消費者物価指数はずっと「横ばいないし緩やかなデフレ」という状況だったので、4・78%という下落率は「異常に大きい」と感じる数字でした。この数字が出たのは、厚労省の計算方法が独特の粗雑なものだったからです。
 私や経済学者、弁護団らの研究で、正しく計算された場合には生活扶助相当CPIの下落率は1%台と分かりました。厚労省の計算には約3ポイントもの誤差があるわけです。この「物価偽装=最悪の統計不正」の事実を各地の裁判官らが理解するようになって、原告勝訴の流れができたのです。
 闘い方を変える必要があります。お手本になるのが優生保護法をめぐる裁判です。高裁判決が既に4件出ていて、すべて行政敗訴です。3月28日の赤旗1面に関連記事が出ていました。「上告せず解決求める」「共産党議員団が声明」といった見出しがついていました。いのちのとりで裁判も、多くの団体・野党らが足並みをそろえて「岸田政権に裁判続行断念を求める運動」を展開するべきだと思います。

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