朝鮮高校生の「高校無償化」排除―憲法の理念骨抜きに
中曽根元総理は「憲法は幹、教育は根、だからまず根を変えなければならない」と述べて教育基本法改正を訴え、第一次安倍政権は、公共の精神の尊重、国と郷土を愛する態度を養うことを明記した教基法改正を行いました。
そして、第二次安倍政権が成立直後に着手したのが、朝鮮高校生の「高校無償化」からの排除です。そもそも「高校無償化」は、外国人学校を含む私立学校については、生徒個人に対する就学支援金の支給により、家庭の負担軽減を図る制度。しかし、現政権は、日本人拉致事件及び朝鮮総連と朝鮮学校との関係という制度の目的とはかけ離れた政治的理由で、朝鮮高校生の就学支援金受給の根拠たる文部科学省令を狙い打ちで廃止したのです。
問題は、高校として備えるべき客観的な条件(カリキュラム、教員数、設備など)ではなく、国同士の関係を理由として教育内容に踏みこんだ差別が断行されたことです。今回の排除が正当化されるならば、中華学校や韓国学校等、日本と領土問題を抱える外国人学校への公然たる干渉の道が開かれることになりかねません。個人の尊重を通じて少数者の自由と平等を認めた憲法の理念は骨抜きにされてしまいます。
現憲法は先の戦争への反省に立って制定されており、朝鮮学校は、その対象である植民地支配、戦争の所産であることも忘れてはなりません。この問題を政治・外交問題としてではなく憲法問題として位置づけることで、政権の意図はより明確になると思います。
*裵明玉さんは、2010年10月号に「朝鮮強占百年の年に差別の痛みをさらけ出すこと、加害の歴史を直視する」とインタビューに登場していただきました。
愛知・大阪で朝鮮高校「無償化」除外問題を同時提訴して裁判をすすめています。