【20.06.10】下澤悦夫さん(元裁判官・「安保法制違憲訴訟の会あいち」原告団共同代表)

緊急事態宣言下での「コロナ戦争」

 3月初めから新型コロナウイルスの感染拡大が始まった。そこで国会で新型インフルエンザ等対策特別措置法が改正され、4月7日に同法に基づく緊急事態宣言が発せられた。そして、感染拡大の第一波が終息したとして、5月25日に、政府は緊急事態宣言を解除した。
この2月末まで、私は各種の会合のために毎週二回以上は外出する生活であった。3月になるとそれらの会合予定は次々に取消されて、四つの会合が残るだけであった。4月と5月には、それぞれ二つの会合を除いてすべてがキャンセルされた。
 その間、緊急事態宣言に基づいて、密閉、密集及び密接の三密をさけるように、不要不急の外出を控えるようにとの政府や知事の自粛要請が繰り返された。そのために、殆どの人は自宅に籠もりきりの生活を余儀なくされたのである。政府や知事の自粛要請に従わない者は、周囲の人々からの冷たい視線にさらされることになる。それを避けるためには自粛せざるをえない。
 このような事象について、私には既視感(デジャ・ビュ)がある。かつての太平洋戦争の末期、米軍機の空襲による被害を避けるために、それぞれの家が灯火管制に従うことを政府から要請され、これに従わない者は隣近所から非国民として非難されたのである。 今度も緊急事態宣言下での「コロナ戦争」とも表現され、すべての人が政府の自粛要請に従うようにとの集団的な圧力のもとにおかれたといってよい。
 今回の「コロナ戦争」における訓練が、外国との戦争のときのための訓練として利用されるのではないかと、私は恐れている。

*下澤悦夫さんは2019年4月号のインタビューに登場。「平和憲法の精神を日本社会に!―使命をもって」と語っていただきました。

このページをシェア