【20.08.10】名古屋市立大学大学院教授 阪井芳貴

沖縄基地問題は他人事でない―人の痛みに心を寄せる想像力

 年末年頭の武漢での感染拡大、2月のクルーズ船内の感染は、ともに日本国民にとっては人ごとであり、国内への飛び火を懸念しながらも、高みの見物をしていたきらいがあります。それが、3月下旬から徐々に国内に感染が拡がると、ようやく自分事として捉えだし、大騒ぎになって今日に至っています。この様子を、私は少し冷めた眼で観てきました。
 この25年間(あるいはそれ以上)沖縄で起こってきた出来事に、どれだけの日本国民が我が事として関心を持ち向き合ってきたか・・・・・・。米軍が関係する事件事故、普天間飛行場の移設=辺野古新基地建設や高江ヘリパッド建設の強行、それに絡む日本政府や司法の沖縄への不条理な対応などなどに対し、ほとんどの国民は正確に把握すらしていません。
 ニューヨークの9・11テロ事件の際、沖縄は危険だとして旅行キャンセルが相次ぎました。今のコロナ禍は全国的な問題ではありながら、沖縄の米軍基地で大規模クラスターが発生したために、あの9・11の悪夢が再現しかねないと私は危惧しています。基地を沖縄に押しつけておきながら、そのことを棚に上げて基地ゆえんの危険のとばっちりはゴメンだという姿勢は許されるものではありません。
 いっぽうで、そんなことには無頓着な沖縄への旅行者は、自分たちがコロナを沖縄にもたらすかも知れないということにも無頓着で、沖縄県民の不安をあおっています。どちらも、人の痛みを自分事として捉えられない想像力の欠如がなせるものです。その想像力をどのように若者たちに養わせるかが、私の課題です。

*阪井芳貴さんは2010年9月号のインタビューに登場。「ウチナーンチュとヤマトゥンチュとで 基地問題の解決を!」と語っていただきました。

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