日本学術会議任命拒否問題が提起すること
菅政権による日本学術会議会員の任命拒否は、政府や自民党の体質、そして抱える多くの問題点を明らかにしている
第1に、この問題は、日本学術会議による会員の推薦と、それに基づく首相による任命という日本学術会議法の規定に反し、独立した機関への不当な政治介入である。内閣府は、公務員の任命権が国民の権利であるとする憲法15条、および行政機関に対する首相の指揮監督権を定める同法72条を根拠に首相の任命拒否を正当化するが、それは日本学術会議が政府との関係で独立性を認められていることを無視する議論である。
第2に、首相には任命について裁量権があるとする見解は、これまで政府が国会で明らかにしてきた、「任命は形式行為に過ぎない」との公定解釈を破るもので、法治主義(法による行政)に反している。検事総長候補者の定年を定めた法律に反し定年延長を強行しようとしたことと、同じ過ちを犯している。
第3に、研究者の自由とその集団の制度的自由・自律性(自治)を内容とする学問の自由の侵害となる。SNS等を通じて、拒否された研究者の学生にも被害が及んでいる点では、教育権の侵害でもある。
第4に、政府とそれに同調する研究者やジャーナリズム(櫻井よしこなど)によって行われている学術会議批判は、市民の間に研究者との分断を持ち込んでいる。また、その多くは事実に反したり歪曲しており、反知性主義となっている。これらは杉田水脈問題など、自民党でしばしば見られる問題でもある。
以上のことは、憲法無視の自民党の体質を改めて白日の下にさらした。それはまた、長年続いた自民党政権のおごり、暴走、腐敗といってもよい。良識ある市民の連帯がその対立軸(オルタナティブ)となる。
*和田肇さんには2020年6月号に「コロナ禍から考える 日本の在り方」と題してインタビューに登場していただきました。