【11.10.21】ふるさとの青い海は黒い海に変わった-憲法改悪反対署名推進ニュース第92号発行

被災地福島からの訴え ふるさとの青い海は黒い海に変わった

「いわきのいま」 S.T

 3.11以来、あれほど好きだったいわきの海をみることが出来なくなりました。いわき市の海岸線には「いわき七浜」と呼ばれる7カ所の美しい海があります。夏の海水浴やウィンドサーフィンは勿論、四季折々の色を見せる大好きな海だったのに、大地震で地盤がズンと沈んだため水面がやけに沈んで近くなり怖い。高い波よけブロックも津波でボロボロに破壊され、ただのコンクリートの巨大な塊として、崩れた民家に庭に転がっています。
 大津波が、友人たちの過去も現在も未来もすべて呑み込み、人災の原発事故によって大量の放射性物質がまき散らされてしまい、ふるさとの青い海は黒い海に変貌してしまいました。
 被災地はあれから4ヶ月経ち、自衛隊とボランティアの協力でやっと瓦礫の山は片付けられましたが、マスコミではほとんど報道されない4つの大きな問題があります。

(1)津波により家も道も洗い流された結果、暑い時期を迎え広範囲で魚の腐ったような物凄い悪臭が漂っていて、マスク無しでは数分立っていることもできない状態。病原菌の発生が怖い。

(2)損壊した古い工場などの建築物のアスベストが舞い上がっていて、瓦礫片付けしている多数の住民ボランティアの健康を損ねている。

(3)原発事故の収束見込と正確な情報がまったく見えません。そのため、放射能に対しての恐怖の温度差・個人差が徐々に広がり、教育現場や家庭内にギクシャクした空気が流れ、意見の違いからいさかいが絶えず、離婚にまで発展してしまった家族もあります。政府・東電の対応の遅さや風評差別により、酪農家や野菜農家の自殺など二次災害もあちこちで起こり、福島県の自殺者数は昨年の1.3倍になりました。

(4)全国から急ぎ集められた原発事故対応の東電下請け労働者の方々が夜の街に溢れ、うわきの“夜の街”の文化状況は大きく変わりつつあります。お金と女性とお酒。それはまさに沖縄の海兵隊の基地の街と、原爆の恐怖に包まれたヒロシマの街を併せ持った所になってしまいました。

 低レベル放射能による継続した体内被曝もたらす影響は?あの日から始まった人体実験FUKUSHIMA。
 明るくて健康的なまぶしい蒼い海の記憶は、黒い海の深くてくらいそこに沈んだまま蘇らない。
 「がんばれ福島!」のやけに陽気なテレビコマーシャルが私の心を苛立たせるのです。

*S.Tさんは、福島第一原発から35キロ離れたいわき市で被災。7月にこの文を書いた後、群馬県前橋市へ自主避難しました。元いわき市九条の会連絡会役員。

 

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