【10.09.14】自由法曹団が声明「河村名古屋市長の議会制民主主義否定の市議会解散運動に反対する」

自由法曹団 「河村名古屋市長の議会制民主主義否定の市議会解散運動に反対する」声明発表!!

河村名古屋市長の議会制民主主義否定の市議会解散運動に反対する

 名古屋市の河村たかし市長の支援団体「ネットワーク河村市長」は、8月27日から市議会解散請求(リコール)の署名運動を行っている。
 自由法曹団愛知支部は、愛知県弁護士会に所属する弁護士100余名が結集する法律家団体であるが、憲法で保障された地方自治の根幹をなす議会制民主主義を擁護する立場から、この市議会解散署名運動に反対する。

 同署名運動を主導しているのは、間違いなく河村たかし名古屋市長その人である。
 日本国憲法は、地方政治の仕組みを、住民から直接選挙で選出された議事機関である議会と執行機関である首長によって行なわしめ、対等な関係にある両者の抑制と均衡により住民の権利を実現するという二元代表制を採用している。執行機関である市長の権限が余りに強大になると、その専横によって地方行政が歪められ、住民意思が十分に反映されなかったり、市民の人権侵害が発生するおそれがある。市議会議員が、市民生活の実情を踏まえ、多様な価値観、意見を反映させながら、本会議や委員会等の開かれた場所で衆議を尽くして適切な政策形成を行うとともに、市長が独断専行に走らず行政を適切に執行しているか否かを監視する役割を果たすことが求められている。
 河村市長は、自らが選挙公約として掲げた住民税減税、議会改革の方針に議会が同意しないため、自らの公約が実現しないということを解散運動の理由としている。
 しかし、たとえ公約であったとしても、それが議会の意思と異なる場合には、議会との冷静な話し合いにより解決すべきであり、それこそ憲法の予定する二元代表制のあるべき姿である。
 民意を問うとことであれば、来春にも名古屋市議会議員選挙が予定されている。それにもかかわらず、性急に現時点で強引に議会の解散に持ち込もうとするのは、河村市長に何らかの政治的なねらいがあるためであるとしか考えられない。河村市長は、リコール運動によって市議会を解散に追い込むと同時に自らも市長職を辞し、その上で来年2月にもダブル選挙を行うことをめざし、同選挙では自らが指導する新党を結成して候補者を擁立する方針であると伝えられている。河村市長の市議会解散運動のねらいが、自らのいいなりになる市議会を作り出そうとするものであることは明白である。
 河村市長が市議会解散を求める理由として掲げている「住民税の恒久減税」について言えば、住民税の非課税世帯等、半数以上の家計には効果がない一方、一律減税であるため大企業、高額所得者ほど厚い恩恵があり、「金持ち減税」という性格が強いと批判されているものである。同減税を継続した場合には平成23年度には226億円もの財源不足を来たすとも言われており、福祉、教育予算等住民生活に関わる予算が切り捨てられるのではないかと懸念されている。次年度には、住民税減税のために国民健康保険料の値上げが見込まれ、低中所得者の暮らしに大きな打撃となることが危惧されている。
 河村市長の「議員報酬の半減」「市議会議員のボランティア化」を中心とした議会改革についても、市議会議員が果たすべき重要な職責とその専門性を見ないという批判がなされている。議員報酬について言えば、名古屋市議会は、従来の条例額からの10%削減に加えて新たに議員報酬の月額10万円削減を打ち出し、自己改革の努力を強めているが、この問題も話し合いによって十分解決できる類のものである。
 従って、河村市長の議会解散運動に正当な理由はないと言わざるを得ない。

 河村市長が主導する市議会解散運動は、憲法、地方自治法が保障する二元代表制を否定し、地方政治の根幹をなす議会制民主主義を否定する暴挙であることは明らかである。
 自由法曹団愛知支部は、河村市長の市議会解散運動に強く反対する。同時に、市議会の民主的機能を無視する言動を繰り返し、「庶民の負担軽減」を目的とするように装いながら、議会との話し合いにより解決すべきとする憲法の予定する二元代表制のあるべき姿を無視し、市民を誤った方向に誘導しようとする河村市長の政治手法の危険性を率直に指摘するものである。
 
        2010年9月14日
          自由法曹団愛知支部
      支部長   宮田陸奥男  

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