先進国・日本、愛知の責任として
菅原 怜 さん
1988年・愛知県生まれ。気候ネットワークプログラム・コーディネーター。ロンドンサウスバンク大学バイオサイエンス科修了。中部地方での製造業の通訳・翻訳、ロンドンでのIT企業勤務などを経て、1年前より気候ネットワークに勤務。
気候変動を止めるには
学生の時から、社会問題には関心がありましたが、就職してからは余裕がなく目をそらしていました。4年ほど前までロンドンのIT企業で働いていましたが、IT機器が大量に廃棄される行程や生産サイクルに対してモヤモヤ感をずっと抱えていました。
そんな時、雑誌で気候変動の影響で住処を失った動物や絶滅の危機にある動物の写真を目にして、人間のせいでこんな目にあうなんてと許せないという怒りが湧いてきて。そこからイギリスのNGO団体のメール会員になり、メールニュースなどで情報を得るようになりました。しかし、知るほどに気候変動を本当に止めるには、システムや政策をを変えないといけない。個人でコツコツやるだけでは限界がある。それくらい「やばい状況」だという事に気がつきました。
本当にやりたいことを
そんな時、気候ネットワークに出会いまして、そこからボランティア勉強会やセミナーに参加して学ぶ中で、私もこういう仕事をしたいと思うようになりました。それまでは将来へのビジョンとかもなく、海外と日本行ったり来たりしていました。でも、気候ネットワークで働くときは本当にやりたいことを選ぼうと思ったんです。ようやく、やりたいことが見つかった。今、決めないとずっと後悔する、そう思いました。
G7広島サミットに参加
先日、気候ネットワークの一員としてG7広島サミットに参加してきました。環境NGOとして国内の別のNGOと協力して記者ブリーフィングなどが主な仕事だったのですが、現地で行われているアクションにも参加し、日本が押し付ける化石燃料の延命政策に対して声をあげるフィリピンやバングラディッシュのNGOの声を聞くこともできました。また、社会問題はつながっているので、気候変動以外の団体との連携も大事だと思いました。
G7での前進と課題
今年のG7の一連の会議での前進面は2つ。一つはこれまで石炭しか言及していなかった化石燃料の段階的廃止が明言されたこと。もう一つは太陽光と洋上風力に対しての数値目標が入ったことです。
一方で、石炭火力廃止をいつまでに廃止するというはっきりとした年限が日本の反対によって今回も入りませんでした。また「2035年までに電力の完全または大部分を脱炭素化する」という文言があるのですが、大部分という言葉を日本政府は「半分以上」という独自解釈をしており、国際認識とかけ離れています。
「心配している」減少
日本政府のそういう態度は、石炭による発電が4割、火力発電所をいまだに新設しているという実態に表れています。世界の流れに逆行しています。
ヨーロッパにいた時は、気候変動の話題や、危機的状況などバンバンテレビで流れていました。日本では「気候危機」という言葉をテレビで本当に聞かない。あえて避けているようにさえ感じます。今回G7に参加した国の中で、日本だけが「気候危機を非常に心配している」という割合が減っているんです。これには驚きました。他の国ぐには増えているので、ここでも逆行しているんです。メディアや政府の態度が影響しているんだと思います。
産業の街・愛知の責任
「気候危機打開CO2排出ゼロ目指す愛知の会」の準備会に関わっています。12月に学習会を開催し、さまざまな団体とも連携しつつ、今後も学習会や運動をすすめたいと考えています。
愛知は、CO2排出量全国一位の碧南火力発電所を抱え、武豊火力発電所が新設、昨年から稼働が開始しました。これだけ気候危機が叫ばれている中で、CO2排出削減は、これまで「産業の街」として栄えてきた愛知県の責任であり、さらには、生まれる製品も作られた工程が問われる時代になってきています。クリーンなエネルギーで作られてるのか、「産業の街・愛知」が国内外の消費者からも厳しい目で見られる時代になっています。
アクション起こす時
気候ネットワークでは「アクションガイド」をネットで公開しています(「気候ネットワーク アクション」で検索)。
例えば、再エネ重視した電力会社に切り替えるパワーシフトや、住んでいる自治体の議員に排出削減対策を働きかけることなどやれることは色々あります。
気候危機の海面上昇によって住むところが奪われた島、大規模な災害や火事によって命を落とした人々、これらは決して遠い国の出来事ではありません。日本は気候変動による自然災害の影響を受ける国として常に上位にランクインしています。 また、CO2排出にしても森林伐採などにしても、先進国の豊かな経済活動の裏でどこかに犠牲を強いてきたという重い責任があります。ここに無関心ではいけないと思います。日本にいると情報を得ようとしないと得られないところがあります。なので、気候危機による深刻な実態を、写真や映像で実際に目にして知ることからだとと思います。私たち一人一人が、気候危機を乗り越えるアクションを起こすときです。